日本三大秘境の一つに数えられる宮崎県椎葉村は、面積の96%を森林に覆われ、豊かな自然が広がる。この村で100年以上にわたり地域住民の日常を支えてきた郵便配達業務の4代目を務める黒木晏夏(くろぎ・あんな)さん。曾祖父の代から続く家業を継ぎ、山道を駆け巡る黒木さんは、地域住民にとってなくてはならない存在となっている。

100年続く伝統、4代目の郵便配達

宮崎県北西部に位置する椎葉村(しいばそん)。

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面積の96%が森林に覆われるこの地で、地域住民の生活に欠かせない「郵便」を届ける黒木晏夏さんは、代々続く郵便配達員の家系に生まれた。

晏夏さんの曾祖父・竹千代さんの代から始まったこの業務は、車が普及する以前の時代から、100年以上にわたり行われてきた。「郵便を始めたのが曾祖父の代からで、そこから祖父がやって、そのあと母が引き継いで、そのあと私がやってて、今4代目になります」と晏夏さんは語る。

黒木晏夏さん:
郵便屋さんといったらうちのところ、というふうに、みんな多分思っていると思います。

 山道50km、地域住民との温かい交流

晏夏さんが担当するのは、小崎地区の61世帯。マニュアル車を運転し、1日に50km以上を走って配達する。そんな晏夏さんの配達は、単に荷物を届けるだけにとどまらない。地域住民との温かい交流が、日々の業務を彩っている。

「じいちゃん、ばあちゃんのときからの長い付き合い」と信頼を寄せる人もいれば、「笑顔がものすごく素敵で、村にとって貴重な方」と評する人もいる。田植えの時期に農作業についての会話を交わしたりする姿は、地域に根差した存在であることを象徴している。

「 声かけ」に込める想い、地域への責任感

晏夏さんは、配達中に必ず「こんにちは、郵便です!」と、声かけを欠かさない。特に一人暮らしの高齢者宅では、万が一の事態に備え、安否確認の意味合いも込めているという。

黒木晏夏さん:
一人暮らしの方がいらっしゃって、実際に自分が配達に行ってなかったときに倒れられてたという話を聞くと、「あのとき声をかけておけばよかったな」と思うときもある。郵便ポストがあるところは声かけをして、みなさんが元気かなと思いながら配達しています。

自然な流れで継いだ家業、地域を支える誇り

自身が郵便配達員になった経緯について晏夏さんは、「小さい頃は椎葉に帰ってくるとも思っていなかった。高校卒業して椎葉に帰ってくることになったときも、私が郵便配達をするとは思ってはなかったのですが、いろいろあって、今の仕事について、というのも、自然の流れだったのかなとも思ったりします」と、振り返る。

山間地域での郵便配達は、地域住民にとってなくてはならないもの。晏夏さんについて聞くと、ある住民からは「いい人ですよ、こんな妹がいたらよかったのに」と慕しみを持った言葉が返ってきた。

また住職からは「おじいちゃんの代から山間部の情報伝達をされているので、私の先祖含めて、椎葉のご先祖のみなさんが喜んでおられます」という言葉も。

晏夏さんは、「あんたが来てくれてよかったと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分が届け続ける限りは大切にお客様の荷物を運べたらなと思います」と、地域住民からの言葉を力に、今日も山合いの村に笑顔を届け続けている。

(テレビ宮崎)

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