廃棄されるものにデザインやアイデアなどの新たな価値を加える「アップサイクル」が注目を集めている。
ボールの素材でバッグを仕立てるなど職人の技術をいかし、アップサイクルに挑み続ける広島の企業を取材した。
使い込まれたボールを特別なポーチに
広島市西区の商業施設で9月初旬に開かれたアップサイクルのイベントでは、端材を利用した小物の展示販売や体験型ワークショップが行われ、多くの人でにぎわった。参加者からは「廃棄しなくても活用できると気づいた。新しい発見にわくわくする」との声が聞かれた。
その最前線で、広島ならではの新たな商品を開発した企業がある。
広島市安佐南区の被服縫製会社「八橋装院(やはしそういん)」。1959年創業の同社は日本の有名アパレルブランドなどの縫製を手がけてきた。

培った技術をいかしてミカサ製ボールの生地を使ったバッグや財布など、約10年前からユニークなコラボ商品を生み出している。

使い込んで廃棄されるボールを形に残す「リボールプロジェクト」では、青春の思い出をポーチやコインケースにリメイクし持ち歩けると人気だ。
職人の技が光る「広島レザー」
そんな同社がこの秋、新たに挑んだのが“地元産の本革”だ。

広島で生まれ育った牛の皮を厳選し高品質な牛革に加工。「広島レザー」と名付けられた本革を裁断から縫製まですべて職人が手作業で仕立て、オリジナルの財布を開発した。

「日本産の牛革は脂分が多く、手にしっとりなじむのが特長です。しかも牛肉と同様、牛革にも生産者や産地が追える個体識別番号がついていて、広島産であることを証明できるんです」と高橋伸英社長は語る。
多彩なデザイン、クラファンで販売
財布の中は斬新なデザイン。最大13枚のカードを“縦方向”に収納できるなど、使いやすさも工夫されている。

そこには高橋社長のこんな経験が…。
「年をとると診察券がめちゃくちゃあるんですよ。13枚じゃ足らんぐらいです」
いくつかの病院にかかるにはもってこいの財布。カッコよさだけではない実用性も兼ね備えている。
色は4種類だが加工法の違いでバリエーションは10種類、財布の内側のカラーも黒・赤・茶・グレーの4色から選び組み合わせ可能。自分好みにカスタマイズできる楽しさも魅力である。

広島レザー長財布「千菱(せんりょう)」は、クラウドファンディングで2026年1月14日まで販売(4万8400円~)。高橋社長は「CO2になるより、広島で作られたものを世の中にいかしたい。財布のカラーに赤が多いのはカープファンだからです」と笑顔を見せた。
広島生まれの“アップサイクル財布”が地元から全国へ羽ばたこうとしている。
(テレビ新広島)