長崎県美術館で開催中の「生誕100年山下清展-百年目の大回想」。「放浪の天才画家」と言われる山下清の作品からは、彼の性格も垣間見ることができる。
制作時間をコントロールしていた清
「放浪の天才画家」山下清は、映画やドラマの印象が強い。
実は、放浪先ではほとんど絵を描いていなかった。学芸員の松久保修平さんは「清は驚異的な記憶力で見た景色を克明に思い出すことができる能力を持っていた。放浪から戻っては目に焼き付いている各地の風景を、彼自身の感性で貼絵に仕立てていった」と説明する。
一般的に芸術家は制作に入ると時間を忘れて作品に没頭すると思われがちだが、山下清は違った。
甥・浩さんによると「すべての構図が頭の中に入っているため作品制作に迷いがなく、淡々と仕上げる。制作時間もコントロールできていて、毎日の制作時間が決められていた」と語る。「この日は〇時間作業をする」と、時間を決めて制作していたというのだ。
「桜島」の制作時間は約130時間
代表作の一つ、1954年制作の「桜島」は、海にどっしりと浮かぶ桜島や鹿児島湾が繊細な貼絵で表現されている圧巻の作品だ。
「桜島」の作品の裏には、作品の作業日と作業時間が直筆で記されている。
制作開始は1954年3月14日。完成したのは4月7日。制作にあたった25日間、毎日、作業を始めた時間と終わった時間を記している。
「桜島」の制作にかかった時間は、毎日の作業時間を合計すると129時間40分。1週間足らずで完成させていることがわかる。
作業開始日と完成日のみを記す画家は多くいるが、まるでタイムカードのように途中の作業日や作業時間まで記録する画家は非常に珍しく、清の真面目で几帳面な性格が如実に表れている。
学芸員の松久保さんによると、「ここまで作品の制作時間が明確にわかるのは非常に珍しい」ということだ。
「桜島」印象的な構図に注目
桜島を題材に作品制作を行う画家は多くいるが、山下清の「桜島」はとりわけ印象的な構図が目を引く。
桜島と鹿児島湾は横から、手前の線路は上から見た構図となっている。
通常の模写であれば鹿児島湾と手前の線路で構図が変わることは起こりえない。これは現地での模写や現場で描いたスケッチを元に描かず、自身の記憶のみで絵を描いた清ならではの構図といえる。
ちぎる紙の大きさを変えながら、青と白の紙だけで鹿児島湾の奥行きや波を表現した繊細な部分にも注目したい。
「生誕100年山下清展-百年目の大回想」は長崎県美術館企画展示室で4月5日まで開催中。料金は一般1500円、中高生1000円、小学生以下無料となっている。
(テレビ長崎)
