福岡の医療現場で働く外国人スタッフ。人手不足が深刻化する地域医療の現場で、いま何が起きているのか。その最前線を追った。(※前半)
外国人スタッフがいないと回らない業務
福岡・大牟田市の精神科病院『大牟田保養院』。「始業時間は、8時30分なんですけど、病院に着くのは午前8時くらい」と自転車で出勤するのは、インドネシア人の准看護師、ジハン・ファヒラさん(28)だ。

ジハンさんは、認知症治療病棟で患者の健康管理や食事・排泄・入浴の介助などを担当している。患者に優しく声をかけながら手際よく業務をこなしていく。

大牟田保養院では看護師不足に伴い4年前から外国人スタッフを採用。現在、この病棟で働く看護スタッフ21人のうち、約3分の1の6人がインドネシア人だ。

大牟田保養院の松尾幸子看護師長は「日本人看護スタッフが徐々に減っていって…、理由は仕事内容、賃金、その辺なんじゃないですかね。インドネシア人スタッフは、すごく真面目です。少し教えれば全部、頭にインプットしてくれるんで、頭の回転もいいですし、外国人が来ないととっても困ります。業務が回らない」と外国人スタッフの重要性を語る。

ジハンさんは、患者とのコミュニケーションもそつなく熟す。
▼患者(84)「インドネシア語で『おはよう』は?」
▼ジハンさん「おはようございます、ね。スラマッパギ」
▼患者(84)「スラマ…パギ。難しいわな~」

「私が“ヒジャブ(布)”を被っているじゃないですか、だから『日本人じゃないね、どこから来たの?』『インドネシアからですよ』『インドネシア行ったことないわ』とかそういう話をします。楽しいですね」と話すジハンさん。

母国、インドネシアの看護短大を卒業後、1年ほど看護師として働いていたジハンさん。24歳のときに日本の看護師免許取得を目指して福岡へ移り住んだ。そのきっかけとなったのが福岡県の『外国人看護職員養成事業』だった。

外国人看護職員養成事業とは、看護師不足を受け福岡県医師会が4年前の2022年から始めた取り組みで、インドネシアやミャンマーで日本の看護師資格を目指す人に学習、及び就労の支援をするものだ。

福岡県医師会の瀬戸裕司専務理事は「まず日本語教育を向こう(現地)でやる。ですから、そもそも日本語で挫折をしないかたちで福岡の看護学校に来て勉強してもらうと。そして私たち医師会の会員の医療機関で勤めてもらうかたちですから、常に医師会のお手伝いが彼女たちにできている」と話す。

この事業で積極的に受け入れを行っているのが、県内でも特に看護師不足が深刻な大牟田市だ。
若者の“流失”が深刻な大牟田市
大牟田医師会が運営する看護専門学校では、准看護科の入学者数がこの10年で3分の1に激減。2026年度は、定員を70人から40人に減らしたが、入学したのは、その半数の21人だった。

看護科については、ここ数年、入学者が15人を下回り、2026年度いっぱいで募集を休止することが決まっている。

大牟田医師会看護専門学校の吉村渚美子専任教員は、入学者減の理由について「やはり大牟田という土地が高齢化していることと若い人たちが福岡市などに行ってしまうので…」と話す。

そんななか、2年前から県の事業を通して合計20人の外国人学生が准看護科に入学。2026年2月には、ジハンさんを含む7人が准看護師試験に合格し、現在、全員が地元の医療機関で働いている。

大牟田医師会看護専門学校の富安信夫校長は「今後の人材不足が予測されるこの大牟田市において、まず外国人学生を受け入れて、学びの場で日本のシステムに慣れて頂いて、ぜひ日本に溶け込んで、そして日本の医療を支えてもらいたいと思います」と期待を寄せる。

午前中の業務を終えたジハンさん。神妙な面持ちで向かったのは、インドネシア人スタッフが集まる休憩室だった。
礼拝の場所を提供
その目的は、お祈りだ。

ジハンさんたちイスラム教徒は1日5回、決められた時間にサウジアラビアのメッカの方角へ向かって祈りを捧げることが義務とされているため、病院がこのようにお祈りができる場所を提供している。

ジハンさんにこの日の弁当のメニューは、卵焼きとブロッコリーとトマト。日本食は、使用されている調味料に味醂や醤油にアルコールが含まれているため、殆ど食べられない。「福岡は、豚骨ラーメンなので…、食べられないです。残念…」とジハンさんは笑った。

豚肉やアルコール類などを摂取できなかったり、肌を露出する服装が禁じられていたりとイスラム教徒には多くのルールがあり、受け入れる病院側には十分な理解が求められる。
※後半へ続く―
(テレビ西日本)
