厳選したコーヒー豆を自分で挽いたり、煎茶の茶器や淹れ方を追求したりするのと同様に、ワインのブドウの産地やウイスキーの銘柄にこだわったり、料理との相性を考えながらお酒を楽しんだりする文化を否定するつもりはありません。もしかして人間は、こうして細部にこだわることで、アルコールやカフェインのような依存性薬物をガツガツ摂取することを抑える文化を作ってきたんじゃないかと思うんですよね。

そういう意味では、お酒を「パーティーグッズ」のように捉えて、弾けるためだけにストロング系チューハイを一気飲みするような飲み方は文化の対極にある行為かもしれません。

(イメージ)
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実は、お酒をいくら文化的に楽しんでいた人でも、アルコール依存症になってしまうと、安価ですぐに酔えるお酒に行き着いてしまうのです。

どれほど高級なシングルモルトウイスキーや高級ワインにハマっていた人も、今ならストロング系チューハイ、一昔前なら大容量のペットボトルに入った安い焼酎ばかり飲むようになる。結局、ただエチルアルコールという化学物質を摂取したいだけになってしまうんですよ。これでは単なる薬物依存症です。

だからこそ、前述の通り日々飲んだ量を管理して1週間のトータルで純アルコール量の適量を超えないように工夫することがとても大事です。こちらの記事(休肝日は「連続で」2日取って!脳や筋肉にダメージを与えるダメなお酒の飲み方と、楽しみが「依存」になる時)でもお伝えしたように、休肝日を2日連続で取ると理想的ですね。さらに、食事をきっちり摂ることも忘れないでください。

こうした日々の工夫をベースにして、文化的に楽しめる範疇を超えないことが、お酒を楽しむ上で非常に大事だと思います。

松本俊彦(まつもと・としひこ)
精神科医。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人を対象に診療を行う。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。

構成=高木さおり

松本俊彦
松本俊彦

精神科医。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人を対象に診療を行う。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年佐賀医科大学卒。横浜市立大学医学部附属病院精神科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所司法精神医学研究部、同研究所自殺予防総合対策センターなどを経て、2015年より現職。著書に『自傷行為の理解と援助』(日本評論社 2009)、『自分を傷つけずにはいられない』(講談社 2015)、『もしも「死にたい」と言われたら』(中外医学社 2015)、『薬物依存症』(ちくま新書 2018)、『誰がために医師はいる』(みすず書房 2021、第70回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『身近な薬物のはなし──タバコ・カフェイン・酒・くすり』(岩波書店)他多数。