私たちの生活に古くから深く根付くお茶文化。
今、空前の抹茶ブームを受けまして一般的に緑茶としてなじみのある煎茶が大きな転換期を迎えているようです。
26日の「ソレってどうなの?」は「世界的な抹茶ブームで『煎茶』がピンチ?」をテーマにお伝えします。
東京・浅草にある抹茶専門店にお邪魔しました。
こちらの店では濃厚な抹茶の他、抹茶アイスに抹茶シュークリームなど抹茶三昧のスイーツを味わうことができます。
外国人観光客に大人気で、約8割が海外からのお客さんだといいます。
アメリカからの客は「おいしいです。すごく気に入りました。アイラブ マッチャ」「抹茶は大好きだよ。(Q.何を食べましたか)(スイーツと)抹茶ドリンク」などと話しました。
世界的な抹茶ブームで売れ行きは好調。
しかし店では今後、商品の値上げを検討しているといいます。
雷一茶 お抹茶体験店・菅原未来店長:
インバウンドの需要が高いのでそれによって(抹茶の)価格が上がっている。
値上げを検討する理由は原料の抹茶の高騰です。
人気に伴い抹茶1kg当たりの平均価格は急上昇し、5年間で1.5倍の値段となっています。
中でも宇治茶が有名な京都では2025年は1万4000円ほどの高値に。
2024年より約2.6倍になっています。
そんな中、こうした抹茶ブームを受けましてお茶の産地にも変化が起きていました。
八女茶ブランドで知られている福岡・八女市のお茶農家・八女美緑園製茶に話を聞きました。
八女美緑園製茶・江島一信代表:
以前は煎茶7割、抹茶3割くらいの割合で生産をしていたが、昨年来、世界的な抹茶ブームを受け抹茶6割、煎茶4割にシフトを変えた。
以前は煎茶とてん茶(抹茶)が7対3だった割合を、抹茶6割、煎茶4割と抹茶の割合を増やしたといいいます。
抹茶の原料である“てん茶”ですが、茶葉を摘む前に20日間ほど黒いシートをかぶせ、日光を遮って育てるそうなんです。
手間はかかるものの、煎茶から抹茶の栽培に切り替える農家も増えているといいます。
ただ、その結果手放しでは喜べない問題も生じているようです。
雷一茶 お抹茶体験店・菅原未来店長:
煎茶の価格も値上がりしてる。
八女美緑園製茶・江島一信代表:
煎茶も(価格が)2~3割上がってる。
抹茶の生産量が増えた一方で、煎茶の生産量が減り価格が高騰しています。
JA全農京都によりますと、その年の最初に摘まれる一番茶の価格は1kg当たり4482円で、2024年より1000円以上値上がりしました。
ペットボトル飲料などにも利用される二番茶も6割以上高くなっているそうです。
煎茶の価格高騰、街では「やっぱり煎茶の方が味が身についている。まずは煎茶からでしょう!」「日本人だったらお茶大事なので。お年寄りから子どもまで飲める飲み物だと思ってるので値上がりすると困る」などの声が聞かれました。
煎茶から抹茶へ切り替える農家がある中で慎重な姿勢の農家もいます。
埼玉のブランド「狭山茶」の農家・奥富園を取材しました。
奥富園15代目園主・奥富雅浩さん:
これは煎茶用の茶畑。機械でならしてるような畑。抹茶を欲しがるお客さまがたくさんいる。ネットショップに直接海外から注文が入ったり。モンゴル・イギリス・ドイツ・アメリカ・フィリピン。問い合わせは世界中からって感じ。
2024年の12月ごろから世界中から抹茶の問い合わせが急増したといいます。
奥富雅浩さんは「今の抹茶の現状、抹茶バブルと呼ばれる現状からすると、単価がまるで違う。ただそのおかげで煎茶の価格も高騰してしまった。十分な量の煎茶を供給できる分はしっかり作っていかないといけない。煎茶の需要に対して供給がちょっと余るようだったら、その部分はじゃあ抹茶にしようかって…」と状況次第では一部を抹茶にシフトする可能性もあると話します。
文化を守るのか利益をとるのか苦悩する様子もうかがえました。