マスク着用が生活の中に定着するのに伴い、マスクの不便な点を感じるようになった人も多いのではないだろうか?
蒸れや息苦しさ、メガネの曇り、そして肌への影響…。そんな悩みを解消しようと、さまざまな種類のマスクも登場している。
そして今、マスクをかける“耳への負担”を解消するマスクを、テプラなどの文具を製造・販売する株式会社キングジムが開発したのだ。
それが顔に直接貼り付ける「ひもなしマスク」。

マスクには頬部分の端に粘着性のある医療用シリコンテープが使われており、顔に直接貼り付けることができる。耳ひもがないために、長時間着用しても耳が痛くなることがないという。
さらに、立体構造になっていることから、口元とマスクが触れにくくなっており、マスク内が蒸れにくく快適に使用できるとのことだ。

マスクは手洗いによる洗濯が可能(約20回)で、テープの粘着力が低下しても水洗いすることで回復する。
ライトグレーの普通サイズのみで、オープン価格(1つ2枚入り)。4月9日から主にオンラインショップでの販売を予定している。
そして気になるのが、なぜ文具を扱うメーカーがマスクに着目しているのかということではないだろうか。また、多種多様なマスクがある中、ひもなしマスクを作ることになった理由とは?
株式会社キングジム・広報室の稲葉大力さんに話を聞いてみた。
耳の痛み・かぶれなどの問題を解決
ーー「ひもなしマスク」を作ることになった経緯は?
コロナ禍によってマスク着用がスタンダードになりましたが、同時に耳の痛み・かぶれなどが問題となっていました。その問題を解決すべく、起案されました。
ーー顔に貼るというアイデアはどのように思いついた?
製造元のメーカーが矯正下着を取り扱っており、その関連で見つけた「ヌーブラ」に着想を得て「医療用シリコンで皮膚に貼りつける」アイデアを思いついたとのことでした。

ーー顔に貼る方法としては、医療用シリコンテープの他にも案はあった?
装着方法の着想を得た時点からシリコン粘着を想定して進行していました。皮膚への負担の少なさや安全性を考えると、医療現場でも頻繁に使用されているシリコンテープが最適と判断しました。
ーーなぜ文具などを扱うキングジムがマスクに着目したの?
文具に限らず、ニーズがあると思う商品に関しては積極的に取り扱うスタンスでございます。マスクはコロナウイルスが流行した後に取り扱いを開始しまして、今回のひもなしマスクが3種類目になります。

キングジムでは、太陽光・室内光の力でウイルスの感染能力を99%低減させる効果のある素材を使用した「抗ウイルスマスク」や、太陽光を熱に変換して保温する「ぬくもりマスク」なども展開しており、その3種類目として登場したのが今回の「ひもなしマスク」なのだ。

こだわりのフィット感を守るため箱包装
ーーこだわっている部分はある?
粘着部には医療用シリコンテープ(パッチテスト済み)を使用し、違和感のない着け心地を目指しました。また、顔の輪郭に沿って貼るだけで、隙間が生まれずにフィットする形状にもこだわりました。
ーー製造で苦労したところは?
呼吸のしやすい立体構造を崩さない為に通常の袋包装ではなく、箱包装とすることで型崩れを防ぐように工夫しています。

ーー洗うことで粘着力が回復するとのことだが、約20回という数字の理由は?
洗濯試験を実施し、その結果20回と数字をうたわせていただいています。ただ実際には、お客様の使用環境やさまざまな外的要因に左右されますので、20回以上問題なくご使用頂けることもあれば、場合によっては20回未満でもご使用いただけなくなる場合もございます。
人肌の温もりでシリコンが馴染みより密着
ーー使用時の注意点は?
使用時はぴったり顔の輪郭に沿うように着用することがポイントです。マスクをあごに当て、こめかみに向かって少し引っ張り上げながら顔に貼り付けることで、隙間なく着用することが可能です。
また、何度も着脱を繰り返すと粘着力が弱まってくることがあります。その場合は、粘着部を水洗いすることで改善します。粘着部はパッチテスト済みですが、すべての人に安全を保障するものではありません。使い始めには、皮膚に違和感がないかよく確認してください。

ーー実際の着け心地の感想を教えて。
社内モニターの意見としては、着用感に関する問題は特にございませんでした。また、耳が痛くない・厚みがしっかりしてて安心感がある・軽くて呼吸がしやすいなどの声がございました。粘着部に関しては、貼りつけてしばらく経つと、人肌であたたまることでシリコンが馴染み、より密着度が上がります。
ーーどういった反響がある?
「こういった商品を待っていた」というお声をSNS等でいただいております。それに対しては大変嬉しく、商品が売れることを期待しています。

キングジムは、初年度の販売目標数量を1万2000個としており、要望次第では新しいカラーの展開なども検討するという。
耳への痛み・かゆみに悩んでいる人はもちろん、メガネの柄とマスクひもが絡むといった“マスクひも”に悩みを抱えていた人は、そもそもの問題を取り払った「ひもなしマスク」の使用を検討してみるのも良さそうだ。
悩みを解消して、マスクが定着した新しい生活を快適に過ごせる一助になるかもしれない。
【関連記事】
感染予防をより期待できる「不織布マスク」の見極め方を聞いた…ポイントは“認証”と“密着性”
“メガネの曇り”のイライラ解決? 「メガネをかける人のためのマスク」の秘密を聞いた