緊迫が続くイラン情勢の中で、いよいよ19日に迫った日米首脳会談。
トランプ大統領は日本に艦船派遣を要請する発信をするなど、高市総理がどのように対応するかが注目されます。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」のスタジオでは、橋下徹氏と元朝日新聞記者でトランプ大統領の側近にも情報網を持つ峯村健司氏が、高市総理の”決断”をめぐって真っ向から意見を戦わせました。
■「二転三転」するトランプ発言の軌跡
トランプ大統領の発言の推移は以下のとおりです。
・3月14日:SNSで日本・中国・韓国・フランス・イギリスの5カ国に対して艦船の派遣を呼びかけ。
・3月15日:「船舶護衛に向け7カ国と協議中。影響の大きい国が関与すべき」と拡大。
・3月16日:「日本は石油輸入の95%をホルムズ海峡に依存している。船舶の安全確保に喜んで支援すべきだ」と日本を名指しで批判。
・3月17日未明:「NATOの同盟国の大半から関与したくないと通告を受けた。日本・オーストラリア・韓国も同じ。誰の助けも必要としていない」と一転。
■「拗ねているのか、それとも作戦なのか」
わずか3日間で要求内容が大きく揺れ動いた背景について、峯村氏はこう分析しましたた。
【峯村健司氏】「トランプさん自身にも迷いがある。最初は『同盟を試す試金石として日本に要求しているんだ』と言っていたが、どうもあまり参加してくなさそうだと思った。
今朝のSNSを見ると完全にいじけている、拗ねちゃっている。ある意味、日本はまだトランプさんを説得する余地があるとも見える」
スタジオでは「本当に拗ねているのか、それとも作戦なのか」という疑問も呈される中、峯村氏はトランプ大統領の“本音”についても言及しました。
【峯村健司氏】「トランプさんとしては、まず戦争を早く終わらせたい。そしてホルムズ海峡を安定させたい。色んな国に艦艇を出してもらって安定させたいというのが本音だと思います。ただ、それがなかなかハードルが高いということに気づき始めている」
■トランプ大統領との向き合い「敵対する必要はない」と橋下氏
橋下氏は「トランプさんの政治は評価するところがたくさんある」と述べるものの、今回のイランへの攻撃について「今のやり方は限度を超えている」と指摘します。
【橋下徹氏】「トランプさんはこれまで『1対1のバイで交渉する』とずっと言っていた。マルチといって多国間の、『グループで協議するのは嫌だ』と。バイで交渉するとアメリカは超大国なので、常に交渉では勝てる。
でも見てください、今回は同盟国、いわゆる中堅国がみんなある意味、協調したわけではないんだけど。
なんとなくみんなNOの意見になってくると、あのトランプさんですら、世界最強と言われてるアメリカの国ですら、自分一国でやりにくいなと思って、トランプさんこういうふうになってしまう。
カナダの首相がちょっと前に『こういうやり方をやろう』と言ったんですけど、トランプさんにガンガン反撃されていた。
スペインも拒否をして、『貿易止めるぞ』とか言われてるんだけど、まさに同盟国は、トランプさんと敵対する必要はないけれども、ちゃんと法というものを、しっかりと打ち出すことが重要だと思いますよ。タッグを組んで」
■「積極姿勢を見せるべし」vs「合法性を問うべし」
トランプ大統領の発言は二転三転していますが、高市総理が日米首脳会談で「自衛隊の艦船を派遣してほしい」と要請されたとしたら、どうすればいいのでしょうか。
峯村氏と橋下氏の意見は大きく分かれました。
・峯村氏の提言:「とにかく積極姿勢を見せるべし。安全はタダではない」
・橋下氏の提言:「イラン攻撃の”合法性”を問うべし。合法でなければ協力するな」
峯村氏は「トランプ大統領から要請があった場合、否定しないことが大事」と強調しました。
【峯村健司氏】「これまでトランプ氏とガチンコでぶつかった方々は例外なく、否定から入った人たちなんです。ウクライナのゼレンスキー大統領もそうでした。まずそれを避けるというのが高市さんの重要なポイントです」
さらに峯村氏は、「日本がすでに中東で活動していることをトランプ大統領に理解させること」の重要性を指摘しました。
【峯村健司氏】「日本は2009年から海賊対策でジブチに拠点を置いて、ずっとやっている。さらに2020年からは中東地域での情報収集活動として、護衛艦をずっと派遣している。
船を出す出さないという議論よりも、『もう出しているんだ』ということ、中東にこれだけ貢献しているということをしっかりトランプさんに理解してもらう。
恐らくトランプさんはそういう細かいことを分かっていないので、『やっているんだ』とまずアピールすることが極めて重要だと思います」
ここで番組の青木源太キャスターが、峯村氏が提言する「積極姿勢を見せる」ということについて「自衛隊の艦船を派遣したほうがいいのか」と切り込むと…
【峯村健司氏】「まず色んな条件があると思います。いきなりホルムズ(海峡)という今、戦闘地域の中に行くのは難しい。法の制約でいうと。
だからこそ、まず『否定はしない」と。『ただ今、条件ではない。まず大事なのは停戦に持ち込むことだ』と(提案する)。
停戦に持ち込むために、『G7の中でイランと一番関係があるのは日本である。だからこそ、停戦の努力を我々はやる。能力もパイプもあるんだ』とトランプ氏にそれを説得することはできると思います。
『外交』と『行動でもやってるんだ』という“両輪”を見せることが重要」
■橋下氏「法を逸脱したら国家が破滅する」
一方、「イラン攻撃の”合法性”を問うべし。合法でなければ協力するな」と提言する橋下氏は峯村氏の意見に対し、「僕は違いますね」と真っ向から切り返しました。
橋下氏が強く主張するのは、”法”の重要性です。
【橋下徹氏】「われわれはトランプさんと付き合っているわけじゃなくて、民主国家であるアメリカとの付き合いです。
トランプさんは選挙で入れ替わる可能性がある。実際にアメリカ国民の半数ぐらいはトランプさんと違う考え方を持っているわけで、日本の姿勢をしっかり示すべき。
僕は臆病です。自分の子供・妻・家族・隣人たちが外国からの武力で殺されるのは嫌。だから国の防衛力は強化すべき。核兵器の共有も議論すべきだということをずっと言っている。同盟関係も強化すべき。
と同時に、日本は“中堅国”なので、法というものも最大の武器です。アメリカは超大国だから法を無視してもできる。
トランプさんは『国際法はいらない』と言っているけれども、日本がそんなことを言ったら中国やロシアに簡単にやられてしまう。
日本の武器は防衛力強化だけじゃなく、法というものも重要。日米同盟は重要だけど『合法の範囲でしかわれわれは動けませんよ。合法の範囲でしっかり支えますよ』ということを、ドンと言うべき。
それでトランプさんに嫌がられたら仕方ない。われわれは法で生きていくしかないんだから」
16日にトランプ大統領は「日本や欧州の同盟国に支援を要請しているのは、彼らが必要だからではなく、彼らがどう反応するか知りたいためにしているようなものだ」という発言をしています。
要求への対応によっては、日米同盟に亀裂が入ることや、東アジアの安全保障環境への影響が生じることも考えられますが、橋下氏は次のように答えます。
【橋下徹氏】「亀裂が走るのはトランプさんとの間であって、ここで法を崩してしまったらトランプさんから大統領が変わったときに、中国やロシアに対しても法が使えなくなる。僕はそこを懸念している。
亀裂が入らないようにするには、法を持ち出すのもヨーロッパの人たちは説教をたれるんですよ、トランプさんに。それは絶対、厳禁。
日本が法を持ち出すときには、太平洋戦争のときに法を逸脱して国民がものすごく不幸になったという過去がある。
『申し訳ないけど、法を逸脱したら国家が破滅してしまうくらいのところにあるんです』というお願いの仕方で持ち出すべきだと思います」
■「はっきりと艦船の派遣は拒否すべき」と橋下氏と峯村氏
橋下氏はその上で、「イランへの攻撃が合法か確認できなければ、はっきりと艦船の派遣は拒否すべき」だといいます。
【橋下徹氏】「合法が確認できなければ、『それはできません』と言うべきだと僕は思う。ヨーロッパで今続々とそれを言い始めて、トランプさんが拗ねているところもある。こんなところでトランプさんに追随するお世辞を言う必要はない」
この橋下氏の意見には、峯村氏も同意します。
【峯村健司氏】「そこは言わなきゃいけない。『なぜ攻撃したのか』という理由について、アメリカが言ってるのは『イランが核開発をしていた』という説明をしている。
だけどその細かい話は少なくとも我々に共有されてない。そうなると、『それを教えてくれ、シェアしてくれ』というのは、同盟国として言う義務も権利もある。
それは橋下さんと同じ意見。ただ私も臆病。そういう意味では、今、日本が頼れるところは残念ながら同盟国であるアメリカしかない」
■「同盟は終わる」峯村氏が明かしたワーストケース
そして峯村氏は、トランプ政権と近い人物から直接聞いたという衝撃的なシナリオを番組で明かしました。
【峯村健司氏】「先日、トランプ政権に極めて影響力がある方が来日したときに、意見交換をした。
イランや台湾有事のシミュレーションをしたとき、『船を出せ』とトランプ大統領に言われた場合に、『憲法やいろんな制約があってできません』と言った場合の“ワーストケース”シナリオは何かと聞いたら、一言、”もう同盟は終わるね”とはっきり言われた」
こうした現実を踏まえ、峯村氏は集団的自衛権の名目でアメリカと一緒にホルムズ海峡に展開することには慎重な姿勢を示しながらも、停戦仲介など外交的な行動との”両輪”を訴えました。
■イランからの”脅威”という現実
番組ではもう一つの懸念も浮き彫りになりました。
イランのアラグチ外相は「敵国であるアメリカとイスラエルを支持する国の船舶を除き、その他の全ての国に、ホルムズ海峡は開放されている」と発言しています。
つまり、日本が艦船を派遣すれば、イランから”敵国”とみなされ、攻撃対象になるリスクがあります。
峯村氏もこの点については橋下氏と足並みをそろえました。
【峯村健司氏】「これはすごく大きなリスク。集団的自衛権の名目でアメリカと一緒になって行動するようなことは、私もやるべきではないと思いますし、国際法的にも危ない。
イランに対しても高市さんが言っているような”したたかな外交”をやるべきで、停戦の仲介やるよというパイプを使って、説得することが重要。
もしこれができないんだったら、『残念ながら我々としてもアメリカと付かざるを得ないよ』と、ある意味プレッシャー、アメとムチで交渉してくやり方も一つある。
2009年のイラン危機の当時の安倍政権は、そのようなことやった。ハメネイさんのところに会いに行って説得をした。まさに橋下さんがおっしゃってるような勇ましいことだけではなくて、水面下の外交もしたたかにやるべき」
橋下氏もジブチに現在展開する自衛隊については引き上げる必要はないとしつつ、「さらにホルムズまで行くかといったら違う」と述べました。
■「二枚舌・三枚舌」外交こそが中堅国・日本の生きる道
橋下氏が最終的に提唱したのは、“多層的外交”の姿でした。
【橋下徹氏】「イランとの関係でいえば、アメリカとイスラエル側につかなければ、タンカーは出すと言って、実際に中国向けやインド向けのタンカーは出ている。
だから二枚舌・三枚舌外交、中堅国だからこそアメリカには偉そうに言うんじゃなくて、『申し訳ないけど日本は法を重視しなきゃいけないんです』と。
イランに対しても敵視することなく、日本のタンカーを出してもらうような交渉をするということが外交で必要」
どちらも”ホルムズ海峡への直接派遣には慎重”という点では一致しており、日本外交の難しさをあらためて浮き彫りにした議論となりました。
高市総理がトランプ大統領とどのような言葉を交わすのか。その”決断”が注目されます。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年3月18日放送)