三幣教育長は、栄養素の帳尻合わせを重視した献立はやめるよう栄養士に伝えました。栄養素の計算に重きを置くあまり食べ合わせがちぐはぐになりがちになり、子どもたちが給食を残せばその計算は意味をなさなくなったりしてしまうからです。

三幣貞夫教育長
三幣貞夫教育長

食材は「農産物」としてだけでなく、「食文化」として考えるため、米粉を使ったパンも出しません。あくまでご飯と味噌汁を中心におかずとの食べ合わせを重視した完全米飯給食を実践し続けています。

南房総市の給食の一例。ご飯・クジラの竜田揚げ・シャキシャキ和え・レモン香るポカポカさつま汁・牛乳(提供:外房学校給食センター)
南房総市の給食の一例。ご飯・クジラの竜田揚げ・シャキシャキ和え・レモン香るポカポカさつま汁・牛乳(提供:外房学校給食センター)

完全米飯化によって、南房総市の学校給食は、地域のお米と農産物を利用した気候風土が感じられる給食、郷土の味を大切にした給食、そして何よりも子どもの健康に配慮した給食に変わっていきました。南房総市では、子どもたちが学校給食を食べる期間だけでなく、大人になっても学校給食の体験が食生活に生きるよう、将来にわたって責任を持って子どもの健康を考えています。

「ご飯が基本」の食習慣へ

農水省と文科省は「味覚を育む子どもたちに米を中心とした『日本型食生活』の普及・定着を図る上で重要」との方針で、米飯給食の回数を増やすことを呼びかけています。ご飯が主食の給食を食べ続けた子どもたちは、きっとご飯食が食習慣の基本となっていくでしょう。

南房総市の子どもたちは地域の農水産物を味わうだけでなく、地域の農業や漁業を体験して肌で感じている
南房総市の子どもたちは地域の農水産物を味わうだけでなく、地域の農業や漁業を体験して肌で感じている

今から17年前の平成21(2009)年度には、農水省が米飯給食の回数増加を目的に、地元産米を活用する学校に家庭用電気(ガス)炊飯器を無償貸与する補助事業を行い、17市町村44学校に計468台の炊飯器が届けられました。各クラスで炊飯器を使用するには大規模な電気工事が必要という課題もあり、残念ながら補助事業は廃止になってしまいましたが、各クラスで炊きたてのご飯が食べられたら、子どもたちはきっとご飯好きになるのではないでしょうか。当時の課題を解決した上で、ぜひ復活してほしい取り組みです。

家庭では何を食べても自由ですが、学校給食は教育の一環。子どもたちの味覚や食習慣の形成、健康のためにも、「生きた教材」(文科省)をうたう学校給食は、大いに改善の余地がありそうです。

柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、お米ライター

柏木智帆
柏木智帆

米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター。大学卒業後、2005年神奈川新聞社に入社、編集局報道部に配属。新聞記者として様々な取材活動を行うなかで、稲作を取り巻く現状や日本文化の根っこである「お米」について興味を持ち始める。農業の経験がない立場で記事を書くことに疑問を抱くようになり、農業の現場に立つ人間になりたいと就農を決意、8年間勤めた新聞社を退職。無農薬・無肥料での稲作に取り組むと同時に、キッチンカーでおむすびの販売やケータリング事業も運営。2014年秋より都内に拠点を移し、お米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送りながら、お米の消費アップをライフワークに、様々なメディアでお米の魅力を伝えている。また、米食を通した食育にも目を向けている。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任。
著書に『知れば知るほどおもしろいお米のはなし』(三笠書房)、『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)がある。