富山県の新年度予算案が発表され、一般会計で6338億円余りと、過去最大規模となった。新型コロナウイルス対応でこれまで最大だった2021年度を上回る予算規模である。物価高騰や人件費の増加、国の施策への対応が背景にある。

予算増加の要因は物価高と国の施策

新年度予算案が過去最大となった背景には、複数の要因がある。まず県職員の給与分は今年度と比べて約56億円の増加となっている。さらに、国の施策である小学校給食費の負担軽減や高校の授業料無償化で合わせて41億円余りが計上された。
県幹部は「国が県を通じて行う施策が増えるなか、県としても精力的に物価高騰対策に取り組んだ結果」と説明している。
三つの柱を設定した予算配分
新年度予算案における重点施策は大きく三つに分かれる。

1. 能登半島地震からの復旧・復興の加速化
2. 人材確保
3. 総合計画の推進
震災復興と防災力強化

能登半島地震からの復旧・復興では、避難所の環境改善と地域防災力の向上が図られる。具体的には、今年度から着手している特別支援学校の体育館への空調整備に加え、新たにすべての県立高校の体育館に移動式の空調を配備する。この措置には、夏の熱中症対策と避難所の環境改善という二つの目的がある。

また、災害医療体制の強化として、災害発生時に現場で必要な医療支援を行う専門チーム「富山版DMAT」の養成にも取り組む計画だ。
人材確保の新たな取り組み
人材確保の目玉は、エッセンシャルワーカー確保のための新たな人材マッチングプラットフォームの創設である。

県は、深刻な人手不足に対応するため、全業種で単発・短時間で働きたい人と事業所をマッチングするウェブシステムの運用を開始する。特に福祉・介護、看護、建設の3分野は、事業者の手数料負担をなくすなど手厚いサポートが予定されている。
バスなどの公共交通の運転手確保や、介護人材、漁業の担い手確保にも新たに取り組む方針だ。
総合計画の推進

総合計画は今年度から5年間を対象として策定された県政運営の設計図である。「人口減少対策」「人づくり」「新しい社会経済システムの構築」を柱に、高校再編や富山地鉄の再構築事業、「寿司といえば、富山」の推進などが含まれている。
ハード面では、県武道館や県リハビリテーション病院・こども支援センターの隣接地に児童相談所などを一体的に設置する「こども安心センター(仮称)」などの整備を進める計画で、総額125億円が計上された。
道路の白線引き直し等に15億円投入
特に注目されるのは、インフラ整備における「政治判断」である。県は新年度、区画線の整備、いわゆる道路の白線の引き直しに集中的に取り組む。

県が単独で行う新たな道路整備の一部を見送り、浮いた15億円を今後4年間の道路メンテナンスに充てる。来年度はこのうち5億円を費やして、道路延長約400kmの区画線を引き直す予定だ。
この判断の背景には、最近の車が区画線を認識して車線逸脱を防ぐ機能を搭載していることがある。道路を安全に運行するために区画線の引き直しを求める声が高まり、県議会最大会派の自民党議員会からも要望されていた。
しかし、線の引き直しは起債(借金)ができないため、限られた財源では対応が難しく、これまで後回しにされてきた経緯がある。今回の措置は安全を最優先に考えた「政治判断」によるものといえる。
財政状況への懸念も

過去最大規模の予算編成にあたり、県は532の事業を見直し、うち210の事業を廃止した。見直しによる効果は13.1億円に達し、これらを新規事業に充てたとしている。

歳入面では、「堅調な企業業績による法人税の増加」や「個人所得の増加による個人県民税の増収」などにより過去最大を見込んでいる。
一方、県の借金にあたる県債残高にも注視する必要がある。来年度末の県債残高の見込み額は1兆369億円で、ここ数年は減少傾向にあるものの、県民一人当たりでは105万円と決して楽観視できない状況にある。

実質的な借金残高が財政規模に対してどの程度あるかを示す「将来負担比率」は昨年度末時点で203%、全国37位と決して良好とはいえない状態だ。税金が適切に使われているか、納税者が自覚を持ってチェックしていく必要がある。
(富山テレビ放送)
