テレビ宮崎の夕方ニュース「#Link」でお天気コーナーを担当している気象予報士・古山圭子さんが天気の豆知識を解説するコーナー。今回は、この季節に甘い香りを届けてくれる「キンモクセイの香りの秘密」についてお伝えします。

秋が深まると、どこからともなく漂ってくる甘く優しい香り。多くの人が秋の訪れを感じる「キンモクセイ」の香りですが、なぜあれほど強く、遠くまで香るのか不思議に思ったことはありませんか?今回は、キンモクセイの香りに隠された“驚きの秘密”を解説します。

宮崎県内でも香る「秋の便り」

まずは視聴者から寄せられた写真をご紹介。延岡市古江で撮影された立派なキンモクセイ…と思いきや…

この記事の画像(7枚)

 推定樹齢300年以上を誇り、昔から『古江のンモクセイ』と呼ばれていたのですが、実は、近年の研究で「ウスギモクセイ」だと判明したとのこと。キンモクセイとウスギモクセイは同じモクセイ科の植物で、よく似ています。

見分けるポイントは花の色。キンモクセイが濃いオレンジ色なのに対し、ウスギモクセイはクリーム色のような淡い色をしています。どちらも同じように甘い香りを放ちます。

県内では他にも、西都原古墳群や宮崎ブーゲンビリア空港など、様々な場所で美しい花を咲かせ、秋の香りを届けているようです。

UMK気象センターの「X」で行ったアンケートでは、実に75%の人が「ことしキンモクセイの香りを感じた」と回答してくれました。多くの人に愛されているこの香りですが、そもそも植物にとって、これほど強い香りを放つ目的は何なのでしょうか。

今回はこれが「お天気クイズ」です。「なぜキンモクセイは遠くまで届く甘い香りを出すのでしょうか?」

甘い香りは、賢い「生存戦略」だった!

児玉アナが「いい香りがすることで、人から伐採されない、自分を守るため?」と答えると、古山予報士は「そうそう」と、正解に近いという反応をしたうえで、「それもあるんです。ただ、実はもっと賢い生存戦略なんです」と続けました。

古山予報士は、東洋産業株式会社の大野竜徳さんによる「甘い香りはキンモクセイの生存戦略!?」について紹介します。

古山予報士:
日本で見られるキンモクセイは、実はほぼ全てが雄株(おすかぶ)なんだそうです。ということは、自分では子孫を残せませんよね。

なんと、日本のキンモクセイは実を結んで種を作る雌株(めかぶ)がほとんど存在しないため、自力で仲間を増やすことができないというのです。では、どうやって日本中に広まったのでしょうか。

古山予報士:
そこで、このように甘い香りで人に好まれることで、人の手で『接ぎ木』をされて日本中に広まり、子孫を繁栄させてきたんです。

つまり、私たちが「良い香りだから庭に植えたい」と感じることが、キンモクセイにとっては子孫を残すための重要な手段だったのです。

「我々が好んで植えているように見えて、実はまんまとキンモクセイの戦略に乗っかっているということになるかもしれない、と専門家の方もおっしゃっていました」と古山予報士。植物のしたたかで賢い戦略に、スタジオも感心しきりでした。

雨の前後は、さらに香りが強まるチャンス

そしてこのキンモクセイの香り、実は天気とも関係があり、雨の前後だと、より強く感じられるとのこと。

曇りの日や雨の前後は水蒸気が多くなり、香りの分子が空気中に留まりやすくなります。また晴れると上昇気流が発生して香りが上空に逃げてしまいますが、風が穏やかだと、さらに長い間、香りを感じられやすいのです。

天気予報によると、5日(水)の夜から6日(木)の午前中にかけては雨が降りやすくなる見込みとのこと。雨上がりの道端では、キンモクセイの甘い香りを一層強く感じられるかもしれません。

次にキンモクセイの香りに出会ったら、そのしたたかで愛らしい生存戦略に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、秋の散歩がもっと楽しくなるはずです。

◆こちらの記事もチェック!

彼岸花は「戦略家!?」他の花が咲いていない時に葉を生い茂らせ太陽を独り占め… 別名「ハミズ〇〇〇〇」 気象予報士が解説

https://www.fnn.jp/articles/-/938336

(テレビ宮崎)

テレビ宮崎
テレビ宮崎

宮崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。