テレビ宮崎の夕方ニュース「#Link」でお天気コーナーを担当している気象予報士・古山圭子さんが天気の豆知識を解説するコーナー。今回は、「ワニツカおろし」についてお伝えします。

冬の青空に映える「大根やぐら」

コーナーの冒頭、古山さんが紹介したのは、自身が撮影してきた映像でした。

古山予報士:
宮崎市田野町に行って撮影してきたんですが、雲一つない青空の下お目見えしているのが、冬の風物詩、「大根やぐら」でございます。

この記事の画像(7枚)

画面に映し出されたのは、整然と組まれた巨大なやぐらに、ずらりと干された大根。宮崎市田野町の冬の象徴ともいえる光景です。

この大根は、約2週間干された後、美味しいたくあんになります。しかし、その裏には大変な手間がかかっていると古山予報士は続けます。雨が降ればブルーシートをかけ、気温が氷点下になる日にはストーブで暖房もするというのです。

古山予報士:
本当に手間だけを考えると高級食材ですよね。ありがたく頂かないといけないですね。

美味しさの秘密は「ワニツカおろし」

では、なぜこの地域で、これほど見事な干し大根が作られるのでしょうか。そのキーワードが「ワニツカおろし」です。

古山予報士:
この大根やぐらを美味しくしている原因のひとつが『ワニツカおろし』なんですよね

「ワニツカおろし」とは、一体何なのでしょうか。そのメカニズムを解説します。

冬になると、大陸から日本に向かって冷たい北西の季節風が吹きます。この風は、東シナ海を渡ってくる間に、海から水分をたっぷりと吸収します。そして、九州の西側の地域に雨や雪を降らせるのです。

水分を落とした後の風は、九州山地を越えて宮崎県側へと吹き込んできます。この時、風は、冷たく乾燥した「からっ風」に変わります。

宮崎市田野町の周辺では、西側にそびえる鰐塚(わにつか)山からこの「からっ風」が吹きおろしてきます。これが「ワニツカおろし」の正体です。この自然のドライヤーともいえる風が、大根の水分を効率よく飛ばし、うまみを凝縮させてくれるというわけです。

この冬は、大根がさらに美味しくなる?

では、この冬の「ワニツカおろし」はどうなるのでしょうか。12月から2月にかけての3ヶ月予報をもとに解説します。

気温: 平年並みの予想。ただし1月は低温よりの傾向で、冬らしい冷え込みが強まりそうです。
降水量: 平年より少ない傾向。晴れる日が多く、空気が乾燥しそうです。

この予報から、大根やぐらにとっては、氷点下対策でストーブをつける日は少し増えそうですが、雨除けのブルーシートをかける手間は少なくなるかもしれない、と古山予報士は分析します。

古山予報士:
冬型の気圧配置が強まってワニツカおろしもピープーということで、大根美味しくなりそうですね。楽しみです!

冷え込みと乾燥した「ワニツカおろし」の相乗効果で、この冬のたくあんは、例年以上に美味しくなるかもしれません。

宮崎の冬の味覚、たくあん。その美味しさの裏には、「ワニツカおろし」という、この土地ならではの気象条件が深く関わっていました。次にたくあんを食べる時は、鰐塚山から吹く冷たい風に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、いつもより味わい深く感じられるはずです。

(テレビ宮崎)

テレビ宮崎
テレビ宮崎

宮崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。