岩手県南部では長期にわたる雨不足により、深刻なダムの水不足が続いている。花巻市の豊沢ダムでは貯水率がわずか4%まで低下し、早ければ8月27日にも水が枯渇する恐れがある。この事態に農家は「収穫量減少は確実」と危機感を募らせている。
渇水状態が続く豊沢ダム
花巻市の豊沢ダムでは、2025年6月以降、極端に雨が少なく深刻な水不足に陥っている。

ダムの上流部は貯水率が著しく低下していた7月と比較しても水位がさらに下がり、8月25日時点ではほぼ水がない状態だ。

豊沢川土地改良区の藤原康司事務局長は「水を満々とたたえるのがダム、それがこういう状況で本当に残念」と語り、長期間続く水不足に不安を募らせている。
稲の実りに直撃する水不足
豊沢ダムは花巻市と北上市の田んぼ合わせて約4250haに水を供給している重要な水源だ。
7月には貯水率が20%ほどまで低下したため、稲の穂が出る8月上旬に水を確保する目的で、断続的な断水措置が取られてきた。

しかし、少量の雨が降っても乾いた山に水が吸収されてしまい、8月25日朝の時点での貯水率は4%と、この時期としては平年のわずか10分の1にまで落ち込んでいる。
現在は通常の8割程度に量を抑えて水を供給している状況だ。

田んぼではちょうどコメの粒が実る重要な時期を迎えており、まだ水を必要としているが、早ければ8月27日にも再び断水となる恐れがある。
豊沢川土地改良区の藤原事務局長は「『今水が欲しい』という話を常にいただいている。我々も努力をしているけど、そもそもダムに水がない状況で皆さんに迷惑をおかけしている状況」と苦悩を語った。
農家の切実な声
花巻市石鳥谷町の農家・直町昊悦さん(82)は、ダムから最も離れた地域に約5haの田んぼを所有している。
ダムからの距離が遠いうえ、取水制限の影響で水が十分に届かず、稲の生育具合は平年より20cmほど短くなっていると嘆く。

直町さんは「水が来ないから形は稲の形でも、実際に収穫すると実が入っていない。今年は減収は確実」と深刻な状況を語った。

さらに「JAからの前払い金である概算金が上がってもコメが取れないとどうしようもない」と話し、水不足の解消を切に願っている。
県南部では豊沢ダムのほか胆沢ダムでも8月25日時点の貯水率が4%となっている。
県は引き続き状況に応じた水管理の徹底を呼びかけている。

この深刻な水不足が続けば、地域の農業生産に大きな打撃を与えることは必至だ。早期の降雨による状況改善が望まれる。
(岩手めんこいテレビ)