長野県中野市の4人殺害事件の裁判。被告人質問の2日目も青木政憲被告は80回以上の質問全てに「黙秘します」と述べ、事件については何も語らなかった。一方、取り調べの時の被告の供述調書が新たに証拠として採用され、法廷で読み上げられた。
猟銃やナイフで襲われ4人死亡
殺人などの罪に問われている中野市の青木政憲被告(34)。
起訴状などによると、2023年5月、散歩していた女性2人をナイフで刺して殺害した上、駆け付けた警察官2人を猟銃とナイフを使って殺害したとされている。
80回以上の質問すべてに「黙秘します」
9月11日は、10日に続き被告人質問が行われた。
検察官:
「きょうは事件について話すつもりはありますか」
青木被告:
「黙秘します」

検察官:
「警察官から撃たれると思ったら、武装せずに、自首することは考えなかったのですか」
青木被告:
「黙秘します」
検察官:
「女性2人を攻撃する前に注意をしたり、文句を言う手段に出なかったのはなぜですか]
青木被告:
「黙秘します」
検察官が80回以上の質問をしたが、青木被告はすべてに「黙秘します」と答え、事件について話すことはなかった。
女性2人を「殺意をもって攻撃」
黙秘を受け、検察側は取り調べの時の被告の供述調書を証拠として採用するよう求め、裁判所は認めた。法廷では、その内容が読み上げられた。

女性2人を殺害した時の状況はー。
被告の供述調書より:
「2人の(被害)女性は、事件の1、2年前から、散歩中に毎回、私に対し『ぼっち』と悪口を言いました。自分たちでまいた種で、殺害されても仕方がないと思い、殺意をもって攻撃しました。怒りの積み重ねが我慢の限界になり、逮捕されても仕方がないと思いました」
「自宅と西側の畑の通路で片付けをしていると、(女性)2人が向かってきました。また悪口を言うと思い、2人の様子を見ていると、話しの中で「ぼっち」「きもい」と言っていました。2人に対して、怒り、許せないと思い、攻撃してやろうと思いました」
「そのとき、自宅にあるボウイナイフが浮かんだので取りに行き、ナイフを持ち出しました。法律でナイフを持って歩くことは、禁じられているとわかっていましたが、攻撃したい気持ちでいっぱいでした」
「散歩をしていた2人に近づき、より私に近い女性から右手でナイフを頭の横まで上げて、上半身めがけて振り下ろしました。女性は両手で防御しました。何度も振り下ろしました。何回か、どこかは覚えていませんが10回くらい腕や頭に当たりました」

「ナイフを振り下ろす時には、殺意をもって攻撃しました。複数回刺すと思いませんでしたが、倒れなかったので多くなりました」
「倒れた後、防御の格好をしていたのでダメ押し(致命傷)としてとどめを刺そうとしました。ナイフを上半身に側面の真ん中あたりをめがけて突き刺す。狙えば体を刺せると思いました。ナイフが刺さったので、とどめは1発で気が済み、2人目の女性の方へ向かいました」
「1人目の女性への攻撃でナイフの先端が(自分の)くるぶしに当たったので、もう1人の女性の時はナイフがあたらないように上下ではなく、左右に振ろうと思いました」
目撃者いるも「怒りのままに攻撃」
女性への犯行は、近くにいた人に目撃されていたがー。
被告の供述調書より:
「2人目の女性への攻撃は目撃者が見ていましたが、1人目の女性を殺していたので気にならず、それより、怒り、許せないと思い、怒りのままに攻撃をしました」
「(目撃した人は)恨みも怒りもないので攻撃しませんでした」
「射殺される前に撃とうと」
警察官2人の殺害についてはー。
被告の供述調書より:
「警察官が発見したら、射殺されると思いました。すでに2人をナイフで殺していたので、私に対して銃を撃つのはあり得ると思いました」
「警察から射殺されるのは嫌なので、ハーフライフル銃で威嚇射撃の前に撃って、身動きをとれなくしようと思いました」

「運転手に座る警察官が右手をごそごそとしたので、射殺される前に撃とうと思い、銃の引き金を引きました。また、助手席の警察官にも撃たれると思い、撃たれる前に行動不能にしようと思い、撃ちました」
「助手席の警察官はとどめを刺そうと思い、ボウイナイフで刺しました。防じんベストを着ていたので、覆われていない左脇を刺しました。警察官が動かず、死んだと思ったので自宅に戻りました。ほかの警察官も来て射殺するかもしれないと思い、銃を持って庭にいました」
「警察から射殺されるのは嫌なので、射殺される前に撃とうと思い、引き金を引きました。この時、(警察官2人が)死ぬかもしれないと思いましたが、それでも構わないと思いました」
被告が供述した理由は
取り調べの時に被告が供述した理由はー。
被告の供述調書より:
「(女性2人を)刺した理由など分からないなどと供述したこともありました。なぜわからないといったか理由は言いたくないと思っていましたが、今覚えていることを話して、起訴してほしいと思ったからです」
「警察官2人に対して思うことはありません。なるようになって仕方がないと思います」

検察官が読み上げている間、青木被告は、感情を表すことなくうつむきながら聞いていた。
裁判は、被告の「刑事責任能力」と「量刑」が主な争点で、被告の精神鑑定を行った医師の証人尋問などが行われる。