介護が必要になったとき「何を選べばいいのか」と感じる人は多いだろう。

「何が良いのか」など適した製品やサービスを見つけにくい一方で、企業側も必要とする人に情報を届ける難しさを感じている。
人生100年時代となった今、誰もが直面するであろう「介護」。しかし、利用者・企業・現場の間にある大きな壁が課題を生み出しているという現状がある。

その状況を打破するカギが、一般社団法人KAiGO PRiDEが主催する「KAiGO Design Award」だ。

介護領域に関する製品・サービスを広く発掘・表彰する「KAiGO Design Award」
介護領域に関する製品・サービスを広く発掘・表彰する「KAiGO Design Award」
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一般社団法人KAiGO PRiDE代表理事のマンジョット・ベディさんと、理事の小口貴幸さんに、アワード開催のきっかけと介護に関わるすべての人・企業をつなげ、等しくメリットを生む仕組みについて聞いた。

※トップサムネイルは左上から順に、パナソニック株式会社の「NICOBO(ニコボ)」、三和厨房株式会社の「テーブルコーデ」、WHILL株式会社の「WHILL Model R」、牛乳石鹼共進社株式会社の「SUSUGU」。

“KAiGOエコシステム”を創出するアワードに

2025年に初めて開催された「KAiGO Design Award」。
介護・ヘルスケア領域の優れたプロダクト・ビジネスモデル・AIソリューション・クリエイティブ作品を表彰する同アワードには、1回目から多くの応募を集め、2回目の2026年は MySCUE(イオンリテール株式会社)との共催で3日間の決勝イベントが実施され、認知度の拡大とともに応募件数も増加。このアワードの地方予選は全国3都市で開催され、勝ち抜いた企業らが決勝の舞台・東京ビッグサイトのステージに立った。  
 

2026年の「KAiGO Design Award」の様子
2026年の「KAiGO Design Award」の様子

このアワードを立ち上げた経緯について、マンジョットさんはこう語る。
「2040年には約57万人の介護職が新たに必要になるとも言われている中で、業界が直面している課題を解決するためには、業界外のプレイヤーの参画が必要不可欠です。民間企業・起業家・投資家など、今はまだ直接、介護や福祉に関わっていないプレイヤーにこのフィールドにチャレンジしてもらうことで、新しいソリューションが提供され、問題の解決につながる。“KAiGOエコシステム”の創出の一環として立ち上げたのが、この『KAiGO Design Award』です」

一般社団法人KAiGO PRiDE代表理事 マンジョット・ベディさん
一般社団法人KAiGO PRiDE代表理事 マンジョット・ベディさん

マンジョットさんのこうした想いが形になったアワードは2027年の開催も決定。すでに関連企業や多様なクリエイターから応募希望の声も届き、さらなる規模の拡大が予想される。

審査員に介護の現場の声を反映

理事の小口さんによると、業界内外に急速に認知度を高め、協賛の声が相次ぐ理由は同アワードならではの審査方法にあるという。

「このアワードの最大の特色は、多角的な視点で審査していることです。介護の現場と利用者のことを誰より知り、『使う側の視点』で見る現役介護職、市場への展開についてノウハウを持ち『売る側の視点』でみるイオンリテールの事業担当者、そしてマーケティング・ブランディングの観点から『伝える側の視点』でみるKAiGO PRiDE。この3つの視点により、応募作品やサービスの本当の価値を見極めていくことを大事にしています」
 

一般社団法人KAiGO PRiDE理事 小口貴幸さん
一般社団法人KAiGO PRiDE理事 小口貴幸さん

なかでも、“現場介護職の声”を重視していることが、介護領域への参入を目的とする企業にとっては大きなメリットとなっているという。

「彼らの関わりは極めて重要です。単に形が美しいから受賞するのではなく、介護現場において本当に価値があるものだと当事者が認める形になるわけですから」

2026年の同アワードでは、プロダクトデザイン(ヘルスケア・介護)、ビジネスアイデア、AI、クリエイティブコンテンツの全4部門が設けられた。

そのうち、コミュニケーションロボット『NICOBO(ニコボ)』でAI部門の最優秀賞を受賞したパナソニック株式会社は、この現場介護職によるダイレクトな審査の価値について、以下のコメントを寄せている。
 

26年のAI部門で最優秀賞を受賞した、 パナソニックの「NICOBO(ニコボ)」
26年のAI部門で最優秀賞を受賞した、 パナソニックの「NICOBO(ニコボ)」

「NICOBOはもともと一般家庭向けに販売している製品でしたが、同アワードの最優秀賞を受賞したことで、ニコボが持つ“癒し”や“会話を生み出す”という商品価値が、介護福祉の現場においても価値があることを確かめられました。おかげで、社内的にも今後の事業展開における根拠となったことは大きな収穫です。NICOBOのように介護向けではない製品が実際の現場で評価されるかどうかを現場の目線で問える場所というのは、本当に貴重だと感じています」

事業規模問わず応募可能

さらに、このアワードは応募する企業のジャンルもさまざまだ。事業規模を問わず、スタートアップやスモールチームにも門戸を開くことで、知られざる製品・サービスの発掘につなげている。

26年のビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞したのが、三和厨房株式会社 (大阪・八尾市)の高齢者福祉施設専用の磁器食器レンタルサービス『テーブルコーデ』。

三和厨房はこのアワードに応募した理由を「うちは大阪の小さな古い会社ですので、PRも発信の仕方もわからない。このアワードのお力を借りれば、名前や取り組みを知っていただく機会になると思いました」と語る。
 

26年のビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞した 三和厨房の「テーブルコーデ」
26年のビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞した 三和厨房の「テーブルコーデ」

続けて受賞後には途絶えていたご縁がつながったり、声がかかったりするなど反響の大きさを実感し、自社の製品やサービスを広げる契機になったという。
「何年もご縁が途絶えていたような方々ともまた繋がれました。社外からの反響が大きくて、『何か一緒にできませんか』というお声がけをいただきましたし、私たちからすると少し背伸びした大きなお客様のところにも『こういう賞が取れたので、1回聞いてもらえませんか』という形でお話に行けました」

地域ごとの課題に寄り添うため地方予選も

そして、前回から地方予選を開催したことも今後の発展を予感させる。

マンジョットさんは、「都会の開催が多く交通費も厳しい」「地方でもアワードがあるが介護に特化していないのでフェアに評価されない」という地方のチャレンジャーの声を吸い上げ、26年は仙台、東京、福岡で開催したという。
 

「地方在住の方やスタートアップ・スモールチームの方々が、よりチャレンジしやすいよう、地方予選を開催しました。各地域の現役介護職の方に審査員を務めていただき、地域性にも寄り添ったプロセスにしました。今後も開催都市を増やしていく予定です」

実際に、次回からは大阪も加わり4都市で予選が開催される。都市部と地方で介護に対するニーズや求められる対応力が異なるように、現場で発生する課題は地域ごとに異なる。予選が開催される地域が増えれば、それだけ各地の課題に寄り添った地元の企業からの応募も増え、地域特有の課題解決に直結できる。

こうした取り組みも話題を呼び、応募企業が増加傾向にあることは、企業だけでなく、介護を必要としている人や介護をしている人たちにも大きなメリットがある。

「KAiGO Design Award」を見ることで、地域の特性や各人の課題解決に寄り添った、「探していた介護」に出会う確率が高まる。このアワードは、介護の困りごとや不安ごとを解消する役割も担ってくれるのだ。

最後に、マンジョットさんはこのアワードの目的をこう話す。

「人生100年時代。超高齢社会と言われる現代日本においては、人生の後半を支える“だけ”の社会では持続しません。一人ひとりが自分らしさや楽しさを保ちながら生き続け、その力が社会の中で循環していくことが、これからの前提になります。

このアワードを通して、その人がその人らしくいられるように、我々がチャレンジにスポットライトを当てることで、介護の未来を変えたい人たちのチャンスが増えていく。そんなサイクルを生み出していくことが目的です」

さらには、このアワードから新たな出会いが生まれて、そのつながりから介護の未来を変えるようなプロダクトやサービスが生まれることも期待していると展望を語った。
 

次回の応募はここから

2027年の応募は2026年7月1日より開始予定。また、同日よりエントリーについて説明する特別動画を公開予定。

その後、仙台、東京、大阪、福岡の4都市で地区予選が開催され、各地の予選通過者が来年3月17日~19日に東京ビッグサイトで開催される「International KAiGO Festival 2027」に集い、各部門の最優秀賞が発表される。