会社員時代に得られなかった「豊かさ」

イノリンさんは、働くこと自体を否定しているわけではない。

「自分でやりたくて働いているなら、何の問題もないです。ただ、全員が全員、定年まで会社で働く必要があるのかな…とは、思いますね。仕事をすることに限界を感じたら、やめてもいいと思います」

資産9800万円より、イノリンさんが今いちばん豊かだと感じているのは「時間」を持っていることだと言う。

お金よりも、時間を持っていることに、ぜいたくさを感じられるとイノリンさん
お金よりも、時間を持っていることに、ぜいたくさを感じられるとイノリンさん

「朝、外に出て太陽を浴びると、午前中の時間がすごく幸せなんです。会社員時代は、自分のための時間は1日3時間もありませんでした。それが今は、朝から丸ごと自分のものですから」

 お金持ちより、時間持ち。就職氷河期という不遇な時代を生き抜いた50歳が手にした豊かさは、資産残高そのものではなく、朝の散歩道にあった。

あなたにとっての豊かさとは、何だろうか。

蜂谷 智子(はちや・ともこ)
ライター・編集者 編集プロダクションAsuamu主宰

蜂谷智子
蜂谷智子

ライター・編集者 編集プロダクションAsuamu主宰
東京都出身。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。語学教材の専門出版社を経て2014年よりフリーランスのライター・編集者として活動。住宅・教育分野の執筆多数。著書に『だから、ひとり暮らし』(東洋経済新報社)がある。