鹿児島・日置市出身でプロ野球・阪神タイガースの外野手として活躍した横田慎太郎さん。脳腫瘍で2019年に現役を引退し、闘病生活を送っていたが、2023年7月18日早朝、28歳の若さでこの世を去った。「奇跡のバックホーム」で多くの人に感動を与えた横田さんには、自身の経験から子どもたちに伝えたいことがあった。

「奇跡のバックホーム」

2019年9月26日、兵庫・西宮市の阪神鳴尾浜球場で行われたプロ野球ウエスタン・リーグ、阪神対ソフトバンク戦。背番号124をつけた横田選手がセンターの守備についた。横田選手の前に打球がくると、横田選手はすかさずキャッチし、ノーバウンドでキャッチャーに返球。ランナーはアウトとなり、スタンドから拍手が起こった。

これが横田選手の引退試合だった。

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試合終了後、入団時の背番号24のユニホームをまとった横田選手は「これまでつらいこともありましたが、自分に負けず、自分を信じて自分なりに練習してきて、本当に神様が見ていてくれたと思いました。応援してくれたたくさんの方々、本当に、本当にありがとうございました!」と声を張り上げ、ファンにあいさつした。

父は元プロ野球選手 阪神入団も病に倒れ…

横田慎太郎さんは、鹿児島・日置市出身。父・真之さんはロッテなどでプレーした元プロ野球選手だ。鹿児島実業高校で投打の中心として活躍し、2014年にドラフト2位で阪神タイガースに入団した。

入団3年目には「2番、センター」で開幕スタメンを勝ち取るなど、将来の活躍が期待されていたが、突然の病が襲った。脳腫瘍だった。

横田慎太郎さん:
「野球のことはいったん忘れてください」と言われ、そんなに大きな病気なのかと思って、本当に頭が真っ白になったのを覚えています

横田慎太郎さん:
抗がん剤治療は想像を絶するきつさでしたが、「もう一度プロ野球の世界に帰るんだ」、その目標を持って、厳しい治療と闘っていました

2019年、引退を決意
2019年、引退を決意

“プロ野球選手に戻る”と毎日つらいリハビリに励んだ横田さんだったが、ボールが二重に見えるなど後遺症に苦しみ、2019年、ユニホームを脱ぐことを決意。“あの奇跡”は引退試合で起きた。

「最後に何かやってやる」気迫のプレーはドラマ化も

横田さんの出場は守備の1イニングのみだったが「センターからの景色はすごくきれいで『最後に何かやってやる』との思いがよりいっそう強くなった」という横田さん。

「奇跡のバックホーム」の瞬間
「奇跡のバックホーム」の瞬間

試合は同点、スコアリングポジションにランナーを抱え、阪神にとってはヒット1本で勝ち越しを許すピンチだった。その場面でのプレーが「奇跡のバックホーム」だった。このエピソードはドラマや本になり、多くの人に感動を与えた。

横田慎太郎さん:
今まで諦めず野球をやってきて良かったとあらためて思いました。最後、まさかこんなすばらしいことが起きるとは、夢にも思っていませんでした。必死に練習してきて、本当に神様は見てくれていると思いました

引退セレモニーでこう語った横田さん。引退後も腫瘍が脊髄に転移するなど、闘病生活を続けながら、鹿児島を拠点に自身の体験を話す講演活動を行っていた。

関係者も早すぎる死を悼む

2023年2月、南九州市の知覧中学校で行われた講演に横田さんは当初、学校で講演する予定だったが、体調の都合で急遽リモートに。横田さんは中学生へこんな言葉をかけた。

横田慎太郎さん:
絶対に自分に負けず、自分を信じて、少しずつ少しずつ前に進んでみてください。きっと幸せな日が来ると思います

横田さんは7月18日午前5時42分、兵庫・神戸市内の病院で脳腫瘍のため亡くなった。早すぎる死に、横田選手を知る人からは惜しむ声が聞かれた。

鹿児島実業高校 硬式野球部・宮下正一監督:
真面目で純粋な選手でしたから、この子にこんな不幸なことがふりかかるのは本当に残念。「慎太郎、28年間、短いようだけども太い人生を生きてきて、本当にご苦労様」と言いたい

横田さんが所属した、湯田ソフトボールスポーツ少年団(日置市)・下池真監督:
一度奇跡を起こし、バックホームもありましたが、2回目の奇跡を起こしてくれるのではないかと、起こさせてくれる選手だったと思うので、とても残念です

鹿児島実業時代のチームメイト・盛山一真さん:
もちろん先輩にも慕われていたし、後輩にも慕われていた。そんな彼と3年間野球ができたのは今でも誇りだと思います

どんなにつらい状況でも夢に向かって諦めずに前へ進み続けた横田さん。その姿は多くの人の心に、これからも生き続ける。

(鹿児島テレビ)

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