66歳の誕生日を迎えられた天皇陛下。
記者会見や日々の取材から見えてきたのは、即位から7年近い歩みを重ね、皇后さまと共に困難な人たちに寄り添うという「象徴」としての決意と、愛子さまへの揺るぎない信頼でした。

即位から約7年 「両陛下らしさ」徐々に

6年前、即位後初めての記者会見で、陛下は60歳の還暦となった心境を「『もう還暦』、ではなく、『まだ還暦』」とユーモアを交えて明かされました。

明治以降、最も高齢で即位し、担われた重いお立場。「象徴としての務めを誠実に果たしてまいりたい」と堅い決意を述べられていました。

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あれから6年。その間、コロナ禍で活動は制限を余儀なくされ、人々との交流がかなわぬ日々が続きました。焦る気持ちを抑え、オンラインを活用しながらできることを少しずつ積み重ね、この2~3年でようやく国内外への訪問やさまざまな行事が再開し、本来の活動が戻ってきました。

イタリア大統領夫妻と面会(2025年3月4日)
イタリア大統領夫妻と面会(2025年3月4日)

この1年で、大阪・関西万博などのために来日した海外の賓客との面会は32件に及び(例年は10件前後)即位後最も多く、「陛下は多忙を極める中にも充実感を感じられているようだ」と側近は話していました。

行事の再開にあたり、「両陛下らしさ」も少しずつ加えられています。すべてを従前に戻すのではなく、例えば海外の賓客を招いた食事会のメニューに和食や日本酒で日本らしさを取り入れるなど、皇后さまや宮内庁と相談しながら工夫されています。

歴代天皇の歩みに学ぶ 歴史への造詣

「象徴」とは何をし、どうあるべきなのか。具体的に記された決まりはありません。

今回の会見で、陛下は聖武天皇、嵯峨天皇など7人の歴代天皇の名前を挙げ、疫病や天変地異など大きな困難に直面した際に平安を願って大仏を建立し、般若心経を書写し、幕府に米の放出を申し入れていた、と言及されました。

京都市の大覚寺をご訪問(2018年10月31日、宮内庁提供)
京都市の大覚寺をご訪問(2018年10月31日、宮内庁提供)

歴史に関心を寄せる陛下は、即位前までは毎年のように京都に足を運んで天皇直筆の般若心経を実際に確認していて、「歴代天皇の思いに強く心を動かされました」と振り返られました。

大きな災害の折に現地を見舞い、ビデオメッセージで国民に直接呼びかけられた上皇さまの姿も念頭に、困難な時期に天皇としてどう向き合えば良いのか。その時々に国民に寄り添おうとしてきた歴代の天皇の歩みを即位前から学び、今も「象徴」としてご自身のあるべき姿を追い求められているのだと感じます。

「困難な人々に心を寄せていく」 『時代に即した新しい公務』

陛下は皇室の在り方について、今回の会見でも「国民の幸せを常に願い、国民と苦楽を共にする」、「社会の変化も踏まえながら、状況に応じた務めを果たしていく」と述べられました。

少子高齢化、気候変動、頻発する災害、感染症のまん延、AI(人工知能)など、社会が大きく変化し多様化する中で、社会的に配慮が必要な人々もまた多様化しています。

沖縄戦没者慰霊碑で遺族に声をかけられる(2025年6月)
沖縄戦没者慰霊碑で遺族に声をかけられる(2025年6月)

「さまざまな困難を抱えている方々の声に耳を傾け、幸せを願っていくことは大切な務め」と声に力を込められた陛下。これまでにも皇后さまと共に子ども食堂や若者の貧困などの活動に取り組む人たちから話を聞かれています。

陛下は以前から、「時代に即した新しい公務」が必要と言及してこられましたが、ある側近は「『新しい公務はこれです』と掲げられるようなことはなさらないように思う」、「さまざまな境遇の方たちの話を聞く機会を増やし、その積み重ねが『新しい公務』になっていくのかもしれない」との見方を示していました。

被災地へのお見舞いや慰霊の旅、各地で交流の機会を大切にするお姿と、今回の会見であらためて示された決意を重ね合わせると、今後も社会のさまざまな側面に目を向け、困難を抱える人たちに寄り添い続けるという覚悟と『新しい公務』の形が見えてくるように思います。

「現地によく溶け込んで…」 父の歩みを受け継ぐ愛子さまへの信頼

社会人生活も、皇族としての本格的な公務も2年目になり、活動の幅を広げられている愛子さま。2025年は、陛下が以前訪問されたラオスへ初めての外国公式訪問を果たされました。同行取材を通じて何度も垣間見たのは、陛下の話題で会話を弾ませ、父が結んだ国際親善の絆を未来につなげようとされる愛子さまの姿でした。

ラオスでの昼食会ではラオス語を交えておことばを述べられた(2025年11月)
ラオスでの昼食会ではラオス語を交えておことばを述べられた(2025年11月)

「私も、父をはじめ、皇室の方々の歩みを受け継ぎ、日本とラオスの懸け橋の一端を担うことができれば幸いに思います」(古都ルアンパバーン昼食会での愛子さまのおことば)そうした愛子さまの姿や思いについて、陛下は会見で「現地によく溶け込んで、そして現地の皆さんとの交流に大変心を砕いて、親善訪問の実を挙げている」、「私の立場としても大変うれしく思います」と目を細められました。

経験を重ね、成長される愛子さま。

父の歩みを受け継ぎ、懸け橋にと願う娘への確かな信頼が、去年の会見での「心を寄せていってほしい」という表現から、今年は「担ってほしい」と大切な役割を託す言葉へと一歩進んでいました。

沖縄・小桜の塔に花を供えられる(2025年6月)
沖縄・小桜の塔に花を供えられる(2025年6月)

「戦争の記憶と平和の尊さを次の世代へ引き継いでいく役割を愛子にも担ってほしい」

「一人の人間として、一人の皇族として立派に」

こうした期待は、「愛子さまに皇族として末永く活動に携わってほしいという思いの表れか」と会見の最後に問われた陛下。

「私たちはやはり愛子にも一人の人間として、そしてまた一人の皇族として立派に育ってほしいというふうに思って、今まで育ててきたつもりです。そういうことの延長線として、今後ともいろいろな面で力を出してほしいし、国際親善の面でも活躍してほしいという願いを強く持っている次第です」慎重に言葉を選びながら、娘の充実した活動、公私にわたる幸せを願う思いを明かされました。

高市首相は皇室典範の改正に意欲を示していますが、目に見える形で議論が進められ、当事者を含め多くの人が納得する形にまとまることを願わずにはいられません。

「年月の経過だけでは測れない重み」 一人一人に思い寄せられ

去年は戦後80年。今年は東日本大震災から15年、熊本地震から10年を迎えますが、陛下は「年月の経過だけでは測れない重みを伴うもの」と述べ、一人一人の痛みや苦しみに思いを寄せられました。

長崎の原爆落下中心地碑で説明を受けられる (2025年9月)
長崎の原爆落下中心地碑で説明を受けられる (2025年9月)

物理的には会えなくても、困難な状況にあるさまざまな人たちの声に耳を傾け、心を寄せていくという揺るぎない信念を胸に、今年も両陛下そろって、また成長される愛子さまとご家族3人で、天皇としての歩みが続いていきます。

【執筆:フジテレビ宮内庁担当 宮﨑千歳】

宮﨑千歳
宮﨑千歳

天皇皇后両陛下や皇族方が日々取り組まれる様々なご活動をより分かりやすく、現場で感じた交流の温かさもお伝えできるような発信を心がけています。
宮内庁クラブキャップ兼解説委員。1995年フジテレビジョン入社。報道局社会部で警視庁クラブなどを経て、2004年から宮内庁を担当。上皇ご夫妻のサイパン慰霊の旅、両陛下の英エリザベス女王国葬参列などに同行。皇室取材歴20年。2児の母。