2025年の鹿児島県は、雪、火山の噴火、地震、豪雨と様々な災害に見舞われた。復興に向けて歩み始めた地域もあれば、年末になっても元の生活に戻れない住民もいる。
南国鹿児島を覆った雪の脅威
2025年2月、南国鹿児島には珍しい大雪に見舞われた。強い寒気の影響で断続的に雪が降り、鹿児島のシンボル・桜島も中腹まで雪化粧。鹿児島市の高台は一面銀世界となり、「道路と道路の境目が分からなくなるほどの」雪が積もった。
雪でタイヤが空回りする車も見られ、住民は「朝から融雪剤をまいた。1～2度下がるだけでこんな状況になる」と困惑の声を上げた。
活発化した火山活動
2025年は火山活動が特に活発な年でもあった。5月には桜島が146回もの噴火を観測。ひと月で100回を超える噴火があったのは5年ぶりだった。降り積もる火山灰に住民は「火山灰を流さないとどうしようもない。でも流してもきりがない」と掃除に追われた。
6月には霧島連山の新燃岳も2018年以来7年ぶりに噴火。7月3日の噴火では、噴煙が火口から5000メートルの高さまで上がり、近くの鹿児島空港を発着する便に欠航が相次いだ。
火山灰は水資源にも深刻な影響を及ぼした。霧島市内の一部地域では断水が発生し、「高千穂河原では朝から蛇口をひねっても水が出ない状態」が続いた。新燃岳の火山灰が雨で土石流となって送水管が流されたことが原因とみられ、飲食店や温泉施設が休業に追い込まれた。
近くの田口水利組合理事長・深町四雄さんは「自分たちの手に負えない。米作りができないとなれば地域が沈没してしまう」と危機感を示した。流されてきた火山灰や岩がかんがい施設の取水口をふさいだが、約半年後の12月には土砂が取り除かれ、水の通り道が確保されていた。
トカラ列島を襲った絶え間ない地震
6月にはトカラ列島を絶え間ない地震が襲った。震度1以上の地震は2300回を超え、十島村の小宝島の学校では10メートルほどの地割れが発生。7月3日には悪石島で震度6弱を観測し、斜面が崩壊してガードレールがひしゃげ、墓石も倒れた。命の危険を感じた住民の半数以上が一時島を離れた。
その後、地震が少なくなり、島民全員が島での暮らしを再開した9月には特別な祭りが行われた。ユネスコの無形文化遺産に登録された仮面神「ボゼ」が登場する、地域伝統の祭りだ。島民は「ボゼがないと悪石島じゃない」「ずっとずっと守り続けます」と、地震の恐怖に全員で立ち向かう姿を見せた。
記録的豪雨が引き起こした甚大な被害
夏になると記録的な豪雨が鹿児島を襲った。8月8日、霧島市や姶良市で次々と被害が報告され、姶良市では裏山が崩れて家屋が倒壊し、30代の女性が命を落とした。国道10号にかかる網掛橋は３カ月にわたり全面通行止めとなるなど、住民の生活にも大きな影響を与えた。
その2週間後、薩摩半島付近にあった熱帯低気圧が突如台風12号に発達し、さらなる被害をもたらした。南さつま市では加世田川が氾濫し内山田地区では住宅の2階辺りまで浸水。住民が消防に救助される事態となった。鹿児島市でも和田川が氾濫し、周辺では浸水した住宅で泥のかき出し作業が行われた。
8月に発生した2つの豪雨災害で、2人が死亡し、軽傷者は10人。住宅の浸水被害は約1900棟に上った。
今なお残る被害の爪痕
災害から4カ月が経過した現在も、被害の爪痕は各地に残ったままだ。JR肥薩線は線路の土台が流出し不通が続いており、復旧工事は始まったものの、運行再開にはさらに半年を要する見込みだ。
姶良市加治木町にある龍門滝温泉も大雨によって設備が破損し、復旧のめどは立たず、館内は被災した当時のまま乾いた泥が積もっている状態だ。
霧島市隼人町の県道475号は斜面崩壊により2.3キロにわたり通行止めが続いている。松永地区自治公民館の津曲博明館長は「付近住民の生活道路なんです。復旧は喫緊の課題」と訴えるが、復旧工事の開始は2026年2月末の見通しだ。
2025年も多くの災害が鹿児島を襲った。被災地は復興に向けて着実に前進しているが、元の生活を取り戻せていない人もいる。
私たちには被災地の「今」を知り、寄り添う心が求められている。
