人気アニメ「SLAM DUNK」の聖地として知られる神奈川・鎌倉市は、ご当地ナンバーのプレートの絵柄になっています。
ただ、この絵柄のナンバープレートが交付停止になるようで、市民の意見が今割れているようです。

ナンバープレートには、湘南の穏やかな海が広がり、その前には踏切の横を走る江ノ電のレトロな車体が描かれています。

どこか見覚えのあるこの光景は、海岸へと下る坂道から眺めた江ノ電鎌倉高校前近くの風景です。

神奈川・鎌倉市が2014年から交付を始めた、原付きバイク用のご当地ナンバープレート。
街でも、鎌倉市のオリジナルナンバープレートをつけたバイクが見られました。

一般公募で集まった91作品の中から、投票によって選ばれたこのデザイン。
無地のタイプも選べますが、昨年度は7割の人がこの踏切デザインを選ぶ人気です。

ところが、鎌倉市はこの踏切デザインの交付を、2026年1月末で停止することを発表したのです。

鎌倉市民は「ちょっと寂しいかも。かわいいから。別になくす必要ないかなって気がしますけどね」「鎌倉市民としても、原付乗っている人がこれ付けてたらかわいいじゃないですか」と話します。

市民も戸惑う突然の決定の背景にあるのは、鎌倉市が抱えるオーバーツーリズム問題。

人気アニメ“「SLAM DUNK」の聖地”として、中国などから多くのファンが押し寄せトラブルが深刻化。

踏切内に立ち止まり危険な撮影を行う観光客や、中には車道でドリブルをした上で、道路の真ん中に飛び出してポーズをとる人までいました。

ナンバープレートに描かれた踏切付近は、鎌倉のオーバーツーリズム問題の象徴となっていました。

鎌倉市を取材すると、鎌倉市 市民税課の松井義隆課長は「あくまでもオリジナルナンバープレートの交付を行いますと、市が鎌倉高校前駅に集客していると受け止められかねないことから、近隣住民の方々への配慮とそういったことも含めまして、今回交付の停止をするものでございます」といいます。

「市は住民から交付停止の要望があったわけではない」とした上で、「迷惑を受けた住民が不快に感じる可能性もあるため停止を決めた」などと説明しました。

鎌倉市は、市の職員の名刺にも同じ踏切のデザインを使っていましたが、同様の理由でかぶとを模したデザインに変更。

しかし、市民からは「(Q.市が交付停止するが)意味なくないか。停止したから、オーバーツーリズムが少なくなるかにどういう効果がある?(最近は)中国の人いない」といった疑問の声も聞かれました。

日中関係が悪化する中、“スラダンの聖地”も中国人観光客は減少傾向。

5日に現場へ向かうと、撮影スポットには多くの観光客の姿が見られたものの、以前のような混乱はありません。

車道に出ている人などはおらず、観光客らは柵の中や歩道を歩かれていました。

このタイミングで市民に親しまれている踏切デザインの交付を停止する必要があるのか。

鎌倉市民は「なくした方がいい。(市が)対策というか、全然動いてくれなかったから、(観光客が)増えすぎたというよりすごいよ。ごみをこうやって捨てていってしまう。踏切のところにごみ。ひどかったよ」「さみしい。地元の人間としては、PR効果も含んでいると思うので、そのまま継続できれば」と、さまざま意見がみられました。

鎌倉市 市民税課・松井義隆課長は「これ(踏切デザインの交付)自体をやめたからといって、オーバーツーリズムが解消するとはまったく考えていない。適正な近隣住民と観光客の共生を目指している」と話します。

鎌倉市は踏切デザインの交付停止は一時的なものとして、オーバーツーリズム問題が解消した際には再開を検討したいとしています。