今年、富山県内でクマの大量出没が懸念される中、人身被害を未然に防ごうと、富山市の保育所の周辺にある秋に実をつける樹木の伐採が行われました。
これからの時期は、冬に向けてクマがエサを求めて活発に動き回ることから県は早めの対応を求めています。
*リポート
「ドングリが不作や凶作となる中、これからの時期に注意が必要なのがクルミなどの木の実です。この樹木、保育所の園庭にあります」
樹木の伐採が行われたのは富山市楡原の「ほそいり保育所」の周辺の林です。
林で実を付けていたのが「オニグルミ」と「ミズキ」です。
ドングリ類が、実をつけるまでのつなぎの食料として、この時期、クマが特に好んで食べる木の実です。
この保育所は神通川に沿って生い茂る樹木が園庭の中まで伸びていることから木の実がクマを引き寄せる恐れがあるとして、細入自治会連合会が樹木の伐採を行いました。
*県自然博物園ねいの里 赤座久明さん
「事前のつなぎの食料として山の中でよく見るのはこの2つ、ベスト2ですね。オニグルミとミズキの実を(クマが)食べてドングリのシーズンに備えている。もう2週間くらいすると(オニグルミの実の)表面が黒くなって完熟するがもうこの段階から食べる場合もある」
伐採は市のクマ対策の補助金を活用して行われ、クマの生態に詳しい県自然博物園ねいの里の赤座久明さんと自治会の会員がオニグルミとミズキを4本伐採しました。
2年前の10月、富山市大沢野ではクマの目撃情報が相次ぎ女性2人が襲われケガをしました。
赤座さんによりますと当時、クマはオニグルミやミズキを食べながら林に潜み、2人を襲った可能性があると指摘しています。
今年は「立山・室堂」や薬師岳の登山道などでクマの出没が相次いでいて、今年7月8月の出没件数は109件と2005年の統計開始以来最も多くなっています。
その要因の一つとなっているのがクマのエサのなり具合。県内の森林では、クマの主食となるブナが凶作。ミズナラとコナラが不作となっています。
この状況は、クマの出没が相次いだ2020年と同じで、その年の出没件数は599件、人身被害も5件起きました。
ドングリが凶作・不作の年はエサを求めるクマが平野部で大量出没すると予想されていて、県は今月4日に「ツキノワグマ出没警報」を発令し、対策の徹底を呼びかけています。
赤座さんはクマを引き寄せる柿の実を取り除くなど個人でできる対策は進めた上で、大きな木の伐採などは地域で取りまとめ、対策することが必要だとしています。
*県自然博物園ねいの里 赤座久明さん
「集落の中にクマが入ってしまったらやれることが限られている。事前に人里へ野生動物が出ない予防策に予算や人、時間をもっと費やすべき。経験がある人たちに集落で委託して事前に処理するのは大事なこと」
今回のように大きな樹木や、高齢者世帯の柿の木の伐採は地域で取りまとめて自治体や造園業者への委託が必要です。
赤座さんは、各家庭でできる対策として住宅の庭などでこれから熟す柿の実の処理、また生ごみを放置しないなど、クマの目撃情報が出る前になるべく早く対策してほしいと呼びかけています。