東京電力・福島第一原発が立地する福島県双葉町にある衣料品をリメイクする工房。思い出の形を変えて、たくさんの人に『笑顔』を届けたいと挑戦する田中洋平さん。
震災後の「悔い」を胸に双葉町へ移住した田中さんは、震災・原発事故で廃校となった学校の制服をぬいぐるみサイズに再生し、大切な思い出を形に残すプロジェクトを始めた。「震災にあって悲しい思いをした人たちに笑顔に戻ってほしい」という願いを込めた田中さんのものづくりが新たな希望となる。
なにもできなかった…東日本大震災
2023年7月に、双葉町中野地区の復興産業拠点に工房とショップをオープンした「ひなた工房福島双葉」。
長野県のアパレルメーカーが運営し、町の復興・創生などを目的に、衣料品のリメイクや、オーダーシャツの製造などを行っている。
「震災の時は東京にいた。何も手伝えなかったというか、ボランティアができなかったので、ちょっと悔いが残っていた」と話すのは、熊本県から移住してきた田中洋平さん。責任者として工房を切り盛りしている。「町と一緒に楽しんでいくような工房になっていけば良い」と田中さんはいう。
町の一大イベントにも出店
2026年がスタートした1月、JR双葉駅前で「双葉町ダルマ市」が開かれた。江戸時代から続く伝統行事で、避難先のいわき市で継続されてきたが、避難指示の一部解除を受けて2023年から町で開催されるようになった。
震災前の双葉町人口は7000人余りだったが、町に戻った人はまだ200人ほど。しかし、ダルマ市には2日間で約4000人が訪れ、町は活気に溢れた。
田中さんもダルマ市に出店。多くの人が商品を手に取った。買い物客は「去年も購入した。今年も素敵なモノがあったので購入した。どんなモノでも可愛らしくリメイクされるのが、とても良い」と話した。
制服をリメイク 新たな役割
ひなた工房では1年ほど前から、双葉郡8町村の中学校と高校の制服をリメイクして、ぬいぐるみサイズに作り直すプロジェクトに取り組んでいる。
双葉町産業交流センターで展示されている13校のうち、ほとんどが震災と原発事故の影響で廃校や休校になっている。
校章やデザインはそのままに、40センチほどのサイズに仕立て直し、双葉郡内の10ヵ所以上で展示される予定だ。
展示を見た宮城県石巻市から訪れた人は「震災はどうしても忘れられがちになるので、こういったモノとして見えるような形で残すということは、風化させないような形でとても良いと思う」と話した。
双葉の“笑顔”のために
田中さんが朝から取り組んでいたのは、追加で発注があった広野中学校の女子制服のリメイク。
「作り直すからには喜んでもらえるモノにしたいので、可愛くできるようにと思っています。3年間、着ていたものなので、思い出が詰まったところを上手く活かせるようなモノづくりになれば」と田中さんはいう。
制服を丁寧にバラし、ぬいぐるみのサイズに合わせて切っていく。
田中さんは「手の広げる範囲、僕らの出来る範囲の人を『笑顔』にしたい。震災にあって、悲しい思いをした人達に『笑顔』に戻って欲しい。また、ここに復興のために移住してきて頑張ってきている人達もいるので、その人たちとも一緒に頑張ってやっていくということで」と話し思いを込める。
親子で参加できるワークショップも企画していて、賑わいの創出を目指す田中さん。「来たら楽しいなって思える町。イベントや、ここでしか買えないものとか、そういうものを私たちが作って、町が輝いたら良いなと思います」と語る。
太陽のように町と人を暖かく照らす工房へ。東日本大震災から15年、田中さんのモノづくりが、離れかけていたピースを再びつなぎ直そうとしている。
(福島テレビ)
