1日480件、3分に1件のペースで110番が入電する岐阜県警の「通信指令室」。現場に密着すると、事件や事故など“緊急事案”への対応が続く一方、業務を妨げる“メイワク通報”も後を絶たない。市民の安全を守る“最前線”を追った。
■3分に1件のペースで…110番に対応する「通信指令室」
岐阜県警本部の中にある「通信指令室」では、24時間365日、岐阜県内すべての110番に対応している。
入電は1日あたり479件で、実に3分に1件のペースだ。

指令室には、通報を受ける「受理台」と、現場近くでパトロール中の警察官や警察署に指示を出す「指令台」がある。この日は、24時間を8人で対応していた。
中央には、警察車両の稼働状況が表示される巨大なモニターが設置されている。パトカーの位置だけでなく、交差点などに設置しているカメラの映像も表示していて、リアルタイムで交通状況を把握できる。
田口誉通信指令官:
「強盗・誘拐・放火・殺人とか、現場だけではなくて、周辺にも緊急配備をかけるので」

通信指令室で対応にあたる、岩瀬勇人(いわせ・はやと 27)巡査長。2021年に警察学校を卒業してからおよそ4年間、交番などに勤務し、2025年10月に異動してきた“新人”だ。
午前8時半すぎ、『茨城県に住む妹と連絡が取れない』という「安否確認」の通報が入ってきた。
通報を受ける岩瀬巡査長:
「最後に連絡取れたのはいつ頃?おとといに電話された?それ以降、連絡が取れないということですね」
岩瀬巡査長は、状況を聞き取ったうえで、他県の警察へ通報内容を転送した。

指令室での勤務は、午前8時半からの24時間。奥さんが作った弁当で昼食をとるが、それも指令室の中だ。
2024年に結婚したばかりの岩瀬巡査長。「毎日色んなパターンで作ってくれるのでありがたい。ただ、量が多いので太っちゃう」と“おのろけ”気味だ。春には、第一子の誕生も控えている。

昼食中も鳴りやむことない、通報や無線の音。
岩瀬巡査長:
「あんまり休まらない。常に緊張していますし、やっぱりちょっと構えちゃう」
■“手が血まみれの不審な2人組”の目撃情報
午後3時。指令室に“緊張”が走った。
通報を受ける田口誉通信指令官:
「手が血まみれ…2人組。いまどこウロウロしています? 店の中に入って、いまは駐輪場にいるってことですか?」
現場は瑞穂市内の商業施設の駐輪場で、“手が血まみれの不審な2人組がいる”という目撃情報だ。
<指令>
「『手に出血のある2人組が店の中に入ってきている』、詳細聴取中、事案番号282、どうぞ」
指令を受けたパトカーは、すぐさま出動。無線で状況を聞き取りながら 現場に急行する。

<指令>
「手が血まみれの2人組。黒色ジャケット着用。いずれも男30代と40代。片方は坊主、もう片方はロン毛」
通報からおよそ10分。現場の商業施設に到着した。
<指令>
「当事者ら手から出血。凶器等の所持の恐れもあり、発見したならば職務質問を実施せよ」
店舗のスタッフや目撃者に、次々と聞き取りを行う。

現場に駆けつけた警察官:
「車に乗って出ていきました。黒色の車種は●●です」
<司令>
「防犯カメラ“ある”と思われる。店員から協力依頼実施し、当事者らの写真撮影、転送せよ」

現場で聞き取り捜査などを行ったが、不審者はいなかった。
田口誉通信指令官:
「現場に行ってみないと正直分からないというのがあります。想像と現場が違うときは結構あるので、そんな内容でした」
■子供の鳴き声が…“夫に暴力振るわれた”女性からのSOS
午後4時半すぎ。道路が混雑する時間帯になると、交通事故に関する通報が急増する。対応に追われる中、飛び込んできたのは“夫に暴力を振るわれた”という、自宅にいる女性からのSOSだ。
通報を受ける岩瀬巡査長:
「もしもし!旦那さんと離れていますか?お子さんを連れて、外に出られないですか?旦那さん危ないものとか持っていない?」

現在のところ危険物はないということだが、電話の先からは子供の泣き声が聞こえてくる。
岩瀬巡査長は、先輩たちから「ケガは“なし”でいいのか」「警察に相談をしたことはあるか」など、聞いておくべき質問のフォローをしてもらいながら、的確に対応する。
通報を受ける岩瀬巡査長:
「警察官が急いで向かっていますので、到着まで電話つないだままにしておきますから、何か変わったことがあれば、『旦那さんが家から出てきた』とかあればそのまま伝えてください」

指令室からの指示で警察官が到着し、無事、女性と子どもの安全を確保できた。
副司令官:
「安全を確保できたし、よかったと思います。緊張したね」
岩瀬巡査長:
「ありがとうございました」
■“不要不急”や誤作動による通報は「全体の約2割」に
2025年、岐阜県警にあった110番の数は17万4700件あまり。記録が残る1989年以降で過去最多だった。
時には命にかかわる110番だが、なかにはこんな通報も…。

「ガードマン通報の異常発報。建設現場。東側の赤外線センサーが発報」
警備会社から「建設現場で異常を知らせるセンサーが作動した」との通報。人が直接確認した通報ではないため、誤報も多いという。
指令課員:
「半分以上が誤操作、動物が入り込んだり、人が誤って入っちゃったり。ここに過去のやつがあるけれど、夜中にも誤った通報がありますね」

さらに、後を絶たないのが、“不要不急”や誤作動による通報だ。
通報を受ける岩瀬巡査長:
「携帯電話が…変になってきた?スマートフォンの不調ということですね」
通報を受ける別の指令課員:
「今回は『押すつもりなかったけど(通報を)押しちゃった』ってことなんですね。『事件事故は何も起きていないよ』ってことでいいですか?」
事故などの衝撃を感知したスマートフォンが、自動で緊急通報する機能の誤作動や、「タクシーを呼んでほしい」「奥歯が痛い」といった“メイワク通報”まで。
2024年は、全体のおよそ2割がこうした通報だった。

田口誉通信指令官:
「110番の回線も限られているので、回線がふさがってしまう。ふさがると、事件とか事故の通報で『すぐに現場に来てほしい』という通話ができない状態になってしまうので、“メイワク通報”はやめていただきたい」
■岩瀬巡査長「どんな事案にも素早く対応できるように」
業務開始から17時間が経った午前1時半ごろ、岩瀬巡査長は仮眠室へ。1日の業務を振り返りながら、ようやくベッドで一息つく。
奥さんからは、お腹の中にいる赤ちゃんのエコー写真が送られてきていた。
岩瀬巡査長:
「女の子。父親になるって考えたら、より頑張らないとなという気持ちになりますね」

仮眠から戻ると、すぐさま110番の対応にあたる。指令室には、受理と指令の声が飛び交っていた。そして、業務開始から24時間が経った午前8時半。長い1日がようやく終わった。

岩瀬巡査長:
「まだ練習が足りなさすぎるので、具体的な理想像は出てこないですけど、とにかくどんな事案にも素早く対応できるように、これからたくさん練習を積んでいきたい」
