福岡市内の保育園で、2人の保育士が2歳の園児に対し、容姿を“いじる”など、暴言を吐く「不適切保育」を繰り返していたことが分かった。母親が娘の異変に気付き、お守りに忍ばせたボイスレコーダーに、娘が保育園を嫌がる理由が記録されていた。
保育士A「カメレオンに似てる」保育士B「褒め言葉よ(笑)アンタはさ、結んだら痛いとか、なんとか言いそうだから嫌だ」

これは2025年9月、福岡市内の保育園で、2人の保育士が、わずか2歳の女の子に向かって話していたボイスレコーダーの録音内容だ。

「娘の立場に置き換えたら、正直、普通じゃいられなくて。『許せない』という感情になったのは、初めてだったので…。録音を聞いた時は、涙が止まらなかったのが本音」と、女の子の母親は怒りを露わにする。

お守りに入れたボイスレコーダー
母親によると、娘の様子に異変が起きたのは、8月下旬。保育園に通い始めて3ヵ月が経った頃だったという。

「最初に入園した時は、保育園の鞄を見るだけで喜んで、自分で玄関に持って行くという行動をしていたが、9月のちょっと前ぐらいから『嫌だ、嫌だ、嫌だ!』と言って、のけ反ったり、泣いたりとか…」。母親は、何かおかしいと違和感を感じ、娘のお守りにボイスレコーダーを入れ、保育園に預けたという。

娘が帰宅して、録音を再生した母親は、あまりの内容に絶句したと話す。
【録音再生】
子供「いやあ!」(叫ぶ声)
保育士「そういう話をお母さんにしてもらいなさい。アンタのお母さんも喚いて言わんかったら、よかことしか言わんけん」
保育士(泣いている子供に)「なに?訴えてこないで!」

保育士A「顔がお魚になってる」

保育士B「元からこんな顔です」
保育士A「マンボウみたいよ」

「容姿のことを馬鹿にしたり、笑ったり、嬉しくないですよね、誰も。マンボウとかカメレオンとか言われて。もう、バカにしてるじゃないですか」と母親は記者に録音を聞かせ、不快感を訴える。

録音を聞かされ事実を認めた保育士
事態が発覚し、すぐに母親は、この録音を持って園に説明を求めた。不適切な発言をした保育士は、「子供達の前で、絶対に言ってはいけないような言葉とか、保育をしていたのも事実です。もし、自分の子供が園でそのようなことを言われていたら、『預けたくないな』と思うような言葉かけをしていたのも事実です。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪したという。

福岡市の子育て支援部指導監査課は、事実確認を進めており、園に対して、全職員へのヒアリングなどの結果をまとめた報告書の提出を求めている。

虐待より表面化しにくい不適切保育
保育について詳しい新潟県立大学子ども学科の小池由佳教授は、「保育士として、かけていい言葉だとは思わない」とした上で、「乳幼児期の子供の育ちは、信頼関係が作られていったり、プラスに働く経験をしていくことが、学童期に繋がっていくので、そういう場であって欲しい」と保育指導の改善を促した。

今回の「不適切保育」について、「虐待」に比べ、表面化しにくいとも小池教授は指摘する。

「不適切保育は、日常に溶け込んでしまっている。おかしいなと思っても、そのままきてしまっている。適切な関わり方がどういうものなのかというのを、もう一度、皆さん1人1人が見直していく必要がある」。

保育園は、TNCの取材に対し、「不適切な指導があったことは確認していて、当該の人物については、出勤を停止している」と説明したが、他の保護者への詳細な説明はなされていない。

母親は、当該の保育士本人は、「他の子達に対しても言っていた」と話していたと語り、このまま有耶無耶にせず、「保護者に対して、謝罪と説明。隠ぺいせずにするのが責任の取り方だと思っているので、それはして欲しいです」と園の対応を求めた。

国は、3年前に初めての実態調査を行い、その結果、全国の保育所で「脅迫的な言葉がけ」といった「不適切保育」が、914件確認され、うち90件が「虐待」と確認されている。
不適切な対応が社会問題となる中、子どもの安全確保と虐待の早期発見を強化することを目的に、2025年10月1日から改正児童福祉法が施行され、保育所などで、職員による虐待を見つけた場合、自治体に通報することが義務化されることになっている。
(テレビ西日本)