8月に入り広い範囲で危険な暑さとなり、2日は熱中症警戒アラートが今年最多となる37都府県で発表されている。不要不急な外出を控え、涼しい室内で過ごしている人も多いかもしれない。
このような人間の熱中症予防はもちろん大切だが、忘れてはいけないのが、家族の一員であるペットの健康だ。人間もグッタリしてしまう暑さに、大切なペットたちはもっとダメージを受けている可能性があるのだ。
改めて“ペットの熱中症”における症状や留意点をお伝えしたい。
鼻の短い種類の犬や猫は、より注意が必要
犬や猫の熱中症対策はどうしたらいいのか? 東京都渋谷区にある、日本動物医療センターの獣医師にお話を聞いた。
――犬や猫が熱中症にかかると、どういった症状が出る?
軽めの症状としてはハァハァと呼吸が荒くなり、中程度~重症になると、吐き気や下痢、ぐったりするなど全身的な症状が現れることがあります。
それ以上進んでしまうと、腎不全や多臓器不全に陥り、最悪死に至ることもあります。しかし、全て段階的に症状が進むわけではないので注意が必要です。
――熱中症のサインは飼い主も気付ける?
体に触ってみて「普段より熱い」と感じたら熱中症を疑ってください。
耳や足など、毛の薄い場所が分かりやすいですが、肛門から体温計で直腸温を測るのが確実です。普段と異なる様子、気になる症状が出た場合は早めに対処するようにしましょう。
――犬と猫、どっちがより熱中症になりやすい?
猫は犬のように舌を出して体温調節ができないので熱の放出は苦手ですが、涼しい場所を探して移動するなど、自分で暑さから逃れる手段をとる傾向があります。犬は暑さの中でも活動してしまう傾向にあるので、飼い主からの配慮が必要です。
犬や猫は、肉球以外から汗をかけないため、人間よりも体温調節が苦手とされています。犬は舌を出して呼吸することで体の中の熱い空気を放出していますが、それ以上に気温が高いと熱が身体にこもってしまい熱中症に陥ります。
また、鼻の長い犬種は鼻の中で冷やした空気を取り込むことができますが、犬ではブルドッグ、猫ではペルシャなどの短頭種はそれができず熱中症になりやすいため、より注意が必要です。

「気温が何度になると熱中症になる」という明確な基準はなく、ペットの種類やその時の体調に左右されるため、動物の様子をよく見て、触ってチェックすることで早期に異変に気付くことが何より重要と考えています。
最近の強すぎる日差しの中を散歩しているペットを見かけると「大丈夫?」と心配になってしまう人も多いだろう。では実際、ペットたちにとってこの暑さはどれくらいのダメージになっているのだろうか。
ペットは50度近い熱を感じている
――犬や猫はどのくらいの暑さを感じている?
夏場、直射日光の当たるアスファルトは60度近くになるとも言われています。屋外でペットたちは人間の感じる暑さ+10~20度の暑さを感じている可能性があるため、たとえば人間にとっては30度だとしても、ペット達は40~50度に感じるということになります。
アスファルトが60度にもなる場合、肉球をやけどする可能性もあります。
また散歩の際、体高の低い小型犬は地面からの熱を受けやすい、太っている動物は熱を蓄えやすいなど、個体の特徴により熱中症のなりやすさも変わってきます。
――そもそもこの暑さの中、ペットを外に出しても大丈夫?
たくさん運動させないとストレスになる犬、外でしかトイレをしない習慣がある犬を除いて、散歩に出すことは必須ではありません。
散歩に出す場合は、比較的気温の低い早朝や夕方以降とし、土や草の上を歩かせる方が安心でしょう。特に短頭種(鼻が短い犬種)では首に保冷剤を巻く、こまめな給水などを心がけましょう。
また、外出する際には、ペット用のカートを使ったり、肉球を保護し、直接熱い地面に触れないようペット用の靴を履かせるのもひとつの手段かもしれません。

室内飼いの場合 外出時は「26度ほどのエアコン」
――では、室内飼いのペットで気を付けたいことは?
室内でも日差しを避けられる場所を作り、風通しが良く、新鮮な水が飲める環境を作ってあげてください。
数時間クーラーをつけなかっただけで熱中症になってしまったケースもあります。ペットがお留守番する際には、クーラーを26度を目安に設定し、つけたまま外出されるのが良いと思います。
また、湿度や換気の兼ね合いから風があれば良いと思われる方もいらっしゃいますが、扇風機だけでは不十分な場合もあるため、クーラーの使用をお勧めします。
――人間は熱中症予防にスポーツドリンクを飲んだりするが、ペットにも有効?
人間用の飲み物は糖分などを多く含んでいるため、動物にはあまり飲ませない方がいいです。全く食事をとらなくなってしまったペットが飲むなどの場合は、必ずしもNGというわけではありませんが、基本的には新鮮な水を与えてください。
では、気をつけていても大事なペットが熱中症になってしまった時はどうすればいいのだろうか。
自宅でできる応急処置
――熱中症になってしまったらどうすればいい?
必ず病院に連れて行ってください。病院に連れていくまでの応急処置としては、首やわきの下・太ももの付け根など、大きな血管のある場所に保冷剤を当てるなどして冷やしてください。
ただ、これだけでは深部体温を十分に下げられない可能性があるため、極力、迅速に病院に連れて行き、診療を受けてください。
なお“危険な暑さ”が続いていても、飼い主が気を付けているからか、例年に比べてペットの熱中症が増えているということはないという。
人間と違い、自分から症状を言えないペットたち。飼い主がいち早く異変に気付くこと、適切な対処をすることで、この暑さから守ってあげてほしい。