インバウンドにより観光業界が活気を取り戻している中、近年問題となっているのは、空港や観光地での「スーツケースの放置」。

世界の玄関口である空港で見つかる持ち主不明のスーツケースは、年々増加しており、成田空港では2021年度は338件だったのに対して、2024年度には1073件と約3倍に。
関西国際空港でも、2022年度に221件だったのに対して、2024年度は過去最多の816件となりました。

成田空港の拾得物を保管する倉庫では、約270個のスーツケースが棚を埋め尽くしていました。

「サン!シャイン」は、都内で観光客が訪れる場所を取材。スーツケース放置問題の実態が見えてきました。
路上に放置されたスーツケース 処分の費用は区が負担
東京・新宿区。早速見つけたのは、全体的に茶色く汚れたスーツケース。不法投棄に対する警告書が貼られています。

近所の人によると、1週間以上前からこの場所に放置されたままになっているといいます。

ゴジラが見下ろす歌舞伎町のセントラルロードにも、ぽつんと放置された銀色のスーツケースが…。

キャスター部分は大きく破損し、横倒しの状態で放置されています。近くには、不法投棄を警告する看板が設置されていますが、お構いなし。

近隣店舗で働く人:
不法投棄多いですね、(この場所は)居酒屋とか飲食店がごみを置ける場所になっているんですけど、全然関係ないところの人とかが、お金払ってないのにボンって置いていって。

周辺の店で働く人によると、放置されていた場所は近隣店舗のごみの回収場所。飲食店が出すごみに紛れて、粗大ごみなどを捨てる人が後を絶たないといいます。

若者に人気の新大久保でも、駅周辺で次々と放置されたスーツケースが見つかりました。

近くの店で働く人:
年に2、3回は、放置されているスーツケースを見ます。外国人観光客が多い街なので、捨てていったのかもしれない。

取材スタッフが短時間探しただけで、新宿区で5個の放置されたスーツケースを発見しました。
このような路上に放置されたスーツケースに対し、新宿区はどのような対応を取っているのでしょうか。

新宿区の交通対策課長を取材したところ、放置されたスーツケースは年間約30件ほど見つかっていますが、「観光客が放置したものとは限らない」といいます。
路上に放置されたスーツケースの対応は主に2パターンあり、通行を邪魔するものでなければ、現場で警告札を貼り一定期間あけた後それでも放置されていたら回収し、保管庫で保管。保管庫に移して半年ほどたち所有権が区に移ったら処分します。
通行を邪魔するものだった場合、移動させて区で保管。半年たち所有権が区に移ったら処分。この際、保管や処分の費用は新宿区が税金によって負担します。
「何が入っているか分からなくて気持ち悪い」警告むなしく…
多くの観光客が訪れる、浅草・仲見世周辺でも度々放置されたスーツケースが見つかっているといいます。

近隣店舗によると、張り紙などで「不法投棄を見つけたら通報する」と警告していますが、これまでに3度スーツケースが放置され、そのたびに台東区の依頼を受けた清掃業者が撤去しているといいます。

かつら・かんざし専門店「コマチヘア」岩崎孝俊 社長:
最初、「忘れ物かな?」って思ったんですけどね、何日も置いてあったりとか、なくなってもまた(他のスーツケースが)置かれるんでね、「廃棄されているんだな」ってやっとわかったって感じですかね。何が入っているか分からないから、気持ち悪いですよね。
格安の新品購入し放置か?対策進む
なぜスーツケースを放置していくのか。
その理由について、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は、航空会社への預け荷物は、以前は重量制だけだったが、現在は個数も制限されていることが要因の一つではないかといいます。

お土産を大量に購入してスーツケースに入らなくなり、大きいスーツケースを購入し古いスーツケースを置いていく人が多いということです。
さらに外国人観光客の場合、海外から古いスーツケース持ってきて、日本で割安の新品を購入し、古い物を放置していくケースもあるといいます。

各空港では、有料で不要になったスーツケースの回収サービスを行うなど、対策を行っていますが、解決には至っていません。

若狭勝弁護士によると、スーツケースを路上等に放置した場合、一般廃棄物の不法投棄とみなされ、「廃棄物処理法違反」で5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科となります。
(「サン!シャイン」 2025年8月19日放送)