この夏の猛暑は、秋の風物詩「たけふ菊人形」にも影響を及ぼしています。村田光広予報士が、キク生産者から話を聞いて来ました。
越前市の武生中央公園では、10日から恒例の「たけふ菊人形」が始まるのを前に、着々と準備が進められています。
菊師と呼ばれる職人たちによって人形に花を付ける作業が行われていて、一つ一つ命が吹き込まれていました。今年はおとぎ話をテーマに11体が展示されます。
今年は例年より開幕が1週間、遅くなっているのですが、理由は、猛暑でキクが大きく育たなかったからです。
たけふ菊人形では、越前市内4軒の農家が会期中に必要な2万株のキクを育てています。そのうちの約6000株を栽培する安井貞彦さんに、畑で話を聞きました。
村田気象予報士が「夏、猛暑でしたが影響はありましたか」と尋ねると「あります。全然伸びていない」と安井さん。「今咲いている早生の品種は、通常だと倍くらい伸びてくるのが、伸びていない」と話します。
例年よりもキクの背丈が短いのは「暑さと、7月頃に雨が少なかったのが大きな理由」だといいます。
安井さんの畑では人形用のキクのほか、会場を彩るプランター用のキクを栽培していますが、こちらにも大きな影響が。
「大きくならない。4分の1くらいは出荷できなさそう…」と肩を落とします。
本来、キクは暑さに強く育てやすいそうですが、今年は例年にはない対策をとりました。「畝の間の溝に水を入れた。例年では水をやるということはなかった」(安井さん)
夏の異常気象に頭を悩ませる安井さんですが「たけふ菊人形」には特別な思いがあるといいます。「たけふ菊人形をいつまでも残してほしい。見に行ってキクがきれいに咲いていると嬉しいし、見に来た人にきれいと言ってもらえるのがありがたい」という思いがあります。
7月から9月の越前市の降水量を平年と比べると、いずれの月も平年を下回りました。特に7月は平年を大幅に下回り、平年の2割ほど。7月としては観測史上最も少なくなりました。また、8月もまとまった雨が降りませんでした。
今後の降水量はというと、最新の長期予報によると、10月は平年並みかやや多くなる傾向です。キクの成長を促す雨になるでしょう。
朝晩の気温も下がってきたので、今後の生育は順調に進むのではないでしょうか。
たけふ菊人形は10日に開幕です。厳しい暑さを乗り越えて花を咲かせていることを知ると、楽しみ方も違ってくるかもしれません。