国会議員ってどんな人?我々政治記者がよく聞かれる最も素朴な質問だ。
日本には衆・参合わせて700人以上の国会議員がいるが、大手メディアで取り上げられるのは一握りだけ。しかし、熾烈な選挙を勝ち抜いてきた国会議員たちには、全国的な知名度はなくとも、驚異的な能力・特技を持った人や、人間味に溢れた魅力的な人が多い。
フジテレビ政治部は、そんな“知る人ぞ知る”国会議員にバトンリレー形式で連続インタビューし、「日本の国会議員」の実像をお伝えする。
第2回は、初回の向山淳議員からバトンを引き継いだ自民党の塩崎彰久議員(49)だ。
「政治だけはやらない」首相官邸で味わった現実
塩崎さんは2021年に衆議院議員に初当選し、現在3期目。東大法学部、スタンフォード大学を経て弁護士となり、暴力団排除運動などにも携わった。
父は第一次安倍内閣で官房長官を務めた塩崎恭久氏。塩崎さん自身も父の秘書官として首相官邸に勤務した経験を持つ。
政治家である親の姿を見ているうちに自分自身も目指すようになった・・・というのは永田町でよく聞く話だが、塩崎さんの場合は当時、むしろ逆の心境だったという。
当時の安倍政権は、閣僚の不祥事や「消えた年金」問題で内閣支持率が急落し、約1年で退陣。
「自分の無力さと、政治への挫折感しかなかった。官邸を去るときは“政治だけはやるまい”と思っていた」と振り返る。
それなのに、なぜ政治の道を志したのか。
コロナがなければ政治家になっていなかった
転機は、新型コロナウイルスの感染拡大だった。
「子供たちも学校に行けない。病気になった家族にも会えない」
自分自身ももどかしい状況におかれる中で、「政治の舵取り一つで多くの人の人生が左右される。政治の責任の重さと危機感を感じたときに、自分にしかできない役割があるんじゃないか」そう思ったという。
コロナ禍の2021年、塩崎さんは父が引退した愛媛1区から出馬することを決断する。
「コロナがなければこの決断はなかったと思う」
息子への手作り弁当は15分で作る
塩崎さんのSNSには時折、美味しそうなお弁当の写真が投稿される。息子のための手作り弁当だ。
「だし巻き卵なんかはチーズや明太子を入れると不評で(笑)。結局シンプルな方が子どもは喜ぶんですよね。一工夫しようと思うとだいたい失敗する」
週に1~2回、15分以内で作り上げる。
「料理中は政治のモヤモヤしたことを考えなくていい。いい気分転換になる」
そんな塩崎さん、記者の間でも有名なのが歌の“ウマさ”。
十八番は「傷だらけのローラ(西城秀樹)」「離したくはない(T-BOLAN)」「誘惑(GLAY)」。
父と親交のあった坂本龍一さんとも食事をしたことがあり、「本当にカッコ良かった」と語る。
「政治家になった意味があった」
議員活動で印象に残る出来事として挙げたのが、厚生労働政務官時代の経験だ。
はじまりは、脊椎損傷の重度障害を抱えた男性がアメリカでの海外研修に挑戦するという話を聞き、面会したことだった。
男性は中学生の時、柔道で大けがをして首から下が動かなくなり、24時間の「重度訪問介護」のサービスを受けていた。
海外では24時間のサポートが受けられるのか…不安を抱える中、一度は「前例がない」という理由で挑戦を断念しかけたという。
しかし、その後、男性の地元である水戸市と厚労省が後押しして、渡米できることになった。
「今回の事例を特別なケースとして終わらせるのではなく、多くの障がい者が新しいチャレンジをする際にサポートを受けられるようにしたい」
塩崎さんが考えたのは「前例がない」を可能にすることだった。
2024年秋、塩崎さんは厚労省として「重度訪問介護」を海外で利用できるよう自治体に通知を出し、障がい者が安心して海外研修などに行けるよう後押しを行った。
障がい者団体から「国として応援するというメッセージが本当に励みになった」といった声が寄せられ、「政治家をやっていて意味があったと思った瞬間だった」と振り返る。
初当選時から厚生労働分野への関心が高く、「僕ら世代が生きていくこれからの時代の中で社会保障をどう維持していくかは最大の国家的テーマの1つ。やらないといけない」と語った。
“人類史上最大級”の変化・・・力を入れる「AI政策」
塩崎さんが現在、最も力を入れている政策がAIだ。
自民党内で立ち上げたプロジェクトチームなどでAI政策の主導的役割を担っている。
2023年にはChatGPTを開発したOpenAI社のサム・アルトマンCEOと岸田文雄総理(当時)との面会を実現させ、2025年にはアメリカのAI開発の新興企業Anthropicのダリオ・アモディCEOと高市早苗総理の面会も橋渡しした。
塩崎さんがAI政策に注力する原点は、「社会や働き方、経済の仕組み、人の生きる価値観まで変わっていくかもしれない」という危機感だ。「人類史上最大級の変化が起き始めている」とまで語る。
塩崎さん自身も、仕事にAIを活用している議員の1人だが、衝撃を受けたのが「バイブコーディング」だ。
AIに指示を出しながら、専門知識がなくてもプログラムを書かせる手法で、ウェブサイトの修正や機能追加なども自分でできるようになる。実際に使ってみると、AIが考えた時間や処理量が「トークン」という数値で表示され、塩崎さんは「これは今まで人間が働いていた『価値』だ」と感じたという。
「AIだったら何トークンでできます。人間のあなたは何トークンでできますか?こういう時代に入ってくる」
塩崎さんはそう指摘する。
人口減少だからAIはプラス、という単純な話ではない。
一方で、「危機感こそ変革の原動力」と強調する。変化を先読みし、社会の形を設計することが政治の役割だと考えている。
AIの開発をめぐっては、アメリカや中国に比べ日本は遅れているという見方もあるが、塩崎さんは「同じ土俵で戦う必要はない」と強調する。産業用ロボットなど日本が強みを持つ分野で、AI時代の価値を生み出す余地は大きい。
モットーは「有言速行」 大事なのは「しつこさ」
最後に、大切にしていることを聞いてみると、塩崎さんが書いたのは「有言速行」の四文字。
「いろんなものが変わっていく時に立ちすくんでる余裕は日本にはない。スピード感をもって変革の背中を押すのが政治の役目だ」。
永田町の意思決定のスピードは時に「遅すぎる」と言われ、塩崎さんも“もどかしさ”を感じてきた1人だ。
何かを変えようとすると、これまでの政策との整合性やリスクがネックとなり前に進まない――。そうした事例は山ほど存在する。
塩崎さんは「現場感覚が重要。ニーズを把握してボトルネックをクリアしていく。『過去の政策との整合性は心配しなくて大丈夫』『問題ない』ことをしっかり伝えることが大事」と話す。
そして、もう1つ大事なことは「しつこさ」だという。
「ひとつのことを言って忘れて次に行ってしまうと、それは動かなくなる」
あの議員また言ってきたよ…と言われるくらいが良いという。
「どうなった?」「何かできることある?」「進めて!」「待っている人いるよ!」塩崎さんは今日も永田町で“しつこく”リマインドしている。

