外国人労働者受け入れで変わる国のかたち 目指すのはアメリカ型かシンガポール型か

カテゴリ:地域

  • 出入国管理法の改正案を閣議決定 何が決まったのか
  • 日本はアメリカ型?シンガポール型? 世界の外国人労働者の受け入れ状況
  • 家族の帯同はどうなる? 社会統合政策の重要性とは

日本社会のあり方の転換

政府は2日、外国人労働者の受け入れ枠拡大に向け、出入国管理法の改正案を閣議決定した。いま日本は就労人口の減少により、様々な労働現場で深刻な人手不足に悩まされている。この解消のため政府は、これまで高度な専門分野に限っていた外国人の就労を、単純労働まで認めることにしたのだ。これは外国人労働者政策だけでなく、日本社会のあり方そのものの大きな転換と言える。

単純労働をする外国人は130万人

厚生労働部会で発言する小泉進次郎氏

この決定に先立つ先月29日、自民党小泉進次郎厚労部会長はこう述べた。

「いま現実に、周りでコンビニに行けば、外国人の方も活躍しています。居酒屋とか外食もそうですし、ホテルもそうです。そういった中で、日本は労働力不足の中、日本で働きたい、活躍したい、そういった方々に対して、安心して日本で生活できる環境を整えなければいけない」

小泉氏が指摘した通り、いまコンビニの外国人店員や居酒屋で働く外国人は珍しくない。現在日本には単純労働を行う外国人が、130万人程度いると言われている。しかし彼らのほとんどは労働ビザを持たずに、技能実習生や留学生の資格で就労しているのだ。

「労働者じゃないと言いながら、実際労働している外国人がたくさんいる現状で、今回『外国人の労働者がいますよ、入ってきますよ』と政府が言ったことは大きな変化だと思います」

ねじれ制度の問題

WORK JAPAN代表の松崎みささん

昨年11月から 外国人向け求人サイトを運営する株式会社WORK JAPAN(ワークジャパン)代表の松崎みささんは、今回の決定を前向きに語った。松崎さんは現在、民間有識者として、外国人労働者政策に関する提言を政府に対して行っている。

 「今までの制度がねじれていたのが問題です。本当は日本で働きたいけど、働けないから留学生の振りをして年間100万円かかる授業料を払いつつ働く。技能実習という研修に来ていると言いながら労働する。企業側にも働く側にも使いにくい制度が多くて、今回まっすぐになることはよかったと感じています」

松崎さんが運営するサイト「WORK JAPAN」の登録者数は、現在約2万人。松崎さんによると、日本には多くの求人サイトがあるものの、外国人には言葉の問題があって使いづらい。さらにこうした求人サイトに掲載している企業は、外国人を採用してくれるかどうかわからないという。

「実際応募してみると、『外国人は採らない』と言われます。そうすると彼らは『自力で仕事探しは難しい』とブローカーにお金を払って、仕事を探してもらうという旧態依然とした仕事探しをすることになります」

「WORK JAPAN」では、外国人を積極的に採用する企業だけを掲載して、外国人にとって透明性のあるサイトを目指している(現在8言語対応)。

社会統合政策の重要性

画像はイメージ

一方今回の決定に対して、国民の中には「外国人が増えると治安が悪化するのではないか」との不安が広がっている。改正案は「熟練した技能が必要な」分野に就労する外国人には、家族の帯同を認め、条件を満たせば永住にも道を開く。家族帯同となれば、その家族をどう日本社会に馴染ませるかも大きな課題になる。

「社会統合」、つまり家族も含めた社会保障や教育、就労等の社会インフラを、日本は整備しなければならないのだ。

「ドイツは移民政策を進めた一方で社会統合政策をしっかりやらなかったために、社会から疎外された人々が犯罪組織に巻き込まれていくなどの問題が起きてきています。日本も外国人をサポートする社会インフラを作らないと、逆に苦しむことになります」(松崎さん)

アメリカ型? シンガポール型?

アメリカへ向け移動を続ける人々

世界に目を向けると、外国人労働者受け入れへの考え方は大きく2つに分かれる。

アメリカは、トランプ政権以降揺れ動いてはいるものの、基本的に移民を受け入れて社会統合政策を行い、人口を拡大し経済成長を遂げている。筆者はアメリカで10年ほど働いた経験があるが、子どもたちが通った現地校は、英語が話せない外国人の子どもに対する受け入れ態勢がきちんと整備されていた。

一方、東南アジアで経済成長著しいシンガポールは、外国人の労働力に大きく依存しているのにもかかわらず、労働ビザの有効期限は2年。最長10年まで延長できるが、家族の帯同を認めていない。つまり、シンガポールは外国人を短期の労働力と考え、働きに来る外国人もシンガポールを稼ぐ場として割り切っているのだ。

では、果たして日本は、アメリカ型とシンガポール型、どちらに向かうのだろうか。今回の改正案からは、日本が目指す「国のかたち」がはっきり見えない。

外国人に職を奪われるのか

安倍首相はどんな国のかたちを描いているのか

さらに国民から不安の声が上がっているのが、「外国人に職が奪われるのではないか」ということだ。

改正案では、受け入れる業種は人手不足が深刻化している分野に限定し、いまのところ介護や建設、農業など14業種が検討されている。しかし、受け入れ人数は明記されず、こちらは法案成立後に運用の方針を決める予定だ。

前述の松崎さんは、「議論が甘いのではないか」と疑問を呈する。
「もし日本の景気に何かあった時には、『日本人の仕事を外国人が取っている』と社会的な批判が起きる可能性もあります。人手不足の業種は、県によって違います。ですから労働市場テストと呼ばれる、県や職種に応じて外国人の受け入れ数を制限する制度を盛り込むべきだと政府に提言しています」

 小泉厚労部会長は、外国人労働者の受け入れについて、こう強調する。
「さまざま不公平感を持ちかねない状況を放置したまま受け入れるようなことがあっては、将来に不安を残すことになりかねないので、医療保険のこと、年金関係のこと、厚労行政でクリアしなければならない」

外国人労働者の受け入れは、これからの日本の「国のかたち」を変えていくだろう。
拙速な議論を避け、移民受け入れに失敗した国を他山の石として、きめ細かい制度設計をすることが必要だ。

(執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款)

鈴木款解説委員の記事すべて見る

外国人に選ばれたいニッポンの他の記事