放置竹林の活用と地域活性化を目指した新たな特産品「綾メンマ」が宮崎県綾町で誕生した。規格外のタケノコを使用し、障害者支援施設とも連携する循環型の取り組みが注目を集めている。
放置竹林の深刻な問題

宮崎県綾町には約82ヘクタールに及ぶ竹林が存在するが、そのほとんどが手入れされずに放置されている状況だ。放置竹林は、景観悪化にとどまらず、多岐にわたる深刻な問題を引き起こしているという。

全国13カ所で放置竹林の改善活動を行うLOCAL BAMBOOの江原太郎代表によると、以下のような問題が挙げられる。
・竹が生えすぎることで日光が届かなくなり植物が育たなくなる。
・竹が腐って人家や線路に倒れる被害も出ている。
・竹林では竹が浅く広範囲に根をはるため、雨が降ると竹林ごと斜面を滑り落ちる危険がある。
・放置竹林はシカやイノシシなどの絶好の住処となるため、近くに畑などがあると農作物に甚大な被害を及ぼす。
移住者が地域活性化へ奔走
放置竹林を有効活用し、地域活性化につなげようと、新たな特産品「綾メンマ」が開発された。開発したのは、宮崎市で飲食店を経営するT−styleの代表取締役・吉鶴拓也さん。吉鶴さんは綾町の豊かな自然、食、景観に魅せられ、5年前に東京から移住した。

T-style 吉鶴拓也代表取締役:
綾城という素敵なお城の回りにある放置竹林を伐採して、綾城に人を呼びたいというところから始まった。
規格外タケノコを地域資源に

綾メンマには、綾町が管理する放置竹林の整備で伐採された規格外のタケノコが使用される。

また、この取り組みに障害者も積極的に参加する体制が整えられており、タケノコのカットや塩漬け作業は、竹林の隣に位置する就労支援施設「つむぎ」にて行われる。

就労支援施設つむぎ 渡辺孝久さん:
社会資源として困ったときに、地域の方が頼られるような事業所になりたいという思いがあった。障害のある方は、世間からすると乖離、距離があるのが現実。地域の方々と一緒に何かをすることで色眼鏡をどんどん外してもらえればと思う。
2つの味で食卓へ、そして地域へ

綾メンマは、ラーメンのトッピングとして親しまれる「醤油味」と、綾町産の麦味噌を使用した「味噌味」の2種類が展開されている。

早瀬純哉記者:
味噌味のメンマをいただきます。柔らかいんですが、しっかりと歯ごたえもあります。味噌の風味も強いので白ご飯が欲しくなります。

10月に実施された試食会には、町の職員や飲食店関係者などが参加し、「醤油味があっさりしていて食べやすかった」「おいしいです。醤油の味がしっかり絡んでいてお酒に合いそう。綾を代表する商品になってほしい」といった、好意的な意見が寄せられた。

T-style 吉鶴拓也代表取締役:
森を食べて森を良くするという循環型の取り組みを知ってほしい。このメンマを通じて、森の大切さを知ってもらったり、綾に来てもらうきっかけになってほしい。

「綾メンマ」は、吉鶴さんが経営する宮崎市の飲食店「大衆酒場ざっくばらん」など4店舗で、10月7日より販売が開始された。2026年には、綾町の「ほんものセンター」や宮崎空港での販売も目指している。
(テレビ宮崎)