エンディングセンターでは、自分の死後のことを担ってくれる喪主を確保できない人たちのために、2000年からエンディングサポートを実施している。
それには入院の保証人などの「生前サポート」もあるが、葬儀や死後事務(年金・ガス・水道・電気の停止他)、部屋の後片づけ、遺骨の移送や埋葬などを、生前契約によって委任しておく「死後サポート」(死後事務委任契約)が中心となっている。
「歯型」でわかった身元
エンディングセンターの会員・古川智子さん(仮名)は、未婚でひとり暮らし。きょうだいはいるが、「死亡を知らせたくないし、財産も残したくない」と言い、まずは遺言書を書いた。
続いて、エンディングセンターと死後の葬儀や埋葬、死後事務などを委任契約した。
すべての契約事務が終わったとき、晴れ晴れとした顔で、「安心しました。この喜びを伝えたい」と、エンディングセンターの担当者にランチのお誘いがあった。自身の長年の想いを託した安堵(あんど)感があったのだろう。
その古川さんからある日、エンディングセンターの事務所に、電話がかかってきた。彼女が82歳の秋のことだった。

「友人とお茶をしていたら、急にお腹が痛くなって、かなり強い痛みなので、これから友人と一緒に病院に行ってきます」
そして夕方、病院帰りに電話が入った。
「入院するほどでもないので、今日は家に帰って休みます」
そんな会話があった日の翌朝、病院に付き添った友人が彼女に電話をかけてみると、応答がなく、駆けつけると「ひとり死」していたことがわかった。あとから知らされたことだが、死因は虚血性心不全、狭心症であり、腹痛を抑えるための強めの鎮痛剤が影響したのではないか、ということだ。