毒性が強く、刺されると最悪の場合は死に至るケースもある「スズメバチ」。実は行楽シーズンの秋に、最も凶暴化するという。なぜ秋に凶暴化するのか、その生態や刺されないための予防法を専門家に聞いた。

女王バチを生み出そうとハチの“気が立つ”秋

「秋はハチが神経質になっている時期」
 
こう話すのは、昆虫に詳しい福井市自然史博物館の梅村信哉学芸員。
 
秋は「新しい女王を生み出すための重要な時期なので、巣を守ろうとハチの気が立ちやすい」というのだ。
 
スズメバチの女王蜂の寿命は約1年。冬に命が尽きる前に新たな女王蜂を生み出そうと秋はハチたちが神経質になる。梅村学芸員によると、ピークは10月だが、11月上旬まで警戒すべきだという。 「10月は涼しくなり、人が山に入る機会も増えるため、スズメバチの巣に近づき被害に遭うケースが多くなる」と注意を呼び掛ける。
 

巣を守ろうとするスズメバチ
巣を守ろうとするスズメバチ
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特に注意が必要な3種類のスズメバチ

福井県内に生息するスズメバチは14種類。このうち注意が必要なスズメバチは3種類。
 
<小型スズメバチ>
体長は2センチ前後で住宅近くの木の茂みに巣を作る。

コガタスズメバチ
コガタスズメバチ

<黄色スズメバチ>
体長は2センチ強で、山間部をはじめ家屋の軒先など人の生活圏にも巣を作る。

キイロスズメバチ
キイロスズメバチ

<オオスズメバチ>
体長が3センチ前後と大型で攻撃性が高く山間部に生息している。土の中や木の洞に巣を作ることが多く、知らないうちに巣に近づいて刺されるケースがある。

オオスズメバチ
オオスズメバチ

遭遇したら刺激をせず後ずさり

スズメバチにはどう対処したら良いのか。
  
梅村学芸員は最も大切なのは「スズメバチに合わないための対処」だという。「山に行く場合、黒い服装を避けること。さらに整髪料や香水など強い匂いに惹かれる可能性があるのでそれを避ける」
  
また、ハチか近くに飛んできた場合は「手で払うと非常に危ないので、怖いとは思うが飛び去るまで待つ。もしくは静かに後ずさりをしてハチと距離をとる」のが効果的。
  
ハチを手で払いのけるような行動をとってしまうと、ハチは攻撃を受けたと感じて攻撃に転じ刺されるリスクが高まるというのだ。
 

手で払うと“攻撃”と勘違い
手で払うと“攻撃”と勘違い

ハチの生態に詳しい梅村学芸員も、実はスズメバチにもアシナガバチにも刺された経験がある。「昆虫を探しているときに“弁慶の泣き所”を刺された。すぐに家に帰り大量の水で洗ったので、大事には至らなかった」と対処の大切さを語る。
   
大前提として、ハチの巣が近くにある場合は、ただちに離れることが重要だ。
 
万が一にも刺された場合は、吐き気やじんましんのような強い症状があれば、アナフラキシーショックの場合もあるため早めの受診が必要だ。

昆虫採取でハチに刺された梅村学芸員
昆虫採取でハチに刺された梅村学芸員

応急処置としては「刺された部分を大量の水で洗うこと。ハチの毒は水に溶けやすいと言われていて、水で洗うことが一番簡単にできる」と梅村学芸員。
   
アナフィラキシーショックが出る時間は個人差もあり、一概にどのくらい経つと症状が出るとは言い切れない。最近では、ハチの毒アレルギーがあるかどうか病院で検査することもできる。

ハチに刺されないための対処法
ハチに刺されないための対処法

ようやく過ごしやすい気温となり、外出が増える行楽の秋。取れる対策を取ったうえで、自然を満喫しよう。

福井テレビ
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