外出時には欠かせない存在となったマスク。しかし、顔の半分を覆うマスクは着用すると内部に熱がこもり蒸し暑くなる。特に、これから迎える夏を考えると、着用が憂うつになる人もいるかもしれない。

そんなマスク着用をひんやり涼しくしてくれる商品がある。それがシール、ラベル印刷の製造販売をする丸天産業株式会社(広島・福山市)の「マスク用冷感うるおいシート」だ。

2020年の初夏に初めて発売した際には、開始4時間で初回在庫の10万枚が完売したという。

「マスク用冷感うるおいシート」
「マスク用冷感うるおいシート」
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特徴はマスクの内側の鼻元に貼るシート。水に濡らしたシートを貼ることで熱を吸収し、口元のうるおいを保ちながら、マスク内部を涼しく快適にしてくれるというのだ。

使い方はシートに水を含ませて水滴が落ちなくなるまで軽くしぼる。水を含んだシート部分をマスクの鼻元に合わせ、シールのはくり紙をはがし、マスク表側にシール面を貼って完成。
 

水に1回濡らすことで約2時間の冷感効果があり、乾いても再度水に濡らせば冷感を持続させることが可能。また水に濡らした後、冷蔵庫で冷やすことでさらに冷感効果がアップするという。

価格は1袋5枚入りが165円(税込)、50枚入りが1155円(同)で、販売サイト「MAPURI SHOP(マプリショップ)」限定で購入できる。

水に濡らしてマスクの鼻元に貼るだけ
水に濡らしてマスクの鼻元に貼るだけ

水に濡らすだけでマスク生活をより快適に過ごさせてくれるという「マスク用冷感うるおいシート」だが、なぜシール・ラベル印刷製造販売の会社がこういったマスクシートを作ることにしたのだろうか?
また、昨年は70万枚の注文があったとのことだが、どのような点が評価されたのだろうか?

丸天産業の広報・中里岳広さんに話を聞いてみた。

「打ち水効果」を利用した冷感の仕組み

ーーこのシートを作った経緯を教えて。

厚生労働省が2020年5月に示した「新しい生活様式」では、新型コロナ対策として外出時のマスクの着用が基本とされました。ビジネスや業務の現場でもマスク着用が必須となるなか、弊社工場内でのマスク着用による暑さ対策を思案したことがきっかけです。

きっかけは工場内での暑さ対策
きっかけは工場内での暑さ対策

業務上さまざまなシート素材が工場内にありまして、試しに不織布の端切れを水で濡らしてマスクの内側に貼り付けてみました。すると口元の涼しさが30分~1時間程度感じられましたので、短期間で試作を重ね、工場内スタッフが試着して非装着時と比べて熱のこもりが少なく感じたことから実用化へ踏み切りました。

その結果、多くの人がストレスを感じるであろう真夏のマスク着用対策としての「マスク用冷感うるおいシート」が生まれました。

工場内のシール素材を試しに使ってみたら…
工場内のシール素材を試しに使ってみたら…

ーー鼻元に貼るだけでマスク内が冷たくなるのはどうして?

簡単に言うと「打ち水効果」です。真夏の道路に水をまくことで地面の熱が大気中に逃げていくように、シートに含まれた水分が蒸発することで、マスク内の熱を奪う「気化熱」を利用して冷感を感じる仕組みとなっています。


ーーどれくらい冷たくなるの?

赤外線温度計で計測したところ、約1℃ほど下がりました。持続は2時間程度ですが水を含ませれば再度冷感を得られます。また、冷蔵庫で冷やすことにより冷感がアップします。

「マスク用冷感うるおいシート」上:表側 下:裏側(シール面のはくり紙がある)
「マスク用冷感うるおいシート」上:表側 下:裏側(シール面のはくり紙がある)

クッションを挟むような装着感

ーー製造面での苦労点やこだわりの部分を教えて。

製造工程のほとんどが手作業だったため、生産量が出せず苦労しました。また、こだわりはサイズです。マスクを装着した際にできるだけ違和感のない大きさや、ボリュームを目指しました。


ーーシール、ラベル印刷製造販売会社の技術が生かされている部分はある?

箔押しで使われる「熱圧着」の技術が生かされています。「箔押し」とは熱と圧力によって、印刷物に金銀などの文字や絵柄を入れる技術です。どのくらいの温度で、どれだけ強く、薄い箔を押し込むかによって、仕上がり品質が左右されます。

今回の商品では、薄い不織布同士を熱圧着させることに「箔押し」のノウハウが生かされています。温度や圧力が高すぎると不織布が溶け、形が崩れてしまいます。温度や圧力が低ければ付かないです。

シートを付けたマスク (上:マスク内側 下:マスク外側)
シートを付けたマスク (上:マスク内側 下:マスク外側)

ーー使用する際に注意することはあるの?

水を含ませたシートが肌に触れますので、体質によってかゆみやかぶれ、肌荒れを起こす場合があります。また、化粧崩れが起きることもあります。気温が一定以上(35℃以上)の環境下では冷感を感じにくいです。なお衛生面および機能面から、使用期間は1日を推奨しています。


ーーシートを装着したマスクの着け心地はどう?

できるだけ装着時の違和感がないように吸水シートの厚みを工夫しています。マスクと鼻元の隙間にいわばクッションを挟むような装着感でしょうか。

実際にシートを付けたマスクを装着した様子
実際にシートを付けたマスクを装着した様子

真夏がピークも、秋から冬にかけても一定数の受注

ーー発売当初は4時間で10万枚が売れたが、その後の反響は?

やはり真夏が販売のピークでしたが、秋から冬にかけても一定数は受注いただきました。本商品のもうひとつの側面である「うるおいをキープ」する効果が、冬場の乾燥する時期に評価されたのではないでしょうか。今年に入っても春以降、リピートされるお客様が増えてきています。

冬場の乾燥する時期にも使えるそう
冬場の乾燥する時期にも使えるそう

ーーどういった声が届いているの?

冷感については、猛暑の戸外ではその効果を感じにくいといった声をいただいております。ご意見をいただいた中では、おおむね半数以上の方に肯定的な評価をいただいております。また、昨年ご購入いただいた数量と同じか、それ以上買われているお客様もいらっしゃいます。

今年の夏もマスクが必需品となりそうです。少しでもマスク着用のストレスをやわらげるお手伝いができれば幸いです。

「潤っているので息がしやすい」といった声がある
「潤っているので息がしやすい」といった声がある

素材の不織布を水に濡らすことによって「打ち水効果」で冷たくなるという意外にも簡単な仕組みだったが、昨年は合計70万枚売り上げた「マスク用冷感うるおいシート」。これから迎える蒸し暑い夏の対策として、使用を検討してみてもよさそうだ。
 

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プライムオンライン編集部
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