フランス菓子で信州の魅力を発信です。本場フランスで11年修業を積んだ長野市出身の女性が、市内に洋菓子店をオープンしました。県産の食材を使い、「地産地消」を目指したいとしています。


タルトやカヌレ。ガトー・バスクにクグロフ。カウンターには、フランスのアルザス地方とバスク地方の郷土菓子など24種類が並んでいます。

こちらは、長野市平柴の「Patisserie Maison Nono」。フランス菓子の専門店です。

旭山のふもとにあり、テラスからは長野市を一望できます。9月6日、プレオープンしました。

客:
「悩みますね」

西村さん:
「フランスにしばらくいて、バスク地方の郷土菓子になります」

店のオーナーでパティシエールの西村望さん(44)。

西村望さん:
「(私が作る)お菓子を食べて元気になってほしい。おいしいもの食べて、うわーってなるのが私のテーマ」

西村さんは11年間、本場フランスで修業を積み、2024年帰国。このほど、店を構えました。

西村さん(8月28日):
「これがガトーバスクの生地をしきこんである状態」

長野市出身の西村さん。高校を卒業後、北海道の大学に進み、不動産関係の会社に就職し、茨城県で働いていました。

西村さんの趣味は、子どもの頃から好きだった「焼き菓子作り」。茨城で働く傍ら、フランス菓子作りを習いに東京の教室に通うほどでした。

西村望さん:
「店に出している(フランス)菓子を教室で教えてくれるというものがあり、そこに通うようになり、どんどんのめり込んでいった」

長期休暇の際は、フランスに旅行へ。「本格的に菓子を作りたい」という思いが強くなっていました。そこで会社を辞め、本場で菓子作りを一から学ぶ決意をしました。

西村望さん:
「日本の製菓学校に通おうと思ったが、フランス菓子をやりたいって決まっているなら、いずれフランスに行きたい(となるから)、それなら直接向こうに行ってみるかって」

33歳のころ、単身でフランスへ。ドイツとの国境近くにあるアルザス地方の製菓学校に通いながら、地元の菓子店やパン店で修業、パティシエとショコラティエの資格を取りました。


卒業後はスペインとの国境近くバスク地方にある200年以上前から続く老舗菓子店に就職。3年間修業をし、新メニューの考案などを任されるようになりました。

その後、別の店に移り、シェフ・パティシエに就き4年間、活躍しました。

フランスへ渡り10年が経とうとしていた頃、独立を考えるように。2年ほど悩みましたが―。

西村望さん:
「(最初に訪れた)アルザス(地方)のすぐ近隣の農家から、果物とか牛乳とか買って、そういうものをのんびり週末、料理して家族や友人と囲むという、その風景が残っていた」

西村さんがずっと忘れられなかったアルザス地方の風景。アルザスは降水量が少なく、日照時間が長いため、果樹栽培が盛んです。重なったのが生まれ育った長野です。

西村さん:
「私がフランス(アルザス地方)で印象に残った、生産者と作る人、お客さんがすごく近いというのが、(長野で)実現できると思った」


西村さんは2024年、フランスから帰国、地元・長野市に25年ぶりに戻りました。店をオープンするため実家の一部を改修、着々と準備を進めてきました。

西村望さん:
「『菜の花みゆき卵』という飯山の卵です」

焼き菓子のベースとなる小麦や卵は県産を使用。果物は自ら県内の農家に出向き仕入れています。さらに―。

西村望さん:
「これはうちのブドウ、スチューべンという昔の品種です」

店の隣の畑ではブドウをはじめ、柿やアンズ、ミントなどおよそ10種類を育てています。

西村望さん:
「食べたときに体にもいいし、心も元気になる。そんな菓子を目指している。フランスのお菓子を長野の材料でやりたいというのがあるので一番、理想的な環境じゃないか」

西村さんが目指すのは「地産地消」。フランス菓子を通じて、県産食材の魅力を発信したいとしています。

店の看板商品はバスク地方の郷土菓子「ガトーバスク」。県産の小麦粉と卵が使われています。アーモンドパウダーが入った厚いクッキー生地の中に、ラム酒風味のカスタードクリームがたっぷり。

(記者リポート)
「生地がザクッとしていて、中にクリームがたっぷり入っていて、おいしいです。クリームはラム酒の風味で、生地の香ばしさとよく合います」


こちらはアルザス地方の郷土菓子「クグロフ」。こちらも県産の卵を使ったブリオッシュと呼ばれるパン生地にレーズンが練り込まれています。

他にも、県産プルーンがたっぷり乗ったタルトや、フランス菓子の定番フィナンシェも。どれも、フランスと信州の融合を目指して作られた「焼き菓子」です。

9月6日、プレオープンの日を迎えました。

西村望さん:
「(プレオープンを迎え)緊張しているのが率直なところ。店の人と客がコミュニケーションをしながら買うのが(フランスでは)一般的なので、この店もそうなったら」

午前11時―。

オープンすると、早速、近所の住民など、大勢の客が訪れました。

客(近所から):
「きょうはおめでとうございます」

西村さん:
「ありがとうございます」

客(近所から):
「近くにこういう店ができて、すごくうれしい」
「すごく楽しみにしていました。だって家のすぐそばなんだもの。彼女もすてきだし、頑張ってほしい」

初日は約70人の客が訪れる―。菓子は約2時間で完売―。

客(男の子):
「きれいだし、おいしそうだった」

客(近所から):
「手作りで、とてもシンプルでいい、個性があって」


西村望さん:
「こんなにたくさんの方に来てもらえると思っていなかったのでありがたい。これ、どんな味なんだろうと、お客さんが目をキラキラして選んでくれたのが印象的でうれしかった。このように続けていけるよう頑張りたい」

「菓子」を通じて、生産者と消費者をつなげたい。地元・長野で西村さんの理想の「菓子作り」がスタートしました。

長野放送
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