北の大地で「ワクワクの旅」です。児童養護施設で暮らす子どもたちが、この夏、北海道を訪れました。楽しい思い出や感動をプログラミングで「観光ガイド」にして発信しようとしています。


パソコンの画面に並ぶ写真。8月23日、長野市の児童養護施設「松代福祉寮」で、子どもたちが、夏休みの思い出を振り返っていました。

行き先は北海道。小学4年から高校3年の10人が、2泊3日で札幌や小樽などを訪れました。


ITサポート銀のかささぎ・山越久美子理事長:
「1日目はどこに行きました?」

旅を企画したのは、子どもの学びを支援するNPO法人「銀のかささぎ」です。

理事長の山越久美子さんは、13年前、子どもの虐待問題について専門家の話に共感。ボランティアでタブレット端末を使った学習支援を始めました。今は、NPOを立ち上げ長野市の児童養護施設などを定期的に訪問しています。

今回の旅を企画したのは、「ワクワクした気持ちを届けたい」思いからです。

ITサポート銀のかささぎ・山越久美子理事長:
「プログラミング教室を5〜6年前から松代福祉寮でもやり始めて、『好きなことを考えてストーリーを作って』って言ったときに、(子どもたちが)『好きなことって何?』みたいなことを言って、ワクワクしたりする気持ちが少ないのかなって」

松代福祉寮は、さまざまな事情から家庭で暮らせない子どもたちが共同生活する場所です。ここには4歳〜18歳の36人が暮らしていますが、習い事や外出の機会などは限られます。

松代福祉寮・伊藤知美次長:
「送迎が遠かったり、回数が多い習い事だと(通うのが)難しくなったり、『保護者の送迎が必要』となると職員が対応しきれないことも。あとは月謝の関係も」


施設では、家庭的な雰囲気を重視。子どもたちが5、6人に分かれて職員と共に生活し、学校に通います。

食事は職員の手作り。皆で食卓を囲むなど「大きな家族」のようなにぎやかな暮らしです。


一方でー

松代福祉寮・伊藤知美次長:
「テレビのリモコン1つもそうですけど、お風呂の順番も皆で話し合いながら誰も嫌な思いをしないように我慢という点もそうかもしれないけど、(それは)必要なことだよねって」

家庭の環境などによって旅行や習い事などの機会に大きな差が生じる「体験格差」。それは、好奇心や将来の進路選択の妨げになりかねません。

公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」が2022年に行った全国調査では、世帯年収300万円未満の家庭の子どもの約3人に1人が、1年を通じて学校以外での体験活動を何もしていないことがわかりました。「経済的、時間的な余裕がない」などの理由が多く、物価高の影響も深刻です。


子ども:
「飛行機から始まる旅」

松本空港から飛び立った飛行機では、初めて見る空からの景色に大興奮。

「ワクワクの旅」の始まりです。


3日間の日程で、札幌の時計台や小樽の運河、水族館などをまわりました。最新設備を備えた野球場「エスコンフィールド」は、「夢の中かと思う」ような場所でした。

子ども:
「小学生のときソフトボールやってて、上の部分が全部ガラスでできてるのがびっくりしました」

メンバーは、施設の職員も合わせて15人。200万円以上かかった旅費のほとんどは、一般の寄付からなる財団法人の基金で賄いました。


ラーメンや海鮮など北海道グルメも。好きなメニューを自分で選ぶのも施設の子どもたちにとっては大きな学びです。

コツコツ貯めたお小遣いで家族にお土産も買いました。

子ども:
「サーモンイクラ丼やかに雑炊がおいしかったです。海も近くにあって住みたい、北海道に」

旅に同行した職員は―。

松代福祉寮・宮入雅弥さん:
「(普段)あんまりしゃべらなかった子が北海道の話をバーッとしゃべる姿を見て、こんなに自分のことを話すんだって」

松代福祉寮・藤田暁子さん:
「(子どもたちが)前を向いている、上を見ている、初めて見るものに目を輝かせて車窓の景色をじっと目で追って見ている姿、キラキラした目を見ることができて、とても印象に残っています」


子どもたちは1台ずつタブレットを借り、感動を写真に収めました。旅を終え、プログラミングで自分たち目線の「観光ガイド」を作り、発信しようとしています。

子ども:
「ガラスのお店にあった」

山越さんは、こうした体験を今後も応援するため、多くの人に力を貸してもらいたいと話します。

ITサポート銀のかささぎ・山越久美子理事長:
「世の中にはいろいろな場所があって、実際に自分が行って感じてほしい。なりたい自分を早く見つけて(ほしい)、それを支援していきたい。映画を無料で見るとかちょっとしたことでいい(社会全体で)関わってもらえれば」

長野放送
長野放送

長野の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。