物価高で家計の負担が増すなか、大手フードデリバリー「Wolt(ウォルト)」が広島市で新たなサービスを始めた。対象店舗は11月5日時点で広島市内の約100店。飲食店からもその効果に期待が集まっている。
「安くても助かる」飲食店の声
「おいしそうな麻婆豆腐がつくられています」
11月5日、広島市中区の中国料理店「膳坊(ぜんぼう)」を訪れた取材陣の前で、店主の平岡美幸さんはこう話した。
「時代についていかないと遅れる。安い値段かもしれないけど、うちにとっては助かります」
コロナ禍を経て、いまは“物価高による客離れ”が新たな悩みとなっている。
そんな中、平岡さんが期待を寄せるのが、Woltがこの日から始めた新サービス「タイムセール」である。
2020年3月に日本に上陸したWoltは、広島でも着実に利用者を増やしてきた。
一方で、物価高の波は消費者だけでなく飲食店にも及び、Woltも対応を進めている。2025年4月には、お好み焼き店など一部の店舗でデリバリーの商品価格を店頭と同一にする取り組みをスタート。そして今回、さらに一歩踏み込んだサービスを打ち出したのである。
事前予約で効率化、配達料“無料”を実現
Woltの「タイムセール」は、事前予約で注文するとランチやディナーの時間帯に配達料・サービス料が無料になるという仕組みだ。対象メニューは890円以下。指定した時間に届けてもらえるため、忙しいランチタイムにも便利だという。
この“事前予約”の活用がポイントだ。
これまでフードデリバリーは、オーダー後すぐに届ける「即時配達」が主流だったが、何時から何時の間に配達してほしいという予約方式を利用することで、Wolt側の配送効率が上がり、その分、利用者へのコスト還元が可能になった。
「890円以下」に込めた思い
Wolt Japanの遠間隆平さんはこう話す。
「本当に検討に検討を重ねて、どのラインが低価格帯だと消費者のみなさんに認識していただけるかという長い調査の上で、890円のラインにしました」
対象店舗はサービス開始時点で広島市内の約100店。受け取りのタイミングは予約時に30分刻みで設定でき、最短30分後から1週間先まで指定可能である。
お財布事情を気にして、コンビニのおにぎりやサンドイッチで昼を済ませる人も多い。
遠間さんは「食のマンネリ化しているオフィスワーカーがターゲット」と話し、新しい客層を取り込みたい考えだ。
物価高でも“手軽においしく”をあきらめたくない──そんな消費者と飲食店の思いに寄り添う、新しいかたちのデリバリーが広島から広がり始めている。
(テレビ新広島)
