ワシントン条約事務局は15日、ウナギの全種類を国際取引の規制対象にすべきだとしたEU=ヨーロッパ連合などの提案について「採択を勧告する」との最終評価を公表した。
2025年11月末からの国際会議で投票国の3分の2以上が賛成して採択されれば、輸出が許可制になり、ウナギの価格が上昇基調を強める可能性がある。

“二ホンウナギも取引規制強化を”

EU案は、食用ウナギの全種類について、ワシントン条約の「付属書2」の対象にするというもので、国際取引を行う場合、科学的な助言などに基づいて、輸出国当局が発給した許可書が必要になる。

付属書2は、すでにヨーロッパウナギを対象にしているが、二ホンウナギなども加え、全種類の取引を含めるというのがEU案で、稚魚や成魚、かば焼きなどの加工品も含まれる。

二ホンウナギは、東アジアに広く分布していて、日本で養殖されているウナギはほとんどが二ホンウナギだ。一方、ヨーロッパウナギは、主に北大西洋やヨーロッパの河川に生息する。稚魚は二ホンウナギと比べて大きめで、身に脂がのっているのが特徴とされる。

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EUが規制強化を提案したのは6月だった。背景にあるのは、「二ホンウナギの資源量が著しく減っている」という現状認識と、「全種類を規制しないとヨーロッパウナギも含め資源保護の効果がない」との考え方だ。

これに対し、日本側は、1990年以降、資源量は回復傾向にあると反論、規制により稚魚のシラスウナギの取引価格が高騰し、かえって密漁や密貿易のリスクを高めると訴え、加盟国への説得を続けてきた。

流通に影響 価格は上昇?

EUによる提案を受け、FAO=国連食糧農業機関で科学者による審査が実施され、条約事務局が最終評価に至ったのがいまの段階だ。

「採択を勧告」とした判断のポイントとして、二ホンウナギと、すでに付属書2の対象となっているヨーロッパウナギとの間に、外見をめぐる「類似性」があるとした点がある。

識別が難しく、ヨーロッパウナギが二ホンウナギなどとして取引される「ロンダリング」が横行していると指摘、全種類を付属書2に含めれば、適切に取り締まることができるとした。

二ホンウナギについても規制を強化しないと、ヨーロッパウナギの資源管理を実効性あるものにできないという見方だ。

ウナギ(画像はイメージ)
ウナギ(画像はイメージ)

その一方で、二ホンウナギは「取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種にはあてはまらない 」としていて、日本側は「資源量が回復傾向にある」と訴えてきた主張に沿った判断も示されたと受け止めている。

EU案は、11月24日~12月5日にウズベキスタンで開かれる締約国会議で協議される。

投票国の3分の2以上が賛成して採択されれば、ニホンウナギの輸出が許可制となり、取引が自由にできなくなり流通に影響が広がる可能性がある。

値上がり傾向が続くウナギ価格は上昇基調を強めるのではとの声が上がっている。

11月末からの国際会議が焦点に

2024年の日本国内のウナギ供給量はおよそ6万940トンで、うち7割を生きたウナギやかば焼きとして、主に中国から輸入している。

ウナギの蒲焼き(画像はイメージ)
ウナギの蒲焼き(画像はイメージ)

日本は、主要漁獲国である中国や韓国と共闘して、養殖場内での稚魚の数量に上限を設けるなど国際的な資源管理を徹底している姿勢を改めてアピールするとともに、二ホンウナギはヨーロッパウナギとはサイズも異なり識別は容易で、二ホンウナギの規制強化がヨーロッパウナギの資源保全にただちにつながらないとして、採択を阻止したい考えだ。

EU案が採択されれば、2027年6月から規制が導入されることになる。

会議に向けての駆け引きは、予断を許さない状況になってきた。

(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員