西九州新幹線の並行在来線沿線で、鉄道とバスを組み合わせて登下校の利便性を高める「モーダルミックス」の実証実験が始まった。新幹線の開業で在来線の利便性低下が問題となる中、その効果が注目される。
新幹線並行在来線沿線の利便性向上へ
複数の交通手段を組み合わせて利便性を向上させる「モーダルミックス」。その実証実験が西九州新幹線の開業に伴い並行在来線となった長崎本線の沿線の佐賀・鹿島市と太良町のエリアで始まった。

西九州新幹線の並行在来線沿線では、特急列車の本数が3分の1に激減するなど鉄道の利便性低下が問題となっている。

このような中、JR九州とバス事業を営む祐徳自動車が共同で、鉄道とバスの組み合わせによる「モーダルミックス」の実証実験を始めることになった。
列車がない時間帯に路線バスを利用
今回の実証実験は、列車が来ない時間帯に下校する高校生の利便性向上をはかるのが目的。鹿島・太良エリアの高校に鉄道で通う生徒を対象にバスの運賃を割り引くというもので、JRの通学定期券を持っている生徒は、通常の3分の1以下の料金でバスを利用できる。

たとえば、JR長崎本線の肥前鹿島から肥前大浦を含む区間の通学定期券を持っていれば、肥前鹿島駅と太良町の竹崎港をつなぐバス料金は一律200円。通常の3分の1という“お得な料金”となる。
列車に乗り遅れると3時間半待ち
今回の実証実験で想定される主な利用者は、定期考査の期間中に普段より早く下校する生徒たち。

並行在来線沿線の高校のうち太良高校では約90人の生徒が登下校で鉄道を利用している。太良高校では9月の下旬、1年生と2年生の定期考査が始まり、この日は午後1時に下校の時間を迎えた。

多良駅までは徒歩で20分ほどの距離。その多良駅から肥前鹿島方面の列車が出発するのは約30分後。

この列車に乗り遅れると約3時間半もの間待つことになる。このため、迎えに来た家族の車に乗って下校する生徒の姿が目立った。
「早く帰りたいからバスがいいかな」
鳥栖市から通学している男子生徒は、「学校が早く終わるとバスか(午後)5時台の電車で帰るしかないです。早く帰りたいからバスの方がいいかな」と話す。

祐徳自動車バス事業部乗合バス部長 山口守さん:
ちょうど列車がない時間帯に路線バスが3本ぐらいあったので、協力できないかなというのが(モーダルミックスの)元々のはじまり

また、鉄道では通いにくいエリアから通学している生徒もいる。
祐徳自動車バス事業部乗合バス部長の山口守さんは「駅まで歩いていかなくても(高校の)目の前でバスに乗れたり、自宅の近くにバス停があったりという人もいると思うので、社会実験でいろんなことを見せてもらえれば」と路線バスの今後の可能性について話す。

モーダルミックスの実証実験は九州では初めて。今回の実証実験が登下校の選択肢増加のきっかけになればとバス会社は期待している。

一方、この取り組みについてJR九州は「ほかの交通機関と連携して利便性向上につなげることで鉄道の乗客確保につとめたい」としている。