広島名産のカキ。その殻を利用して干潟の環境を改善するプロジェクトが効果を発揮している。
廿日市市の海辺では魚のエサとなる小さな生き物の姿が確認され、訪れた子どもたちからも歓声があがった。

瀬戸内海に戻る「豊かさ」

「大きい!」「これ生きてるんじゃない?」
9月20日、廿日市市地御前の干潟に子どもたちの歓声が響いた。見つけた生き物をバケツや水槽に入れて観察。この春までは考えられなかった光景である。

9月20日、廿日市市地御前の干潟で開かれた観察会
9月20日、廿日市市地御前の干潟で開かれた観察会
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以前はヘドロ化した泥が有害な硫化水素を発生させ、魚のエサになるエビやアサリなどが住みにくい環境が続いていた。鼻をツンとつくような臭いも漂っていたという。

2025年5月、干潟に現れた大きなクレーン車
2025年5月、干潟に現れた大きなクレーン車

プロジェクトが動いたのは今年5月。大きなクレーン車で干潟に白い砂のようなものがまかれた。
実はこれ、細かく砕いて高温で乾燥させた「カキ殻」。殻の表面に付着した酸素が泥の中の硫化水素と反応し、干潟の環境が改善されていったのだ。
取材した五十川記者も「ちょうど浜から風が吹いてきますが、まったく臭いはありません」と効果を実感。流域圏環境再生センターの山本民次所長は「カキ殻を細かく砕くことで硫化水素などと触れる面積が広くなる」と話す。

「カキ殻すごい」子どもたちも実感

干潟で開かれた観察会ではエビやカニ、マテガイなどさまざまな生き物が確認された。

参加した地元の親子は「カキ殻で海がきれいになってすごいと思う」「普段気にしていなかった殻がこんなに影響を与えるとは」と声を弾ませた。

広島はカキの生産量日本一。一方、むき身に加工する際に年間10万トン以上の殻が出る。
「カキ殻は身よりも多く出るので、その殻をどうするのかというのは県の重要な課題でもある」と山本所長。多くは肥料や家畜の飼料として再利用されてきたものの、新たな需要の掘り起こしが求められていた。まさに広島ならではの画期的な環境改善だ。

10年後の海を見据えて

廿日市市のプロジェクトは今後10年間で約5500トンのカキ殻をまく計画。カキ殻のさらなる可能性を検証していく。

山本所長は「まだ10段階の1、スタート地点なのでこれから。10年後には浜がもっと白くなり、生き物もわんさか戻って魚も獲れるようになる」と期待を込める。

細かく砕いたカキ殻が混ざる地御前の海
細かく砕いたカキ殻が混ざる地御前の海

地元漁協も当初は半信半疑だったが、臭いがわずか1週間で消えた変化に驚いたという。
カキ殻でよみがえる「きれいな海」「豊かな海」への挑戦は、これからも続く。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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