日本同様に新型コロナウイルスの感染拡大に直面する韓国。感染を抑え込んできた「K防疫」に何が起きているのか。一方、11月15日には日中韓を中心とした世界最大規模の自由貿易圏・RCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)が合意された。TPP参加にも意欲を示した習近平政権は、世界経済の覇権を目指しどのような戦略を描いているのか。
今回の放送では真田幸光氏と鈴置高史氏を迎え、コロナ苦の文政権と中国が描く経済覇権戦略を徹底分析した。

「K防疫」もワクチン確保もウソか

ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員 鈴置高史氏
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竹内友佳キャスター:
日本同様に感染が急拡大する韓国の現状について。韓国では11月末から新規感染者数が再び拡大し、12月に入って感染者数が急激に増加しました。21日には1日の死者数が24人と過去最高を記録。鈴置さん、感染が拡大している韓国の状況をどうご覧になりますか。

鈴置高史  元日本経済新聞編集委員:
日本も韓国も同じようなもの。日本の人口は韓国の2.5倍です。ほとんどのデータで、日本の数字が韓国の2.5倍ほどになっている。死亡者だけ日本がやや多い理由は、65歳以上の人口がはるかに多いこと。そして既往症があり亡くなった人の数字。日本は厳密にすべてコロナによるものとしているが、韓国は必ずしもそうではないと韓国紙が伝えている。

反町理キャスター:
しかし、かたや「K防疫」としてとにかくPCR検査を行い、行動を追跡するシステムなどあらゆる手段を使って社会的に封じ込める方法をとり、それを国としての自慢にまで持っていく韓国。一方で日本の場合は制度が緩く、国民の同調圧力のようなものによって抑え込んでいる。数字は似ていてもアプローチが全く違うのでは。

鈴置高史  元日本経済新聞編集委員:
K防疫というのは嘘。全くやっていないか、やったとしても意味がなかった。日本では「韓国はPCR検査をよくやっているから抑え込めている」という誤解があるがそれは嘘。当初大邱で起きた医療崩壊が韓国ではまた起き始め、本当に入院すべき人が入院できずに自宅で死ぬということが起きている。日本のテレビのワイドショーが「韓国はよくやっている」「PCRバンザイ」と言ったために誤解があった。それは間違い。本当に酷い。

反町理キャスター:
韓国のワクチンの準備状況を見ると、政府は4400万人分を確保と発表している。しかし契約済みは1000万人分のみ。これを野党が批判している。ワクチンをめぐる韓国政界の混乱をどう見ますか。

鈴置高史  元日本経済新聞編集委員:
韓国政府の大チョンボ。政局が大分変わるだろうと思います。1000万人分の契約だけが本当だが、しかしFDA(アメリカ食品医薬品局)から許可が下りないという見方もある。4000万人分確保というのは嘘で、契約交渉の開始段階の覚書を交わしたにすぎない
こうしたコロナをめぐる政府の失策に、政府系といわれるハンギョレ新聞さえ批判的な見出しをつけた。政局にもかなり影響してくるでしょう。

日本の指標が悪い理由は中国への輸出依存度

竹内友佳キャスター:
日中韓各国の経済データ。2020年のGDPは、日中韓がそれぞれマイナス5.3、プラス1.9、マイナス1.9パーセント。日本だけが鈍化しているように見えるが、実態は。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
各国の輸出依存度を見ると日中韓がそれぞれ16、20、42パーセントほど。中国はアジアの感染が収まってきているため対外輸出が回復しており、内需もお金が回り始めている。これを背景に中国はプラス成長に転じた。韓国はその中国への輸出比率が高いので支えられている。一方日本は、輸出の比率が高くなく世界にバランスよく売っているため、中国に頼っている韓国と違い大きな回復は見られない。そして日本経済はただでさえ内需が強くない。もともと安定成長という名の低成長の国であり、今回のコロナではかなりダメージを受けたということ。

反町理キャスター:
GDP成長予測。これも日本は、2022年にかけての戻りが悪い。何故なのか。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
日本は労働生産性が低いことが改善点。大企業はまだ悪くないが、中小企業で低い。そこで、日本の企業だけではなく海外の企業にも売って外貨を稼げる中小企業を作っていく政策変換をしていくべき。自治体やJETRO、国がサポートして中小企業の国際化を推進する。
ただし、このデータは新型コロナウイルスが2022年以降に終息していることを前提としているもので、数字としてはまだかなり緩い。

鈴置高史  元日本経済新聞編集委員:
まずこの統計、中国の数字が正しいのか。中国のあるエコノミストが、中国の数字は3〜5パーセント引いたほうがいいと言っていた。また韓国についても、労働生産年齢人口はすでに減っておりプラスになるとは思いにくい。一方、日本の中小企業の問題については真田先生のおっしゃる通り。

RCEP、TPPで今後日本が難しい立場に

竹内友佳キャスター:
11月日本・中国・韓国そして東南アジア諸国15カ国が参加したRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)について。規模は世界の人口のおよそ3割、GDPでも世界全体の3割を占める最大の自由貿易圏となります。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
今回、中国が旗を振ったことはほぼ間違いない。なぜか。アメリカは二極化しており力が落ちてくる可能性が高く、新たな経済産業政策を発表していない。
ロシアも、今は資源価格も悪く経済が低迷する中で、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争の解決処理でアルメニアを守りきれず、押し込まれる形で休戦協定を結んだ。かなり力を落としている。
また中国はインドをすごく警戒しているはずだが、インドは労働改革や農業改革で農民がストを起こすなど足元が悪い。これら3か国の調子が悪いことをチャンスとして、一気に取りまとめに来たのではないか。
もともとアメリカが対中包囲網として作ったと言われるTPPからもアメリカが抜けている。今リーダーシップを取っている日本を揺さぶれると思っている。中に入り込んできてルールを変え、乗っ取ろうとしているのでは。

真田幸光 愛知淑徳大学教授

反町理キャスター:
RCEPそしてTPPという対米経済包囲網を作るところも、国家戦略としてしっかり見えているわけですね。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
中国は自由主義圏に入ってくるのではなくて、自分たちのスタンダードで国際社会を作り変えるぐらいの思いで動いていると見ている。

竹内友佳キャスター:
アメリカはどう感じているのでしょう。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
特に今トランプ大統領は強く警戒しているはず。今後アメリカがTPPに復帰の動きを見せるのか。あるいは中国を入れるなと日本に圧力をかけてくるのか。その出方に注目すべき。

鈴置高史  元日本経済新聞編集委員:
TPPへの新規加盟には全加盟国の了承が必要だが、中国はひとつひとつの国に圧力をかけてくる。一方、アメリカは国内の事情でTPPに入りにくい。するとアメリカは日本に対して「俺は入れないけどお前が頑張れ」となる可能性が高い。国有企業が多いから中国はダメということになっているが、じゃあ加盟国であるベトナムはどうなのかという点に矛盾があり、中国はここを突いてくる。

反町理キャスター:
韓国批判の文脈で、安全保障は米韓同盟、経済は中国というコウモリ的態度は許されないという話をよく伺うが、中国を止められなければ結果的に日本もコウモリ状態になってしまうのでは。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
このRCEPとTPPについて、来年の日本は難しい選択を迫られる。アメリカは後ろで睨んでいるだろうが、援軍には来てくれない。日本は台湾を加える提案をするなど、中国に牽制をして時間稼ぎとし、状況の変化を待つことが必要。

「デジタル人民元」で経済覇権狙う

反町理キャスター:
中国の対米政策の中でデジタル人民元の話がある。中国がこれにより経済覇権を目指しているとしたとき、そのシナリオは。

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
基軸通貨というものがある。例えば日本人が中国人に物を売るとき、ドル建ての資金で行うと決済がニューヨークで行われる。するとアメリカは、基軸通貨がドルであるがゆえに、アメリカに居ながらにして日本人と中国人が何の取引をしたのかわかる。

反町理キャスター:
デジタル人民元を使うことによってニューヨーク決済がなくなる?

真田幸光 愛知淑徳大学教授:
一帯一路のコースやRCEPでも、どんどん人民元決済をしようと言ってくる可能性がある。貿易の取引においても、仲裁などの管轄が中国の裁判所になり、根拠法が中国の法律になったりするという形が増えてくる。
そして、中国はそもそも銀行間の決済そのものが気にいらない。デジタル化することで国際金融筋をなくしてしまい、国際金融をつぶすことになれば、現在の世界を牛耳っている動きを潰して中国のスタンダードを持ち込める。中国はそこまで狙っていると思います。

BSフジLIVE「プライムニュース」12月21日放送