もし自分の親が認知症になってしまったら、さまざまな疑問がよぎる。その一つが「お金」だろう。「本人の預金口座は凍結されるのか?」と不安になるかもしれない。

イラストレーター・上大岡トメさんの著書『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』
(主婦の友社)では、上大岡さん含めてリアルな認知症体験のエピソードを、専門家の解説も交えて紹介している。

本書の監修を務めたひとり、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子による、親が認知症になったときの「お金問題」を、一部抜粋・再編集して紹介する。

認知症になるとお金がかかる

認知症になるとお金がかかると言われます。支出が増えるそのワケを、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが解説していきます。

認知症のある高齢者と、認知症のない高齢者。比較すると、認知症のあるほうが介護にかかる費用が多いとわかっています。どうしてだと思いますか?

まずは医療にかかるお金です。医療機関での認知症の検査費用や毎月の薬代、病院で運動療法や音楽療法などを受けるとその費用がかかります。

二つ目は公的介護保険の自己負担分です。在宅介護サービス(ホームヘルパーの利用など)や通所介護サービス(デイサービスやショートステイなど)の利用料です。といってもこの二つは1~3割の負担なので、実際に支払う額はさほど多くありません。

認知症になると特有の出費が生じる(画像:イメージ)
認知症になると特有の出費が生じる(画像:イメージ)
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問題は認知症に特有の出費です。認知症の介護には手がかかることが多いため、介護保険の上限額では足りなくなってしまい、サービスを全額自費で追加することもあります。

そのほかにも、運転免許証を返納したことでタクシー代がかさんだり、行方不明になったときの捜索に費用がかかったり。さらに法定後見制度の手続きをすることになれば、余分にお金がかかってしまいます。

具体的な費用について見ると、認知症の検査費用が4千~2万円程度。通院による医療費が月額3万9600円、介護費用は在宅介護が年額約219万円、施設介護が年額約353万円との推計があります(慶応大学医学部・厚生労働科学研究共同研究グループによる調査)。

別の調査では、住宅改修や介護ベッドの購入などにかかった一時的な費用が約51万円、月々の介護費用は7万5600円というデータもあります(ニッセイ基礎研究所調査)。

介護費用がかさむだけではありません。認知症の人は買う必要のないものを大量に買ってしまったり、銀行から引き出したお金をなくしてしまったりして資産を減らしてしまうことも少なくありません。