食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「塩豚とキャベツのクタクタ煮」。
東京・広尾の無国籍おばんざい専門店「(QH)+」に訪れ、ホロリとほどける塩豚をキャベツの甘みが優しく包み込む一品を紹介。京都出身の店主による “無国籍おばんざい”が生まれた背景にも迫る。
広尾の“無国籍おばんざい”食堂
植野さんがやってきたのは、東京メトロ日比谷線の広尾駅。自然豊かな「有栖川宮記念公園」も近く、四季折々の景色が楽しめるエリア。おしゃれなカフェや雑貨店が並ぶほか、多くの大使館も点在し、国際色豊かで洗練された街だ。

2011年に開店した「(QH)+」があるのは、広尾駅から徒歩5分、天現寺橋交差点に建つ特徴的な三角ビルの1階。店内は、白とベージュを基調とした清潔感あふれ、カウンター9席のこじんまりとした空間には、もともとデザイナーだった店主のセンスが光る。
カウンターには色とりどりなおばんざいがずらり。平日は日替わりのメインが選べるランチプレートが人気。おばんざいをツマミに酒も楽しめる大人のための食堂だ。
店主・吉井南美さんは京都・丹波と長野の契約農家から届く新鮮な野菜を、次々と「おばんざい」に仕上げていく。

キッチンに並ぶ様々な香辛料が織りなす未知なる一皿は、鮮やかな黄色が映える菊芋を使ったインドの野菜料理「ザブジ」や、ほんのりした甘味の「百合根 梅メープル和え」。

ほうれん草に似た味わい、「スイスチャードと厚揚げサッと煮」など、旬の野菜とスパイスが心地よい料理の数々。
たくさんの野菜に体も整う、心と体に元気をチャージできる一軒だ。
同僚の不規則な食生活から健康食を意識
店名の由来を聞かれると「もともと私が赤坂でバーテンダー時代がありまして、その時に“Quarter House”というお店の名前で、頭文字を取って…」と吉井さん。さらに、「もともと飲食を目指していたわけではなく、ニューヨークへファッション留学に行っていたことがあったんですけど、お金がないのでバーテンダーとウエイトレスをしていて飲食好きになりました」と語った。

京都出身の吉井さんは、高校時代からデザイナーを夢見て、21歳で単身ニューヨークへ。しかし、職場環境が合わず飲食店でアルバイトを開始。そのとき飲食業の楽しさを知り、帰国後も赤坂のバーで働きながら料理の腕前をあげていったのだという。
また、会社の同僚たちの不規則な食生活を目の当たりにしたことで、野菜をたっぷり食べられる「おばんざい」の店をはじめることを決意したとも話す。
さらに、海外で生活した経験や外国の友人も多い環境から、スパイスなどを使った“無国籍のおばんざい”という独自のジャンルを考案した。

毎朝7時半には厨房にいる吉井さん、15種類を超えるおばんざいを丁寧に仕込んでいく。「15品あれば40品目食べられる、1日それだけ食べとけば(健康バランス的には)何とか」と客の体を思い、毎朝、心を尽くしておばんざいを用意していく。そして今、おばんざいだけでなく隣ではガレットや薬膳鍋の店も手がけ、新しいジャンルにも挑戦中だ。

本日のお目当て、(QH)+の「塩豚とキャベツのクタクタ煮」。
一口食べた植野さんは「強い味ではないけど、じわじわと旨味と甘みを感じる落ち着く味」と絶賛した。
(QH)+の「塩豚とキャベツのクタクタ煮」レシピを紹介する。
