国会議員ってどんな人?我々政治記者がよく聞かれる最も素朴な質問だ。
日本には衆・参合わせて700人以上の国会議員がいるが、大手メディアで取り上げられるのは一握りだけ。しかし、熾烈な選挙を勝ち抜いてきた国会議員たちには、全国的な知名度はなくとも、驚異的な能力・特技を持った人や、人間味に溢れた魅力的な人が多い。
フジテレビ政治部は、そんな“知る人ぞ知る”国会議員にバトンリレー形式で連続インタビューし、「日本の国会議員」の実像をお伝えする。
第3回は、第2回の塩崎彰久さんからバトンを引き継いだのは自民党の山口晋さん(42)。
エネルギーの最前線から政治の世界へ
山口さんの実家はガス会社だ。自身も東京ガスに7年間勤務し、日本のエネルギー供給の最前線を見てきた。塩崎議員から“エネルギーのプロフェッショナル”としてバトンがつながり、今回のインタビューに至った。
「エネルギーは自分の活動のルーツ」と話す通り、インタビューでは次々にエネルギーの話が飛び出した。「エネルギーは我々の暮らしの一番の根本だ」と強調する。
会社員時代、山口さんはアメリカのシェブロンやイギリスのシェルといった世界的エネルギー企業との交渉を経験した。
しかし、そこで痛感したのは、交渉力の圧倒的な差だったという。
「相手はエネルギーの“現物”を持っており、交渉力においては圧倒的に相手が有利だった。限界を感じた」
企業対企業だけでは打ち負ける。だからこそ必要なのは「国」の後押し、支援だ――
そう考えた山口さんはガス会社を辞め、支援を行う側に回ることを決意する。
「エネルギーを安定供給できない国は挑戦できない」
イラン情勢やロシアによるウクライナ侵略は、日本のエネルギーの脆弱さを浮き彫りにした。
「エネルギーが途絶してしまった時、残念ながら日本はプライステイカー(=市場で決定された価格を受け入れるしかない立場)であり、どうしても世界の価格によって全てが変動してしまう」
エネルギー自給率の低さが、社会全体の不安定さにつながる。この状況を変えるのが政治の役割だと強調する。
さらに、「エネルギーを安定的に安価で供給できない国は挑戦できない」と話し、日本の現状に危機感を募らせていた。
資源外交による調達先の多角化、安全性を前提とした原子力エネルギーの利活用、さらには高市政権が力を入れるフュージョンエネルギー(核融合エネルギー)などの次世代技術を含めた「多層的なエネルギー戦略」を日本が主導していくことが必要だと語った。
アジアで協力して「石油の備蓄を」
山口さんが重視するのが、日本が主導して2023年に立ち上げたAZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)だ。東南アジア諸国を中心に、11か国が参加する国際連携の枠組みで、脱炭素化と経済成長の両立を目指している。
この枠組みのポイントについて「エネルギーを必要としている“輸入国”の集まりだということ」と指摘する。
すでに石炭からLNG、水素へと移行する「脱炭素化」の取り組みは行われているが、原油の備蓄に応用できないかとの思いを披露し、「AZECの加盟国と協力をしていけば、外交においても、極端に言えば防衛においても地域の平和と安定を保つことができるのではないか」と話す。
エネルギーを軸にした外交こそ、自らが国会議員として果たすべき役割だという。
山口さんがこう言及した約2週間後、高市総理がAZECの枠組みを中心にオンライン会議を開き、アジア地域とのサプライチェーン強靭化を図る構想を表明した。
“白血病による兄の死”
山口さんの父はガス会社の会長を務め、衆議院議員を7期、菅政権では自民党の幹部も務めた山口泰明氏。山口さんは、いわゆる「二世議員」だ。ただ、国会議員を目指した理由は別にある。3歳上の兄を白血病で亡くした経験だ。
「あの頃はまだ骨髄バンクが発達していなかった。制度や仕組みを変える、構築していくことで、子どもたちの命を救うことができる。子どもたちだけでなく、多くの方々の命を救うことができるのが政治じゃないか」
社会の制度を変えることで誰かの力になる、そんな政治の可能性に賭けたいと考えたという。
加えて、16歳のとき、フィリピンへの留学中に見た光景も、議員を目指したきっかけだ。
ターミナル駅を降りた瞬間に自分と同じ世代の子どもたちが物乞いをしている姿に「ショックを受けた」という。
「意気揚々と海外に出かけている自分」「現地で学校に通い勉強ができる裕福な16歳」とのギャップ。貧困や格差などの個人の努力では越えられない壁を動かせるとしたら、それは国の政治の力なのではないか――そう感じたという。
優先したいのは「子どもの安全」
山口さんがエネルギー分野以外のことで最も重視してきたのは「地域の発展なくして国の発展なし」という事だ。
埼玉10区選出の「代議士」として、地元の要望を国の制度や予算と結びつけ、実現することこそが役割だと話す。

その象徴的な取り組みの1つが、2019年の台風19号で甚大な被害を受けた入間川流域の治水対策だ。
官房長官への直接の働きかけにより、堤防整備や遊水地整備を含む「緊急治水プロジェクト」が進み、地域の安全性は大きく向上した。2025年の総選挙の際には、応援演説の中で高市総理も言及している。
「河川改修が進み、住民の皆さんが安心して暮らせる形が見えてきた。それが一番うれしい」
一方で、「交通事故の未然防止」にも力を注ぐ。地元の通学路で、幸い大きな事故には至っていないものの、1年で数回必ず交通事故が起きる危険な交差点があった。
県道と市道が交わり、行政の所管が曖昧だったため、対策が進みにくい場所で、どうにかして欲しいという要望を受けたという。
そこで山口議員は、千葉県八街市で起きた通学路事故を契機に整備された「子どもの通行安全」を支援する国のプログラムと地域の要望を結びつけ、標識の変更や新たな柵の設置を実現した。
山口さん自身も小学生の子供を持つ親でもある。外交や防衛といった大きなテーマだけでなく、「子どもたちの安全は何よりも優先したい課題だ」と語る。
「誰もが挑戦できる国」
日本をどんな国にしたいか?この質問に対し山口さんは「チャレンジ、未来へ」と書き込んだ。

「挑戦して、失敗しても、また挑戦できる。そんな環境を整えるのが政治の仕事だと思っています」
シンガポールに留学した学生時代、海外の学生から聞いた「ジャパン・アズ・ナンバー1」という言葉と、帰国後に感じた日本社会の停滞感。そのギャップが、問題意識をさらに強くした。
「大事なのは機会の平等。頑張った人が報われる社会をつくらないといけない」

大きな目標を掲げる山口さんは現在2期目の“若手議員”。
「自分の意思決定ではできないこともあり、そういうところはもどかしさを感じる」と本音も漏らす。
目指す未来を作るための山口さん自身のチャレンジも、これからだ。
