和歌山県警で幹部だった警視の不祥事が発覚。その舞台となったのは和歌山市内にある風俗店でした。

【風俗店エンペラー元経営者】「『いつでも摘発できるぞ』と。ソープランドでは、お金はもらったことはない」

取材で浮上したのは、警察幹部による風俗店の“無料おねだり”疑惑。

疑惑の元警察幹部を直撃取材すると…

【記者】「関西テレビですけど…」
【元警察幹部】「いや何も」

「newsランナー」の緊急追跡取材で、警察の信用を揺るがしかねない前代未聞の不祥事に迫ります。

■本部長が語る「警察幹部による不祥事」

今週月曜日、和歌山県議会で開かれた経済警察委員会。

神妙な面持ちで出席した、和歌山県警のトップ・野本靖之本部長は委員会の後、取材で次のように述べました。

【和歌山県警・野本靖之本部長】「本年6月に警察の幹部であった者が、規制対象業者との不適切な交際を行っていたということで、本部長訓戒の措置を講じましたことは、誠に遺憾であります」

本部長が語ったのは、「警察幹部による不祥事」。

それは「風俗店の利用、経営者と食事」というものでした。

【記者リポート】「風俗店エンペラーです。今は営業停止という紙が貼られています」

ことの発端は、ことし5月。

和歌山市の風俗店「エンペラー」で、女性従業員と男性客が売春をすることを知りながら、場所を提供した疑いで経営者ら2人が逮捕されました。

風俗店を営業するには届け出が必要で、警察とは利害関係がある業者となります。

関係者によると、捜査の中で警察幹部が経営者と食事をし、さらに店を利用していたことが分かったというのです。

■警察幹部は「出世コースにのっている、仕事に厳しく、真面目」

警察幹部の階級は「警視」で、当時、この事件の捜査担当ではありませんでしたが、和歌山北警察署の署長を務めたこともある人物。

一体、どのような人物なのでしょうか。捜査関係者は…

【和歌山県警 捜査関係者】「みんな驚いている。出世コースにのっている人で、仕事に厳しくて真面目だった」

元警視は和歌山県警の聞き取りに対し「年に数回程度(風俗店を)利用した」と回答。

捜査情報の漏洩による見返りを求めることや、恐喝などはなかったとし、本部長による訓戒処分を受け、元警視は、依願退職しました。

■元警視と風俗店の“不適切な交際”以上の疑惑

風俗店で撮影された元警視の映像には、次のようなやりとりが残されていました。

【従業員】「送りは?」
【元警視】「大丈夫です」

店を出る際に従業員に対して、手を合わせる様子が映っています。

取材を進めると見えてきたのは、元警視と風俗店の“不適切な交際”以上の疑惑でした。

【記者リポート】「元経営者によると元警視との関係は、8年前、和歌山市内で知人を介して食事をしたことが始まりだったといいます」

【風俗店「エンペラー」元経営者】「『いつでも摘発ができるよ』、『挙げられるよ』って言われると、やっぱり怖かったです」

取材に応じたのは、逮捕され有罪判決を受けた風俗店エンペラーの元経営者。

【風俗店「エンペラー」元経営者】「ご飯食べて飲んでいる時に、元警視は『うちの会社(警察)はおたくの業務に対して挙げようと思えば、すぐに挙げられるからね』、『いつでも摘発できるぞ』みたいな言い方をされたんです。『うち(警察)が目つむってるようなもんだからね』って」

食事中に出てきたのは、元警視による警察権限のちらつかせ。

【風俗店エンペラー元経営者】「(元警視が)『どういうお店やってるの?』、『かわいい子揃えて頑張ってます』。(元警視が)『ちょっと遊んでみたいね』って話があったので、『じゃあ遊ばれますか』って話で連れてきました、最初は…」

■風俗店の無料利用 「財布出す素振りがない」

しかし、元経営者が憤りを感じているのが“風俗店の無料おねだり”という疑惑。次のように証言します。

【風俗店「エンペラー」元経営者】「正直『おごります』も言わなかったんですけど、来られて、お財布出されるそぶりがなかったので、そのまま遊ばれて、『結局お金払ってない?』って店に聞いたら、『払ってない』と。結局そこから始まって、ずっと僕がお金を出すような」

元経営者が話したのは、県警の説明とは食い違う、「風俗店の無料利用」。

およそ8年前から、“おねだり”があったというのです。

【風俗店「エンペラー」元経営者】「(元警視から)お誘いがあったのは100回ぐらい。実際にご飯に行ったのは40~50回ぐらいあるのかな」

(Q.ご飯=店に案内してる回数?)
【風俗店「エンペラー」元経営者】「基本的にはそうです」

■「文句を言える立場ではありませんので」おねだりとも見受けられるSNSのやりとり

以下は元経営者が、元警視とやりとりをしたというSNSの内容です。

【元警視】「22時辺りからスタートできる人で、エエ人いますか」
【元警視】「大変恐縮ですが、今日はもう1回店に行かせてもらえないですか?」

“おねだり”とも見受けられる内容もあります。

【元警視】「何時になろうと、誰になろうと文句を言える立場ではありませんので…お気遣いなく」

【風俗店「エンペラー」元経営者】「飲み屋の女性のところ行きましょうとなったら、全部僕ですし、ソープランドでお金もらったことは1回もないです。熱が出てようが、夜寝てようが、酔っ払って連絡きますし、タダで入られてるっていうのももちろんありますし、でも断ったら捕まるのかなというところが一番ストレスだったですね」

■直撃取材に対し元警視は無言を貫く

“無料のおねだり”はあったのか。

和歌山県警は関西テレビの取材に対し「元警視は無料ではなく、お金は支払ったと答えています」と回答しました。

本部長に直接質問してみると…。

(Q.仮に無料で警察幹部が権力をちらつかせて、性的接待を受けていたとしたら?)
【和歌山県警・野本靖之本部長】「仮定の質問にお答えするのは、差し控えさせていただきたいと思います」

関係者に聞き取りをしたというものの、手法や調査期間についても回答は差し控え。

そして取材班は、元警視を直撃取材しました。

【記者】「○○(元警視の名前)さんですか?」
【元警視】「はい」

【記者】「関西テレビですが…」
【元警視】「もう何も…」

【記者】「無料の性的接待はあったのでしょうか?」
【元警視】「・・・」

【記者】「(警察の権限の)ちらつかせはありましたか?」
【元警視】「・・・」

記者の問いかけに一切、答えませんでした。

■「摘発はしょうがない」が「人の人生狂わせて自分だけそれはないでしょ」元経営者

逮捕され有罪判決を受けた元経営者。今思うことは…。

【風俗店「エンペラー」元経営者】「摘発されたのはしょうがないと思う。本当にグレーな仕事だと思うので」

(Q.元警視は「お金を支払っていた」と主張しているみたいですが?)
【風俗店「エンペラー」元経営者】「ソープランドで?ないです、ないです。人の人生狂わせておいて、自分だけそれはないでしょ!と」

■「真実だったらとてつもない不正」と京大・藤井教授

この疑惑について、元兵庫県警刑事部長の棚瀬誠さんは、「和歌山県警も徹底調査したはずだが、無料で性的サービスを受けていたとまでは裏付けられず、本部長訓戒になったのだろう。しかし、処分が甘いといった指摘があることも重く受けとめるべきだ」と述べました。

一方、京都大学大学院の藤井聡教授は次のように厳しく指摘しました。

【京都大学大学院 藤井教授】「非常に疑義が高い。絶対許せないことです。この事案が本当に真実だったら、とてつもない不正ですよ。

民主国家の中で国民が警察にはものすごい権限を付与しているんです。逮捕したり、捜査したりと。こうした権限を付与しているのがなぜかというと、国家の秩序、社会の秩序を守るためなんですよ。

それを自分の楽しみのために活用するようなことがあっては、絶対いけないわけですよ。真実なら公的資金を横領しているに等しい。国民全員が付与している権限を自分のために使ったのだとしたら、絶対許せないことです。

しかも、そういうことがあったという証言が出ています。証言されている方が嘘をついてるのか、警察が嘘をついているのかどっちかですよ」

(関西テレビ「newsランナー」2025年9月26日放送)

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