広島で上映が始まったある映画に注目しました。テーマは、広島県内でも検出が確認されているある物質について。人々の生活を脅かす問題です。

広島市内の映画館。
先週末、ある映画の上映が始まりました。
タイトルは「ウナイ」PFAS汚染がテーマです。

【映画予告】
もし、あなたの町の水が汚染されていたら?

「子供の発達に悪影響があるとされる物質が、皆さんの水の中に入っています」

1986年、沖縄で発覚したPFAS汚染
PFAS-有機フッ素化合物の総称

「PF0Sが嘉手納において検出され、発生源は嘉手納基地である可能性が高い」
「この汚染は1980年代にはスタートしていたということは確実に言えると思います」

「PFAS」とは有機フッ素化合物の総称で、水や油をはじく特性を生かし、かつてはフライパン、防水スプレー、精密機器など幅広い用途に使われてきました。
しかし、発がん性など人体への悪影響が指摘され世界で規制が進んでいます。

特に深刻なのは…

【専門家は】
「PFASは発達システムを妨げるなど子供にダメージを与えるとされてます」


県内でも複数の自治体の井戸水や川からこのPFASが高濃度で検出されています。
アメリカ軍の川上弾薬庫がある東広島市では、生活に使う井戸水から国の暫定指針値の最大300倍のPFASが…。

【東広島市・高垣廣徳市長】
「高いレベルの汚染が発見されていますので災害と同じようなことが起きたと」

【高濃度が検出された地域の住民は】
「調べたら腹にたまっているかもわからんよね」
「100%恐怖」

アメリカ軍は防衛省に対し、過去にPFASを含む泡消火剤を使って訓練していたことを明らかにしました。
東広島市が住民に対し行った臨時の健康診断では、善玉コレステロール値が他の地域と比べて明らかに低いことがわかりました。
しかし、専門家はPFASによる影響と断定できないとしました。

また、住民の血中濃度測定などPFASの数値の詳細な調査は医学的な評価が難しいとして実施されていません。

そんな中、映画では欧米の現状やこの問題と戦う女性たちを取材。

【映画】
「責任者と会って話したい」
「悪いこともしていないのに、なぜ?」
「有害な化学物質にさらされ、私はがんでしぬことになるのです」

「何も悪いことをしていない私たちが、突然、体内の中に、この有害物質が入っているといわれているんですよ」

沖縄の女性たちも立ち上がりました。


広島で舞台挨拶した平良(たいら)いずみ監督は。

【「ウナイ」平良いずみ監督】
「この映画で東広島市のことも取り上げましたが、20世帯と局所的ではあるが、ものすごい高濃度なんです。行政がすべきことってなんだろう。飲んできた方たちの血中濃度を測ってきちんと医療モニタリングをしていくことが不可欠なんだろうなと。将来アメリカ軍に責任追及をするときに、きちんとデータとしてもっていられるかどうかということだと思うんですね」

この日、会場には東広島市の対象地域からかけつけた人もいました。
多額の検査費用を自分で払い、血中濃度を調べていました。

【映画を見に来た住民】
「これぐらいある」

1ミリリットルあたり838.8ナノグラム。
異常な数値でした。

アメリカの学術機関では健康に影響がないとされるのは2ナノグラムまで。
2~20ナノグラムは、妊婦などに悪影響の可能性が指摘され、それ以上は健康への影響のリスクが増すとの見解を示しています。
住民女性は、その40倍以上の数値でした。

【映画を見に来た住民】
「これだけの数字を出して行政に言っているのに、行政は全然、(東広島)市役所のほうは何にも対処しない。あきらめモードです」

近年、世界では基準を厳しくする動きがあり日本でも水道水のPFASについて、1リットル当たり50ナノグラムという現在の「暫定目標値」を「水質基準」に引き上げる方針を固めました。

しかし、平良監督は世界に比べると不十分だと指摘します。

【平良いずみ監督】
「PFASという物質についてまず知ってほしい。今世界では規制の波が押し寄せています。なんだけれども日本ではその規制がまだまだ緩いというところで皆さんに関心をもってもらって、本当に自分事としてこの問題を考えてほしいなと願っています」

生活に欠かせない水の問題。
一人ひとりがどう向き合うか映画は問いかけています。

※9月26日まで横川シネマで上映

<メモ>
〇水俣病のように、目に見えてこれが原因だと分かる被害と異なり、PFASは、発がん性や低体重児、流産などほかの要因もあるかもしれず断定できないとされるだけに難しい問題。
〇平良監督は「世界ではPFASの毒性を重く見て規制の波が押し寄せていて、日本は後手にまわる。
ヨーロッパなどでは、環境汚染に対し「予防原則」の動きがあるが、日本は調査に消極的」と指摘している。
〇「ウナイ」とは沖縄の言葉で「姉妹」や「姉妹のように手を携える関係」各地で子供たちの未来を思いこの問題と戦う女性たちの姿が描かれている
〇映画は今月26日まで横川シネマで公開。その後「福山駅前シネマモード」でも上映予定

テレビ新広島
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