2022年、安倍元首相を手製の銃で撃ち殺害した罪などに問われている、山上徹也被告(45)の裁判員裁判。
12月2日に行われた3回目の被告人質問では、銃撃当日の心境、そして事件の核心につながる内容が本人の口から語られました。

「無心で撃った」銃撃時の詳細明かす

検察側:
どこを狙いましたか?

山上被告:
安倍元首相の上半身だったと思う

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事件当日、山上被告は奈良市内の現場に午前10時ごろに到着。「現場付近の商業施設のトイレで準備をした」と語りました。

山上被告が事件の準備を進める中、奈良市内で選挙の応援演説を始めた安倍元首相。背後には山上被告の姿が…。当時の映像に、周囲をうかがうような姿が残されています。

検察側:
そのときの気持ちは?

山上被告:
本当に来たんだなと思いました。
(安倍元首相の) 後方が空いていたので「撃つならこの方向だ」と思っていたが、真後ろに警備がいたので「このまま演説が終わってしまうのではないか、代わりにどこから撃とうか」と考えていた。「横からがいいか前からがいいか」と考えていたら、警備が横に移動したので「これは何か偶然には思えない何かがある」と思いました。

そして、安倍元首相の背後に映っていた山上被告が突然、画面から消えます。

山上被告:
自転車の老人や台車がゼブラゾーン後方を横断し、警備の目がそれていたので、今かと思って車道に出ました。

目撃者によると、山上被告は車道を歩いて安倍元首相に接近。そして…少し間をあけて鳴り響いた2度の銃声。

検察側:
1発目2発目を撃った時の気持ちは?

山上被告:
射撃の何かの本で“心得はなるべく無心であること”とあったので、なるべく何も考えなかった。

発砲後、すぐさま取り押さえられた山上被告。この時、警察官に向かって「当たったか?」という言葉を口にします。
公判で発言の理由を問われると…。

山上被告:
直後にどういう状況か分からず取り押さえられたので、状況を確認したかった。

事件前日 旧統一教会の関連施設に発砲

事件当時にフジテレビが独自入手した奈良市内の防犯カメラの映像。

突然、画面左上が明るくなると、次の瞬間、激しい閃光が…。山上被告は事件の前日、旧統一教会の関連施設が入るビルに向かって手製の銃を発砲したとされ、映像はその瞬間を捉えたものとみられます。
同じ時間帯、別の防犯カメラには発砲音が入っていました。

旧統一教会の関連施設が入るビルに発砲したのは「旧統一教会に怒りを感じていることを示すためだった」という山上被告。

裁判官:
殺人等(など)を思いとどまることはなかったか?

山上被告:
(銃の)製造にかなりの費用と時間をかけている。やめてしまうと何のためにこんなことをしたのか。(旧)統一教会に敗北を突き付けられたかのようになるのは絶対避けたかった

そして事件の核心、安倍元首相を狙った理由については…。

山上被告:
安倍元首相は、おそらく私の認識では(旧)統一教会と政治家の関わりの中心にいるかただと思っていたので、ほかの政治家では意味が弱いと思った

一方で、事件の目的を聞かれた山上被告は、回答を避ける場面も…。

裁判官:
前提として、今回の事件の目的は何だったのか?

山上被告:
(15秒程度沈黙して)別の機会に答えさせてもらえればと思います。

裁判員:
目的は達成されましたか?

山上被告:
非常にいろいろな問題が起きますので、お答えできかねます。

3回目の被告人質問 ポイントは?

元横浜地検刑事部長・若狭勝弁護士が注目したのは2つのポイントです。
・裁判官が通常の事件で聞くはずの「動機」ではなく「目的」を聞いたこと。
・これまで比較的発言をしていた山上被告が沈黙や回答を控えていること。

若狭勝弁護士:
通常、殺人事件の場合は「殺害の動機は何ですか?」と「動機」という言葉を使うんです。殺害の「目的」というのは、例えば昔の過激派の事件なんかは、この事件の目的は体制を変えるため、とか。単なる恨みつらみとか許せないということじゃなくて、社会的なものとか、革命とか。

――情念的なものよりテロの可能性が高くなった?
若狭勝弁護士:

そこが、きのう(2日)の被告人質問では核心だったんだと思います。
裁判官はそういう可能性があるんじゃないかということであえて「目的」を使ったんだと思います。
それに対して山上被告人が回答を拒んだというのは、おそらくそこが核心であり、今後の裁判の行く末、あるいは求刑とかに影響あるものだから少し慎重に答える必要があると思って、今までは結構、明確に答えてきたことを沈黙したり「別の機会に答える」というような言い方をしたということです。

――山上被告本人の意識なのか、弁護人からここについて「目的は?」という聞き方をされた場合には答えない方がいいとアドバイスをされたのか、どう思われますか?
若狭勝弁護士:

弁護人とのすり合わせはしてる可能性はあると思います。ただ、「別の機会に」というような言い方をするというのは、そこが何か隠してるとか、核心なんじゃないかと思われてしまうので、弁護人とすり合わせをしてるんだったら、その答え方もすでに用意している可能性があったと思います。
ただ言えるのは、弁護人との打ち合わせにおいてもなかなかなんて答えていいかわからないと。核心ですから。だから答えを少し先延ばしにした可能性はあると思います。

――「目的」を今後語るかどうかによって量刑に影響することはある?
若狭勝弁護士:

検察側は極めて計画的、あるいは沈着冷静だったというところは浮き彫りにしてますけど、目的についてはきのう(2日)の被告人質問では追及していない。裁判官は、検察がそこを聞かず、モヤモヤして裁判官自らが目的を聞いたと思うんですね。そうすると検察はきょう(3日)やあす(4日)の質問で本当の目的、政治テロ的なものがあったのかどうかというところを聞いていくかどうかなんだと思います。たぶん検察が求刑を重くしようと思ったら政治テロだというスタンスでいかないと重くできなくなっちゃう。検察が事件の目的を厳しく追及するかどうかによって今後の裁判の求刑や動きはだいぶ変わってくるとは思います。

今後法廷で、どこまで“真実”が明らかになるのでしょうか。

(「サン!シャイン」12月3日放送より)