長崎くんちで龍踊(じゃおどり)を奉納する諏訪町。見どころは、青龍と白龍が一緒に舞う「双龍の舞」。受け継がれた龍を自分たちで手直ししながら、新人とベテランが息を合わせて力強く舞い踊る。

10年ぶりに目覚めた2匹の龍

10年ぶりに眠りから覚めた2匹の龍。不老長寿の源とされる月を求め、身をくねらせながら力強く舞い踊る。

国の選択無形民俗文化財「龍踊」
国の選択無形民俗文化財「龍踊」
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龍踊は「国の選択無形民俗文化財」で、諏訪町は青龍と白龍、子龍の共演が見どころの一つだ。龍の動きを止めることなく龍方(じゃかた)が瞬時に入れ替わる「棒交代」や、青龍と白龍が一緒に舞う「双龍の舞」は諏訪町のお家芸となっている。

「優雅に、勇壮に、美しく」
「優雅に、勇壮に、美しく」

2025年のモットーは「優雅に、勇壮に、美しく」。龍方たちは玉を探す龍の息遣いや、徐々に高まるいらだち、玉を見つけ必死に追いかける激しい動きを“龍の気持ち”になり切って表現する。

神社の「つかい」白蛇の伝説

諏訪町は長崎市中心部にある中通り商店街を含むエリアで、商店や小学校などが建ち並ぶ。

長照寺(寺町)
長照寺(寺町)

長照寺の山門付近に最初に諏訪神社が建てられたといわれていることから、町名が「諏訪町」となった。

傘鉾には白狐が
傘鉾には白狐が

諏訪神社の総本社・諏訪大社が長野県の諏訪湖周辺にあることから、町のシンボル「傘鉾(かさぼこ)」の垂には凍った湖を渡る白狐があしらわれ、飾(かざり)にも諏訪神社の御神紋・梶の葉が施されている。

2015年長崎くんちの様子
2015年長崎くんちの様子

神社の「つかい」が白蛇という伝説があり、1886年から龍踊を奉納するようになったといわれている。

今回でくんち出演16回目「総監督」の苦悩と継承

諏訪町の出演者は龍方や囃子方、子龍などあわせて121人。裏方も含めると200人を超える大所帯だ。

大所帯だが少子化の影響も
大所帯だが少子化の影響も

しかし少子化の影響で、かつて30~40人出演していた子供たちは2025年は10人。2匹だった子龍は1匹になった。

未経験者が半数以上
未経験者が半数以上

龍方も42人のうち新人が23人。未経験者が初めて半数を超えた。

総監督 山下寛一さん(右)
総監督 山下寛一さん(右)

総監督を務める山下寛一さん(72)は、特別出演も含めると16回目の奉納となる。体に染みついた感覚や所作を言葉にして伝える難しさを感じている。

イメージしやすい言葉で工夫している
イメージしやすい言葉で工夫している

楕円形に動いてほしい場合は「陸上競技場のトラックをイメージして」とイメージしやすい言葉で伝えるなど工夫している。「龍方の中に囃子の経験者がいないから音のタイミングに合わせた動きを説明しても理解度が足りないのがネックだ」と山下さんは話す。

龍の修繕は自分たちの手で

稽古が休みの土曜日、諏訪小学校に町の関係者が集まっていた。

稽古が休みの日に龍の修繕
稽古が休みの日に龍の修繕

龍の手入れや修繕は自分たちで行っている。前回の奉納でできた傷に接着剤を塗り、その上に塗料を塗っていく。

中から紙…年季が入った龍
中から紙…年季が入った龍

青龍は1957年の奉納のときに作られたものだ。足を取り外し装飾をはがすと、中から紙やワラ、針金が出てきた。

手作業で丁寧に仕上げる
手作業で丁寧に仕上げる

鱗もすべて手作りだ。傷んだものを修復しては1枚1枚丁寧に縫い付けていく。龍の設計図はなく、先輩たちの指示が頼りだ。

愛着がさらに湧く
愛着がさらに湧く

自分たちで手入れをすることで龍を大切に思う気持ちも芽生え、本番に向けて全員の心がひとつになっていく。

先輩から後輩へ伝統の継承

コミュニケーションを深める大事な時間にもなっている。

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髙田信生さん(77)は子供の頃からくんちに関わり、足掛け70年。

髙田さんのスマホに入っている過去のくんちの写真
髙田さんのスマホに入っている過去のくんちの写真

後輩たちに68年前の写真を見せながら、先代から受け継いできたものを語る。

龍踊は「微妙な動きの追求」で完成する
龍踊は「微妙な動きの追求」で完成する

「微妙な、0コンマ何秒というその追求。自分たちはできているつもりでも、総監督からすると何か足りないと言われる」と髙田さん。

龍方5回目の小森誠之さん
龍方5回目の小森誠之さん

龍方として5回目の出演となる小森誠之さん(61)は「昔の人は厳しいというのは本番で神様に奉納するという思いがあったから。それを引き継いでいって長崎の伝統をみんなで引き継いでいきたい」と、くんち継承への思いを語った。

先輩の思いを胸に…
先輩の思いを胸に…

龍方として初出演する金出大和さんは「先輩方の気合いに負けないように頑張っていかないと」と、気合を入れ直した。

それぞれの思いを乗せ龍が舞う

本番の3週間前。くんち本番で着る衣装が配られた。

「かっこよかねー」
「かっこよかねー」

衣装を手にして、龍方たちの気持ちも高まってきた。

山下さん「70%かな」
山下さん「70%かな」

総監督の山下さんは龍方の動きを見て「完成度は70%ぐらいになったかな」と話す。

思いを乗せて龍が舞う
思いを乗せて龍が舞う

新人とベテランの心をひとつに。伝統をつなぎながら、魂を吹き込まれた2匹の龍が天高く諏訪の杜を舞う。

2025年 長崎くんちの踊町

2025年の長崎くんちは、6つの踊町が奉納する。

2025年 踊町
2025年 踊町

新橋町「本踊・阿蘭陀万歳」
諏訪町「龍踊」
新大工町「詩舞・曳壇尻」
榎津町「川船」
西古川町「櫓太鼓・本踊」
賑町「大漁万祝恵美須船」

長崎くんちは10月7日から9日の3日間、諏訪神社で行われる。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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