コロナ対策として必須だったマスク着用の緩和から1カ月以上経ち、外出時などに外している人もいるだろう。そして、これまではマスクで隠れていた口元があらわになり、改めて自分の顔や化粧について意識するようになった人も多いかもしれない。
この記事の画像(10枚)そんな着用緩和前となる昨年12月、化粧品メーカーの伊勢半(東京・千代田区)が「マスク着用緩和による化粧品(メイク)の意向について」の調査を行なった。この中で、約4人に1人がコロナ禍前に比べて「口元の変化を感じている」ことがわかった。
顔の変化に気づいた女性は過半数
調査は20~60代の女性605人を対象にインターネット調査で実施。
「コロナ禍以前に使用していた化粧品と今使用している化粧品の違い」や「普段使用している化粧品でもメイクの仕上がりが日によって『合わない/しっくりこない』と感じることがあるか」など、“違和感”をテーマに尋ねているのだが、中でも興味深かったのが「コロナ禍以前と比べて、自身の顔の変化について感じたことはありますか?」という質問だ。
この質問に、全体の半数以上となる56%(338人)が「ある」と回答。
さらに、「ある」と答えた人に「最も変化を感じやすいのはどの部分ですか?」と尋ねたところ、最多は「口元」の142人。全体でみると、約4人に1人の女性が口元の変化を「感じやすい」ということになるのだ。
その他では、肌のハリ(101人)、目元(87人)、その他(8人)が続いた。
この結果に、調査に協力した東北大学大学院文学研究科(心理学専攻分野)の阿部恒之教授は「コロナ禍で他人の顔を見る機会が減りましたが、自分の顔はいままでと変わらず毎日鏡で見ます。自分の顔の変化に気づいた方はきっと自分への関心が高く、鏡に映ったご自身の顔をよく見ていたので、過去の自分の顔との違いが際立ったのかもしれません」などと分析していた。
またリリースでは、人の顔は時が経つにつれ、ホルモンバランスの変化や筋肉の衰え、紫外線や乾燥によって口元だけでなく目元や肌質も徐々に変化し、全体の印象が変化してくと紹介している。
ここで気になるのが、なぜ口元に変化を感じる人が最も多かったのかということだろう。そして私たちの顔にはこの3年間で何が起こったのか。伊勢半広報宣伝部広報課の日下部かおりさんと東北大学大学院の阿部恒之教授に聞いた。
コロナ禍の3年で見た目も3年分変化
――今回の調査を行った理由を教えて。
伊勢半広報宣伝部広報課・日下部かおりさん:
マスク着用ルールが徐々に緩和され、皆さんが再びメイクを楽しむようになるタイミングで参考になるような情報を提供できればいいなという思いと、それがコロナ禍で落ち込んだ化粧品マーケット全体の活性化するサポートになればという思いがありました。
「違和感の正体」というテーマを選んだ背景には、私自身、お気に入りの化粧品を使っているのに仕上がりがしっくりこないという違和感があることがあって、これはもしかして、メイクを再開したときに多くの人が共感する悩みなのではないかと思い、この調査を企画しました。
――今回の調査で「顔に変化がある」と答えた人は56%。この割合をどう思う?
伊勢半広報宣伝部広報課・日下部かおりさん:
この3年間、多くの時間をマスクを着けて過ごしたり、写真を撮ったり街中でガラスに映る自分の顔を見るような経験も少なかったという状況を鑑みると、多いのではないかと感じています。
――ちなみに3年間で、人の顔はどれくらい変わるのものなの?
東北大学大学院・阿部恒之教授:
例えば、ある大学の新学期開始時に「私は何歳に見えますか?」というクイズを出してみたことがあります。10年くらい続けたのですが、毎年その答えの平均値は1歳ずつ増えていきました。
つまり私の見た目は、1年たてば1年分年を取って見えていたのです。白髪が増えたのか、しわが増えたのかわかりませんが、そういうわずかな違いが総合されて見た目の年齢が増えたのです。
コロナ禍の3年間で3年分見た目も変化していて、周りにはそう見えているというのは確実なことだと思います。
――人はどんな時に「自分の顔が変わった」と感じるの?
東北大学大学院・阿部恒之教授:
海に行って日焼けしたらすぐに気づきます。これは変化が急激だったからです。しかし、わずかな変化を見続けていると、その変化には気づかないものです。今まで注意が向かなかったところに何かのきっかけで注意が向いた時、変化に気づくということがあるのかもしれませんね。
伊勢半広報宣伝部広報課・日下部かおりさん:
普段、鏡で自分の顔を見る時はどうしても見られていることを意識してしまいます。ですから、写真や映像で自分が意識していない時の自分を客観的に見て、それがイメージしていた自分の姿と違うと思った時、「変わった」と感じるということはあると思います。
口元の変化を感じた人が多い理由
――口元に変化を感じている人が一番多かった。これにはどんな理由があると考えられる?
東北大学大学院・阿部恒之教授:
マスクで隠していたことで自分の口元に注意を払わなかったところに、マスクを取ってみて3年分蓄積した変化を感じたということなのかもしれません。
その他、マスク着用の影響で口を大きく開けずにもごもごしゃべり、顔の下半分の動きが抑制された生活を続けたことで、顎関節や咀嚼筋の動きが少なくなくなり、それが表情にも影響を与えたかもしれません。
――口元の変化は、顔の印象にどんな影響を与える?
伊勢半広報宣伝部広報課・日下部かおりさん:
まず、ほうれい線が目立ってくると加齢を感じさせるということが挙げられます。唇についても、年齢を重ねると厚みが薄くなったり輪郭がぼやけるなど変化し加齢を感じさせます。また、唇の色がくすんで血色感がなくなってしまうと、少し不健康な印象になってしまいます。
――口元の変化に対処する方法を教えて
伊勢半広報宣伝部広報課・日下部かおりさん:
ほうれい線を目立たなくさせるためのテクニックもあるのですが、個人的にはリップメイクをした方が、簡単に顔全体の印象を効果的にアップできると思います。
色は、肌なじみがよくて、ほどよく顔に血色感を与えてくれるようなものを選ぶといいですね。加齢による唇の厚みの減りや、輪郭のぼやけの悩みについてはリップライナーやリップブラシで縁どりすると、輪郭がはっきりしてふっくらと立体的になります。
また、今はツヤ感のあるリップがトレンドに復活しています。ツヤに抵抗がある方でも、全くツヤがないマットタイプを使うと顔がのっぺりして見えてしまうので、ほんのりツヤのあるセミマットタイプがおすすめです。
コロナ後のメイクのポイント
――ちなみに、コロナ後のメイクで意識したいことは?
伊勢半広報宣伝部広報課・日下部かおりさん:
コロナ中は眉毛や目元に注力してメイクされる方も多かったと思いますが、その時と同じようにメイクしてリップメイクもした場合、全体で見た時にくどくなってしまう可能性があります。アイメイクのボリュームを抑えめにするなどバランスを意識するといいかもしれません。
そして、古くなった化粧品には注意していただきたいです。化粧品は、特定の表示がない限り未開封で3年持つとされています。ところが開封して空気に触れると徐々に酸化して劣化していき、色も微妙に変わっていきます。
また、顔の常在菌や皮脂が付着したままだと、雑菌が繁殖したりカビが生えたり、悪臭がするようになることもあるので、そのまま使うと肌トラブルにつながる恐れもあります。
――メイクをする頻度が減ったこのコロナ禍の3年間。改めて、メイクの効果は?
東北大学大学院・阿部恒之教授:
メイクアップする、あるいはネクタイを締めるというのは、自分の“公”の姿を作り出す儀式。コロナ禍は、その切り替えの儀式がないまま、ぼやっと一日が始まって、公とプライベートの境界が曖昧まま過ごした3年間だったと言えます。マスクをして顔の上の部分だけメイクをされる方もいますが、その場合、マスクより上は公で、マスクの下はプライベートという状態。
これからマスクを外して、再び顔全体にメイクをするようになるということは、自分の顔を再び“公”にして社会生活を送る“再スタート”のタイミングとも言えるでしょう。
口紅で唇に色を足すとか、ファンデーションで肌を明るくすることは、顔を魅力的に見せる効果があると、研究でも明らかになっています。もしマスクを外す自信が持てないのだったら、メイクの力を信じて、新しい口紅を1本買うところから、再スタートしてもいいかもしれませんよ。
コロナ禍の3年間で「口元の変化を感じた」人が多かったのは、マスクを外したときに口元にも改めて意識が向き、加齢による変化などに気づいたことが要因のようだ。
この変化が気になる人は、日下部さんがおすすめするリップメイクを試してみてもいいかもしれない。