ノロウイルスによる食中毒が、日本全国で相次いでいる。ウイルスの特徴や感染しないための注意点を、専門家に聞いた。

■高校生21人が症状訴えたケースも…全国で相次ぐ「ノロウイルス」による食中毒

岐阜県岐阜市の喫茶店で、2025年1月20日に食事をした高校生21人が、下痢や嘔吐などの症状を訴えた。生徒たちの便などからノロウイルスが検出され、保健所は食中毒が発生したとして、店を営業禁止の処分にした。

この店には朝食や夕食をとりに高校生がよく訪れていて、20日のメニューは卵焼き、ソースかつ丼、サバの味噌煮などだったという。

1月だけでも北海道や富山、佐賀など、日本各地の飲食店でノロウイルスによる食中毒が発生した。

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名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一(せいいち)名誉教授にノロウイルスについて聞いた。

佐藤教授によると、ノロウイルスは潜伏期間が1~2日で、突発的に起こる嘔吐や下痢を繰り返し、1~2日続くという。以前から存在していたが、2002年に正式に「ノロウイルス」と命名された。

食中毒の発生件数は寄生虫の「アニサキス」、細菌性の「カンピロバクター」に次いで3番目だが、患者数でみると全体の40%以上で最も多くなっている。1件で大規模な食中毒になりやすいことが特徴だ。

また、一年中発生するものの乾燥と低温に強いため、11月~2月で約6割を占めている。

冬に活発になる性質がある。

■アルコール消毒は効果なし…ノロウイルスの「3つの特徴」

そして厄介な3つの特徴がある。1つは「感染力」だ。

名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授:
非常に感染力が強い。(ウイルスが)10~100個ぐらいでも完全に感染します。2~3カ月も生存しているということもある。

一般的なウイルスは、体内に1000~2000個ほど体内に入ると感染するが、ノロウイルスは数十個でも感染してしまうほど、力が強いという。

2つ目の特徴は「大きさ」だ。一般的なウイルスは、花粉の1000分の1、細菌の10分の1程度の大きさだが、ノロウイルスはさらに20分の1ほどで、非常に小さい。そのため、ウイルスが浮遊しやすいという。

名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授:
嘔吐するなどしたあときれいに拭き取ったつもりでも、例えばカーペットとか、そういったところに残っていることがあります。冬は特に空気も乾燥しますので、非常に小さなウイルスですから浮遊しやすい。

そして3つ目が「アルコール消毒が効かない」ことだ。

細菌性食中毒やコロナでは有効だったアルコール消毒は、ノロウイルスには有効ではない。ウイルスを退治しにくいという性質があるという。

ノロウイルスの感染経路は主に3つで、「ウイルス汚染したカキなどの二枚貝を十分に加熱しないで食べる」、「感染者が手などで扱った食品を食べて感染」、「感染者からの飛沫や空気感染・便や吐物を伝って感染」がある。

感染を防ぐ方法について佐藤名誉教授に聞くと、ノロウイルスの知識がある人でも見落としやすいポイントがあるという。

名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授:
きちっと長いこと手洗いをするというよりも、ササッと終わらせてしまう。冬はどうしても水が冷たいので億劫になる。

水が冷たいと手洗いが疎かになりがちだが、石鹸などを使って、時間をかけて洗うことが大切だ。

そして佐藤名誉教授は、今の時代ならではの注意点も指摘している。

名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授:
トイレにも肌身離さずっていうぐらいスマートフォンを持って入ると思いますけれども、非常に汚染されている可能性が高い。

たとえ手を洗ったとしても、ウイルスがついたスマホを触った手で料理や食事をすると、感染の危険が大きくなる。

注意点はほかにもある。まず食品の「加熱」に関しては、一般的なウイルスよりも熱にも強いという。ノロウイルスの場合は、食べ物の中心が90℃で90秒と長めに加熱することが大切だ。そしてとにかく、感染者には調理に関わらせないことだ。

「消毒」は、アルコールは効かないが、「次亜塩素酸ナトリウム」という成分が入った消毒液や漂白剤は有効だ。例をあげると「キッチンハイター」などの原液で、汚染した場所などを消毒するとよい。

また、症状が消えても感染から4週間程度は、ノロウイルスを排出し続けるため、佐藤教授は油断をしないよう呼びかけている。

感染を防ぐにはウイルスを「持ち込まない」「広げない」が鉄則だ。 厚生労働省のHPなどにも、様々な対策が掲載されている。

2025年1月31日放送

(東海テレビ)

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