1月11日 トランプ米大統領:
我々がグリーンランドを所有しなければロシアか中国が所有するだろう。私はそれを許さない。いずれにせよ、我々はグリーンランドを手に入れる

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デンマーク自治領「グリーンランド」。
トランプ大統領が領有に強い意欲を示している、北極海に面した世界最大の“氷の島”です。

面積は日本の約6倍(217万㎢)、島の約8割が氷で覆われ、人口は約5万7000人。住民の約3分の1が暮らす最大の都市ヌークは、オーロラの観賞拠点として有名です。
最近では地球温暖化の影響により、北極圏の氷が解けて航路が拡大し、資源開発への関心が高まっています。

そんななか1月9日、ロイター通信が「トランプ政権がグリーンランドの住民に約1万ドルから最大10万ドルの一時金を支払う案を協議している」と報じたことから今、グリーンランド住民は危機感を募らせています。

なぜ、トランプ政権はグリーンランドの領有に強い意欲を見せているのでしょうか?
キヤノングローバル戦略研究所・上席研究員の峯村健司氏に解説してもらいました。

国を「買収」実現度は?

――買収計画の実現度は?
キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 峯村健司氏:

実現は簡単ではないんです。デンマークも説得しなきゃいけないというのは難しいんですが、トランプさんの本気度で言うと、私は結構85%くらい、9割に近いんじゃないかというふうに見ています。

キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 峯村健司氏
キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 峯村健司氏

――「国を買う」ということは国際法上できるものなのでしょうか?
峯村健司氏:

原則NGです。というのは、第二次世界大戦後っていうのは基本的には自分たちの民族のことは自分たちで決めると。いわゆる他国の領土は犯しちゃいけないっていうのが2つの国際法上の原則なので、そこから考えると全然ダメだということなんです。

じゃあなんでトランプさんがそうこだわるかというと、戦前でいうと領土を買収するって普通に行われていて、ルイジアナ州とかもそうなんです。アメリカ自体が割と買収してできた国であるっていうのを1期目の時にトランプさんがブレーンたちから聞いて、「じゃあ買えばいいじゃん」というそういう発想で言っていると。
今の時代はそれはダメですっていう話ですね。

なぜグリーンランドを狙うのか?

なぜトランプ大統領はこのグリーンランドを狙うのか?峯村氏によると大きく2つのポイントがあります。

【1】レアアースなどの天然資源

峯村健司氏:
埋蔵量が結構多くて、レアアースだけでいうと世界第8位なんです。あとウランとかの鉱物もかなりありますので、そこを今、中国とかロシアも取りたいというところでアメリカとしては自分の勢力圏の中なのでそうはさせるかという思いがあるというところが大きいですね。
特にレアアースでいうとトランプさんは嫌な思いがあって、2025年中国に対して関税145%をかけてケンカしようとしたら報復でレアアースを止められてしまったというトラウマがあるので、レアアースをとにかく確保したいという思いは結構強いと思います。

谷原章介キャスター:
すでにデンマークの自治領ということはNATO側。ということは同盟国側なわけじゃないですか。安全保障的には十分安全な環境に作れていると思うんですけど、それでも欲しいのはなぜなんですか?

峯村健司氏:
今、中国とロシアから守るだけじゃなくて同盟国のアメリカから守るっていうすごい話になっているわけです。そこで言うと本当に同盟が弱体化にもなりますし、トランプさんとしてやはり「NATOとかに任せたら頼りない。自分が支配しないと」という思いが強いんですね。

アメリカ側としては、資源覇権で中国にこれ以上負けられないという狙いも。
デンマークやグリーンランドの政治経済に詳しい北海学園大学の髙橋美野梨准教授によると「過去にグリーンランドの資源開発に中国系企業が参入しようとしていたが、それをアメリカとデンマークが阻止した」とのこと。

【2】北極圏から中露排除

峯村健司氏:
ベネズエラと同じような発想なんです。「自分のテリトリーの中に中国とかロシアが手を出してきた、だから出ていけ」っていう発想なんですね。
重要なのが北極海航路。この20年だけで見ても20倍以上輸送量が増えているんです。温暖化でほぼ年中通れるようになっているというところが一つ。この北極海航路を使うと、例えば日本の辺りからヨーロッパの方に行こうと考えたときに、今までだと2万kmインドとかを通ってマラッカ海峡とか通っていくんですけども、1万3000kmぐらいで近道でショートカットができるという意味では結構重要であると。
もうひとつ、ロシアとアメリカがガチンコで見たときのちょうど真ん中の島がグリーンランド。だからこそ軍事的にも取られたらアメリカはまずいという思いがある。

グリーンランドが買収に応じる可能性は?

北海学園大学の髙橋准教授に聞くと、「グリーンランドはデンマークから独立したいが、経済的な自立が現状できない。選択肢としてアメリカが最有力候補なので、買収に応じる可能性はゼロではない」といいます。

峯村健司氏:
基本的にはデンマークからも独立したいというのがグリーンランドの人たちの大きな意見なので。かといって経済的な支援も欲しいとなると、ある意味現実的なアメリカという選択をする方もゼロではないでしょうね。

トランプ氏の思惑で世界が混乱する中、その行動の裏には焦りが見えるといいます。

峯村健司氏:
トランプさんいろいろ仕掛けているんですけれども、今、支持率が下がっているんです。11月の中間選挙に向けて、なんとか支持率を上げようとして今いろいろな球を投げてると。毎日ヘッドラインを作るっていうトランプ政権のやり方なんです。つまり、新聞でいうと一面、テレビのニュースでいうとトップニュースを作るっていうのをやることによって支持率を集めようと。逆に言ったらスキャンダルもあるので、それを打ち消そうということを今やっている。今後もグリーンランドみたいなことはどんどん派手にアピールしていくってことは十分考えられますね。

谷原章介キャスター:
ベネズエラもそうですけども、イランでデモが過激化しているところなんかに武力的にもちょっと介入するかもしれないとトランプ氏が言ったりするじゃないですか。トランプ氏は今までアメリカが問題を残してきていて宿題みたいになっている、いろいろな世界中の問題を全部自分が解決したい、みたいな思いってあるんですかね。

峯村健司氏:
すごくあると思いますね。基本的にはバイデン政権がダメだったものを自分が解決するってことによって支持を得たいという考えがあるので、イランなんかも含めてそうですし、「今までの大統領がちゃんと仕事しなかった、私はちゃんとやってるんだ」そのコントラストで支持を得ようというのがトランプさんのやり方ですよね。

(「サン!シャイン」1月13日放送より)